第27話〜決闘開幕〜
「もう!本当っになんなんですかあの人…!!」
オウルアイが去ったあとやり場のない怒りを俺にぶつけてくるリリー。
「まぁ感じ悪かったけど、貴族なんてどこもあんなもんじゃねぇの?」
確かに高圧的で人を見下すような態度は癪に障ったが、貴族というのは総じて平民を下に見る生き物だという印象がある。
だからオウルアイの態度もある程度は理解できるし、むしろアイツは自分の実力でここまで来ているわけだから、親の七光というわけでもないのだろう。
そういった理由で俺はそこまで奴に悪印象はないのだが、直接馬鹿にされたリリーは彼を許せないようだった。
「ハルキ!あの人との戦い絶対勝ってくださいね!」
よほど腹が立っているらしく、リリーは人の目も忘れて俺に詰め寄りながらそう言ってくる。
「無茶言うなよ…さっきも言ったけど俺とアイツじゃ実力の差がありすぎ…」
「それでも!勝ってくださいね!」
「…はぁ、まぁ、やれるだけのことはやってみるよ」
恩人であるリリーにここまで詰め寄られたら、さすがに無下にもできず俺は渋々ながらそう答えるのだった。
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‐騎士団本部決闘場‐
いよいよ最終試験が始まる時間になり、試験参加者は決闘場と呼ばれる四方に障害物がない広い空間に連れてこられていた。
全員が集まったことを確認し、試験監督者が最終試験の内容説明を始める。
「全員知ってのとおりだと思うが、最終試験の内容は受験者同士の一対一の直接戦闘だ。ここにいる12名の受験者のうち、勝った6人は晴れて騎士になる資格を得ることができる」
勝った6名のみが最終試験突破、か。
最終試験の合格率ですら50%とは、事前に聞いていたとはいえ改めて今回の試験の難易度の高さは少し引くレベルだ。
まぁ命がけの職業だろうし、しっかりとふるいにかける事は大切だと思うが、それにしても受験者からしてみればもう少し手心を加えてほしいところだ。
そんな事を漠然と考えながら、引き続き試験監督の言葉に耳を傾ける。
「そして気になっているであろう勝利条件だが、相手を気絶させるか、降参を認めさせることができれば勝利となる。反対に相手の命を奪うような攻撃や自爆のような危険な技を使った場合は即失格だ。あくまで武力を持って相手を制圧する、その技量を測る試験であることを忘れないように」
どうやら最低限命の担保は取られているらしい。
それならば安心できるが、逆に言えば命を奪うような攻撃でなければどれだけ相手をいたぶっても構わないということなのだろうか。
それはそれでボコボコにされそうだな…。
「説明は以上。ではさっそく第1試合を始めていく。フィオナ・ドレイクス、アスター・ハーケン…両者はこの場に残るように、他のものは2回の観客席で観戦するか控え室に戻っていろ」
なるほど、対戦自体は一組ずつ行われるわけか。
どのような順番で呼ばれるのかは定かでないが、それでも事前に受験者の大方のレベルが把握できるのは大きなメリットだ。
俺は迷わずに観客席に向かおうとするが、意外にもほとんどの受験者は控室へと戻っていく。
最終的に客席に残ったのは俺とリリー、そして長い金髪を2つに束ねたいかにもお嬢様、と言った格好をした少女の3人だけだった。
「あいつら、他の受験者の戦い方とか見ておかなくていいのか…?」
俺の疑問にリリーが口を開こうとするが、それよりも早く隣に座ってきた金髪ツインテの少女が答える。
「彼らは自分の戦い方をすれば負けるはずがない、という自信があるのですよ。だから他者の戦い方の研究など必要ないのでしょう」
「…えっと…失礼だけどアンタは?」
俺が戸惑いながら問いかけると、少女は小さく笑いながら答える。
「あら、私としたことが自己紹介もせずに失礼いたしました。私はアルカシア・ライオハートと申します。以後お見知りおきを」
優雅に頭を下げる彼女にたじろぎながらも俺も頭を下げていると、リリーが少し不安そうに口を開く。
「あの、ライオハートってもしかして3大貴族の…?」
「ええ、ご認識の通りですわ」
リリーの問いににっこりと笑みを浮かべながら答えるアルカシア。
その様子にリリーは驚きを隠せないようだった。
「嘘でしょう…?一度の試験に3大貴族出身の騎士が2人も参加するなんて…!」
3大貴族、さっきリリーが言っていたオウルアイの家と同じ名門ってことか。
「ふふ、珍しいこともあるものですわね」
珍しいこと、ね。
それは恐らく嘘だ。
貴族というなら、それなりの情報網を持っていてしかるべき。
だとすればオウルアイが騎士団試験を受けることを彼女は事前に分かっていたはずだ。
だとすれば彼女の真意は…
「そう怖い顔をしないでください。ほら、もう第1試合が始まりますよ?」
俺の考えを見透かしたように、そう諭してくるアルカシア。
色々疑問は残るが、直接彼女と戦うわけでもないし、今はごちゃごちゃ考えるよりも、試合に集中すべきだろう。
「あぁ、そうだな」
俺はそれだけ言って、これから始まる戦いに意識を集中させることにした。




