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第18話〜共闘〜



ホーングリズリーの爪によって抉られた地面を見て思わず言葉を失う。

こんな威力の一撃をまともに剣で受けていたら、間違いなく俺は地面に叩きつけられて気を失っていたことだろう。


強い魔物なのは覚悟していたがまさかここまでとは…


「ハルキ!次が来ます!」


リリーの声でハッと我に返ると、グリズリーは再び腕を振り上げ再び攻撃を仕掛けようとしていた。


「くっ!!」


攻撃が来る直前に慌てて真横に飛び退いて避けると、再び俺がいた場所の地面が激しく削られる。


「舐めやがって…!」


爪を振り下ろした直後のグリズリーに向かって一撃叩き込もうと剣を構えたが、その殺気に反応したようにグリズリーはこちらを鋭い眼光で一瞥する。


その威圧的な雰囲気に呑まれ、俺は思わず攻撃の手を止め相手と距離を取ってしまう。


攻撃したら反撃でやられる。

そんな直感的な恐怖が俺の攻撃を中断させたのである。


「くそっ…」


相手の攻撃は避けるのが精一杯で、一撃でも食らえば命はない。

さらにこちらの攻撃も、いつ来るか分からないカウンターを常に警戒しなければならない。


あまりに理不尽な話だが、これが力の差と言うやつなのだろう。


どう考えても、今の俺では勝ち目などあるはずもないではないか。


圧倒的な力の差を前に心が折れかけた時…後ろから声をかけられる。


「相手の隙を作り出せれば、反撃できますか?」


その言葉に驚きながらも振り返ると、リリーが真剣な表情で俺を見据えていた。


「え…?まぁ、出来るとは思うけど…」


「分かりました。じゃあやれるだけやってみますね」


そう言って彼女は目を閉じる。

すると彼女を中心に、何かオーラのようなものが集まり始める。


この感覚には覚えがある。

殺人鬼の女と戦った時に感じたものと同じ感覚…


魔法だ。


やがて俺の剣を呼び出す時と同じように彼女の手に光が集いはじめる。

そして、やがてそれは長い杖の形へと変化していった。


「これって、魔法の杖か…?」


「はい。一応私は魔導剣士ではなく魔導師なので」


魔導師…なるほど騎士を志す者の中にはそういうタイプもいるわけか。

見たところ、俺がよく知っているファンタジーに出てくるような魔法使いと同じような存在だと見てよさそうだ。

なるほど、そういうことであれば前衛が苦手だと言っていたのも納得できる。


「攻撃魔法も使えるのか?」


「はい、ほとんど低級のものですけど…注意を引いてハルキの攻撃の隙を作るくらいなら出来ると思います」


「そいつは頼もしい限りだな。じゃあ頼むぞ」


リリーを背に、もう一度ホーングリズリーに意識を集中させる。

ホーングリズリーは、リリーの出した杖を観察するように見つめており、こちらへの警戒心を強めているのが見て取れた。


クローウルフとかいう奴らもそうだったが、基本的に魔物は本能のままに襲ってくるような真似はせず、じっくりこちらを観察するような挙動をとることが多いようだ。


その意味で、コイツらは通常の動物と比べて極めて厄介な生物だと言えるだろう。

だが…


「それでも知能なら、人間のほうが上だってことを見せてやるよ!」


剣を構えて、ホーングリズリーに斬りかかる。

当然、奴から見れば俺の攻撃などスピードも遅く対処も容易なことだろう。


それを証明するかのようにグリズリーはわざわざ近づいてきた俺を嘲笑うように鼻を鳴らしながら、腕を振り上げる。だが…


「フレアッ!!」


奴が腕を振り上げた瞬間、そこに向かってリリーが火球を放ち、腕に命中させる。


火球は分厚い毛皮に燃え移り一瞬だが、ホーングリズリーの注意がそこに向く。


「はぁぁっ!!」


その瞬間を見逃さず、剣の軌道を縦から横に変え、奴の胴体めがけて剣を振り抜く。


‐シュッッッッ‐


剣が風を切る音と共に、グリズリーの胴体を切り裂き血飛沫が舞う。


『ヴォォォアッッ!!』


その一撃によって少し怯んだものの、すぐにグリズリーは反撃しようと火が付いていない方の腕をこちらに振り下ろす。


「リリー!頼む!」


「はいっ!」


リリーは再び火球を放ちもう片方の手にも火をつけようとするが、グリズリーはそれを読んでいたらしく。火球の一撃をもう片方の手で防ぐ。


「なっ!コイツ片手を犠牲にしやがった…!!」


確かに既に火がついている方の腕にもう一撃食らったところで、そこまで大きなダメージにはならないだろう。

だが咄嗟にそんな計算をして、片腕を捨てるような真似が出来るのはさすがに想定外だった。


「くっ…っ!!」


慌てて俺は後ろに飛び退いて一撃を乖離したのだが、グリズリーそれすら読んでいたらしく、爪を振り下ろした直後に一歩前に踏み出し、横薙ぎに爪を振るって2撃目を撃ち込んできた。


避けきれない…!!

咄嗟に剣を構えて爪を受け止める。


だが、それで勢いを殺すことは叶わず…俺はそのまま吹き飛ばされて木へと叩きつけられたのだった。



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