第23話〜魔法の謎を求めて〜
本を探す魔装具が、淡い光を放ち始めてから数秒後…
ピコン!と軽快な電子音のような音とともに目の前に地図が投影される。
「すげぇな、空中ディスプレイか」
「え、でぃすぷれい?」
「いや、こっちの話だ」
なんのことか分からずに聞き返してくるリリーにそう返しながら、俺はディスプレイを見つめる。
ディスプレイには立体的なこの図書館の映像が投影されており、そこに3カ所ほど赤く光っているポイントがあった。
「この赤い光はなんだ?」
「そこに操作している人の読みたい本があるっていう合図ですよ。光魔法の本…3冊もあるみたいですね」
「なるほどな…けど、ここに映し出されていても、いざ探し始めようとなれば、すぐに分からなくなるんじゃないか?」
印はただ赤く光っているだけで、棚番号が振られているわけでもなく、分かりやすい目印もない。
そんな状況でこれだけの広さの図書館の中を探し回れというのはいささが不親切が過ぎるのではないか。
「あぁ、その点でしたら心配いりませんよ」
リリーは優しい声色で俺にそう告げると、目の前の魔装具を手慣れた手つきで操作しはじめる。
すると、目の前の地図が小さく縮小していき…それが俺の頭に近づいてくる。
「な、なんだこれ…?」
「魔法で脳内に地図をインプットするんです。脳内に直接情報が書き込まれる感覚は最初は違和感を感じるかもしれないですが、慣れると結構楽ですよ」
そう言いながらリリーが魔装具の中央のボタンを押すと、彼女の言葉通りに地図が俺の脳内に入ってきて、その情報が直接頭に思い浮かんだ。
脳の思考領域を押しのけて直接情報が頭に浮かんでくるこの技術は少し恐ろしくもあるが、同時に新鮮な感覚だった。
「なるほど、確かにこれなら迷う心配も無さそうだな」
「ですです。じゃあ早速本の場所に向かいましょうか」
リリーに促されるまま、3箇所の中で一番近い場所へ向かう。
「多分この辺りだと思うんだが…あ、これか」
本の場所に近づくと直感的にどの本がお目当てのものなのかが分かり、自然とその本に手が伸びた。
なるほど、魔法は科学と似たようなものだとばかり思っていたが、どうやらそれは誤解があったようだ。
もちろん化学の方が優れている面も多々あるが、こういった細かい融通を利かせる技術は、魔法の方が優秀らしい。
「ハルキ、ページを開いてみてください。多分めくっているうちに、どのページに記載があるかも分かると思うので」
リリーの言葉に素直に従い、ページをめくっていくと光魔法についての記載箇所で手がピタリと止まる。
「えっと…あ、これか【光魔法の使い方について】」
使い方…今一番知りたい情報だ。
いきなり当たりを引けたのかとテンションを上げながら読み進めていく。
「なになに…?【光魔法は暗い夜道を通るときに用いると良い、周囲を明るく照らしてくれるだろう】…ってそれだけか?」
「他には…何も書いていないみたいです。これは私が知っていた情報と同じですね」
「みたいだな…まぁ、まだ2冊も残ってるんだし、どっちかには何か新しいことが書いてあるだろ」
気持ちを切り替えながら次の本棚に向かう。
すると途中でリリーが不思議そうに…
「あれ、ここ、私が前に案内された棚です」
「そうか、確かリリーも光魔法の記述をここで見つけたって言ってたよな。じゃあお前が読んだのと同じ本を案内しようとしているのかもな」
「そうですね。でも…だとしたらあの本にはそこまで細かい記載はなかったような…」
リリーの懸念通り、2冊目の本の内容も1冊目とほぼ同じものだった。
今のところ光魔法は文字通りピカピカ光るだけの低級魔法という評価…名前負けも良いところである。
せめて3冊目の内容に期待しよう。
わずかな望みを込めて俺とリリーは最後の赤い光のもとへと向かう。のだが…
「結構歩くんだな…」
「あはは、広い図書館ですからね…でも、私もここまで奥に来たことは初めてです」
最後の棚を目指し始めてから既に5分ほど歩いているが、まだ目的地は見えてこない。
最初の2冊は比較的近い場所にあったというのに、1冊だけなぜこんなにも離れた場所に置かれているのだろうか。
「もしかして、最後の1冊はかなり変わったジャンルの本なのか?」
「そうかもしれませんね。少なくとも、一般魔法を扱う本とは違うものだと思います」
なるほど、だとすれば期待が持てそうだ。
そう胸を高鳴らせながら、さらに図書館の奥へと進んだのだが…
目的の本が置かれた棚がある部屋は、錠のついた頑丈そうな扉で閉め切られており、【禁書エリア】と書かれた立て札とともに俺たちの立ち入りを拒んでいた。
「嘘だろ、ここまで来て中に入れないのか?」
「そうみたいです、ここから先は禁書エリアのようですし…」
「その禁書エリアって…申請書とか書けば入れるものだったりとかは…」
「残念ながら無理かと…」
「そうだよなぁ…」
目的の本を手にするまであとわずかまで来たというのに、俺達の調査は固い錠前に阻まれ断念せざるを得なくなったのだった。




