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天涯地神伝  作者: 真白 歩宙
結城の章

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天地の嘆き 其の十一

三国志の史実と演義の登場人物が出てくる中で、あらゆる策謀が渦巻く中、彼らとどう対峙していくか。

いつしか芽生えた孔明への淡い気持ちは、現代との違いによって苦しむ恋になった。

「随分と冷え込んだものだ。お前達は鍛錬(たんれん)を怠るな、安国(あんこく)翼子(よくし)

安国(あんこく)、このまま雪が降り出しそうで、面倒なことになりそうだな」

「それは違うんじゃないか翼子(よくし)‥‥密偵が連絡を取るのも容易じゃなくなるから」


 ここは南郡城近くの山間部。趙雲(ちょううん)は眼下に広がる曹軍と呉軍の陣形を見て笑った。


― この二人は日々成長してゆく ―


 西暦100年頃から200年近くまで寒冷な気温が続き、不作が飢餓(きが)を多くしていた。

 荊州(けいしゅう)は平原が広がり大河が流れ扶翼(ひよく)な土地を築きあげていたが、少しでも標高の違う山間部に入るとその(おもむき)も違ってくる。

 夏は地形が(あだ)を成して大気が渦巻き気温を上昇させ、冬は大地を枯らすほどの寒さが(おそ)う。


 不安定な気候は作物の根に影響を及ぼし、根臭りや病気を生む。まだ荊州(けいしゅう)は平原が広がるので、飢餓(きが)に苦しむ者は少ない。

 しかし、この南郡(なんぐん)城の辺りは夏から冬に一気に移り変わり、容赦なく大地を冷やしていく。


「夏には虎だって出るのに、なんでこんなに山は冷えるのか変だよな」

「それでもここ数年は飢えで死ぬものが少なくなった。翼子(よくし)安国(あんこく)も、良く見て学ぶのだ」


趙雲(ちょううん)張苞(ちょうほう)関興(かんこう)に諭すように話しかける。

戦乱を駆け、多くを見てきた武将の趙雲(ちょううん)子龍(しりゅう)


「ユウは大丈夫かな?」

「お前、そう言えば‥‥濃師様と出かけたことあったよな」

「ああ。」

「どんな方だよ?遠目からしか見てないし、俺は喋ったことも無いからなぁ」


 張苞(ちょうほう)の言葉に関興(かんこう)は頬を染めた。

とても、たおやかで儚げな笑顔と優しく川のことを説明した声が、今も耳に残っている。


「なぁ‥‥どんな方なんだ?」



『貴方には私の為に生きてもらいたいのです』



 ふと、見回りに出た時、孔明の天幕の裏で耳にした言葉を思い出す。それはとても切ない声のようにも聞こえて‥‥。

 関興(かんこう)は耳まで真っ赤になりながら、張苞(ちょうほう)から視線を逸らした。


「教えろって!」

「‥‥さすが軍師殿が惚れる方だな‥‥って」


 友に肩を掴まれ揺さぶられて出てきた言葉は、あまりにも外れていて張苞(ちょうほう)をうならせた。


「‥‥お前、時たま変なこと言うよな。軍師様も濃師様も男だろ?!」


 b信じられんと溜息をついて天幕を出て行く張苞(ちょうほう)に、関興(かんこう)は頭痛を感じた。横で肩を揺らしている趙雲(ちょううん)を見て顔を赤らめる。


翼子(よくし)(うと)いから濃師が女性であることには気がつかんのだろう」

「鈍すぎです」

「お前は敏感すぎるのだ。軍師殿が聞いたらさぞかし驚かれるだろうに」

「い‥‥いいませんよ、こんなこと!第一‥‥」


 あの軍師に横槍を入れられるような知恵など持ち合わせてないと、関興(かんこう)は慌てて否定した。

 趙雲(ちょううん)は笑いを堪えながらも手にした書簡(しょかん)関興(かんこう)に渡す。


「これを急ぎ、孔明軍師殿に」


 手短に命を下すと、他の天幕で待つ農民の下へ向かった。関興(かんこう)(ふところ)に書簡を仕舞いこんで、孔明の待つ劉軍へ急いだ。



「長老殿、寒い中待たせて申し訳ない」

「いや、ここの天幕は温かい」

「長老が協力してくれたお陰、少ないが村の者に食料を持ってゆかれよ」

「ありがたいことじゃ‥‥我等、玄徳(げんとく)様の御為ならば、死もいとわぬ覚悟」


趙雲(ちょううん)(かゆ)の入った椀が手付かずのままなのを見て、長老の手を取った。


「村人を思うその心、何と厚きことか。しかし帰りの北風はその身に辛かろう、この子龍に免じて食べては下さらぬか?」

「勿体無いお言葉‥‥」


 長老は地面に額を付けて趙雲(ちょううん)に感謝した。


 この南郡城付近に陣営を張って、十日の間は山賊を装って密偵から密書を奪った。 

 その最後の密書の内容を知った孔明から次の作戦を行うように指示が出たのだ。趙雲(ちょううん)は2つめの緑の布に入った書簡を開いて考え込んだが、ああと頷くと行動に移した。


『この南郡(なんぐん)城付近には玄徳(げんとく)様を(した)う農民が多く居ます。

 呉軍の密偵の通る山間部の長老に協力を申し出ると良いでしょう。

 公瑾(こうきん)殿を慕う村人を装わせ、食べ物と休息を与えるように。後は忍ばせていた文官に書簡を書き写させ、公瑾(こうきん)殿が動く時期を見定めるように』


 そう‥‥結果的には同じ事なのだが、密書の内容を判りやすくするための作戦。

 最初の五人は人気の無い山間部を通ったため山賊に襲われた。そこで周瑜(しゅうゆ)は密偵を商人に仕立て上げて村を通ってゆくように知恵を授ける。

 言われた密偵はその通り行動するのだが‥‥


 村では周瑜(しゅうゆ)や呉軍に勝ってもらいたいと密偵をもてなす。張り詰めていた糸は切れ‥‥慎重になるが故に、村民に心を許して(くつろ)ぐ。

 危険な夜道を避けた結果、密偵は寝ている間に密書の中身を知られてしまうのである。


「長老、判っているとは思うが‥‥無理をしてはならない。玄徳(げんとく)様も軍師殿も、無血を望まれておる。」

「畏まりました。血気はやる若者は私が説き伏せましょう」


 長老は深々と頭を下げて村に帰っていった。


 しばらくして、南郡(なんぐん)城近くに雪が降り始めた‥‥。


ここまで読んで下さって、ありがとうございます。

貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。

読んで頂けることが、執筆活動の励みになります。

誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。

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