第24話〜新たな目的〜
がっくりと肩を落としながら図書館を出る俺たち。
「ここまで来てこの仕打ちはねぇよなぁ」
「そうですね…でも、禁書エリアに置かれているということはやっぱり書かれていることは特殊なものなのかもしれません」
「だな、だからこそどうにか禁書エリアに入る手段があれば良いんだが…」
「近所エリアへの入り方…一応、王家の関係者が騎士団長クラスの許可があれば中に入れると聞いたことはありますが…ハルキ、そういった方々の中にお知り合いとかいますか?」
「…いるわけねぇだろ」
「あはは、ですよね…うーん、だとしたらまずは正式に騎士団に入団して、騎士団長のどなたかの信頼を勝ち取って、禁書エリア入室の推薦状を書いてもらうとかが早いかもですね」
頭を悩ませながらそう話すリリー。
推薦状…なるほどそういう手もあるのかと感心しながらもここで一つの疑問がわいてくる。
「どなたかって…騎士団長って何人かいるのか?」
俺がそう尋ねるとリリーは驚いたように目を見開く。
「なっ、もしかしてハルキ、騎士団の仕組みとか知らずに入団しようとしてるんですか…!?」
「え、あぁ、まぁ…あまり詳しくはないな」
「道理で話していてたまに違和感がありましたが、まさか騎士団長のことまで知らないなんて…」
「なんだよ、有名人なのか、この国の騎士団長ってのは?」
「ヴェルセリアの7人の騎士団長…有名どころか、ヴェルセリアに住んでいる人なら彼らを知らない人はいないんじゃないかっていうくらいの方々ですよ。ただ、その存在は公にされていないので、どんな人物なのかは私も分からないですが」
「なんだそれ?よく知らないのに誰もが知ってる存在って、矛盾してないか?」
顔と名前が売れていて、誰もが知る有名人ということであれば話は分かる。
だが、どんな人間かも分からないのに有名だと言われても、説得力が薄いように感じる。
だが、そんな俺の疑問に対してリリーはきっぱりと答える。
「存在は知らなくても、彼らの功績は数え切れませんから。シルバードラゴンの討伐とか、暴徒化したオーダーズを一晩で鎮圧したとか、他にも数え切れないほどに」
「つまりその実績だけで有名になるのは十分だったってことか?」
「その通りです、なので騎士団長はヴェルセリア人にとっては伝説的な英雄と同じなんですよ。彼らの姿を見るために、騎士を目指すなんて人だっているくらいですから」
「なるほど、つまり話を戻すと、禁書エリアに入るためにはそんな英雄様達から推薦状を書いてもらう必要があるってわけか」
「そうなりますね…」
「…無理じゃね?」
「あ、あはは…!でも騎士団に入ったら交流する機会もあるかもしれませんから、気落ちせずに頑張って行きましょう!ひとまずは騎士団に入りたい目標がまた一つ出来たということで!」
強引に話を持っていくリリー。
色々言いたいことはあったが、今ここでゴネても禁書エリアに入れないことには変わらない。
俺程度がそんな伝説的な存在と交流の場を持つことはないと思うが、もし機会があれば推薦状を書いてもらえるように、頭に入れておこう。
「分かった。まぁ期待せずに頑張るとするよ。そう言えば話していて気になったんだが…リリーはそもそもどうして騎士になろうと思ったんだ?」
「え、私ですか?」
「あぁ、良いやつなのは分かってるけど、進んで騎士になろうとするタイプには見えないからさ」
そう言うと、リリーは少し驚いたような顔でこちらを見ていた。
「ハルキは、人のことをちゃんと見ているんですね」
「え?」
「いえ、なんでもありません。私の場合は騎士を目指す以外に道がなかったというだけですよ」
一瞬だけ顔を曇らせながら、悲しそうな笑顔でそう答えるリリー。
「それしか道がないってどういう…」
「別に大したことじゃないですから、それよりもそう言うハルキはどうして騎士に?」
リリーは少し強引に話題を逸らし、自分のことへの言及を避けた。
どうやら彼女にとってあまり聞かれたくない質問だったようだ。
申し訳なさを覚えながらも、素直に俺も答えを返す。
「俺も…まぁ似たようなもんだな。騎士になる以外に生きていく道が見つからなかったんだよ」
「ふふ、なら私達、意外と似た境遇なのかもしれませんね」
「そう、かもな」
「それなら似たもの同士、2人とも騎士になれるといいですね」
「あぁ、そのためにも明日の最終試験、絶対に突破しないとな」
「そうですね!あ、そうだハルキ…良かったらこれ」
そう言ってリリーは、ラッピングされた小さな袋を差し出してきた。
「これって?」
「回復薬ですよ。最終試験はもしかしたら、2次試験以上に過酷なものになるかもしれません。だからもし怪我をしたらそれで治してくださいね」
「…ありがとうな、リリーも怪我とかしないように気をつけてくれ」
「はい!お互い頑張りましょうね!」
お互いにエールを送ったあとでリリーと別れる。
そうして彼女からもらった回復薬を眺めながら、決意を新たに帰路につくのだった。




