表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天涯地神伝  作者: 真白 歩宙
結城の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/147

天地の嘆き 其の二

三国志の史実と演義の登場人物が出てくる中で、あらゆる策謀が渦巻く中、彼らとどう対峙していくか。

いつしか芽生えた孔明への淡い気持ちは、現代との違いによって苦しむ恋になった。

「ほほぅ‥‥ここまで軍を進めているとは」



 仲達(ちゅうたつ)は小高い山から眼下を見て(わら)う。その様子に曹純(そうじゅん)が馬にマントをかけ、後ろに控えていた虎豹騎(こひょうき)が習いだす。


「‥‥仲達、これを使えば良いわ」


 一連の動作を見取っていた柚が自分の肩布を外して馬にかけた。仲達(ちゅうたつ)のマントも虎豹騎(こひょうき)の旗も柚が寒さよけに借りてしまっている。

 その動作が『当たり前』のような仕草だったため、仲達は無言で柚を見つめた。


「随分と物分りが良くなられたものだ」

「馬は繊細な生き物だもの。(いなな)きをさせないためには怯える要素を断ち切れば良いだけでしょ」

「何と、ご寵姫は馬の事をご存知であられたか?!」

子和(しわ)、恐怖心をなくすには視界を遮るのが一番なのよ。不安を感じるのは人ぐらいなものだわ」


自分の国にも馬はいるし、賭け事の対象にもなっているのだと笑う。


「‥‥」

「どうしたの二人共?」


 今迄多くを語らず、人を遠ざけていた柚。しかし今の彼女は別人のように饒舌(じょうぜつ)だ。


「私の態度が豹変(ひょうへん)したと、驚いているのね」


 可笑しそうに尋ねる柚に向かって、曹純(そうじゅん)が視線を逸らす。如何にも気まずそうに。


「確かに此度の戦は貴女に変化をもたらしたが、それだけではないと子和(しわ)殿はお考えなのだ」

「‥‥そうね。もう‥‥お互いの立場が出来上がってしまったから、吹っ切れたのよ」


 平然として語るその目には迷いが無い。


― 全てをあの男に賭けると決心したか‥‥―


 仲達(ちゅうたつ)は柚の目覚めに苦笑いを浮かべた。結城の逃避行を見れば柚の力量も測れる。

 それが故に、曹操にとって大きな役回りを(にな)うことになるだろうと推測もつく。


 柚が彼の実子の曹丕(そうひ)曹植(そうしょく)に振り回されることもないと。また、自身の子を家督争(かとくあらそ)いに参加させる非情さもないことを見抜いていた。


― こちらにやる気がなくとも‥‥女は兎角(とかく)(かしま)しい ―


「すごい包囲網ね‥‥あれは呉軍の旗‥‥」

「これで、劉軍が攻めてきては‥‥我が軍は‥‥」

子和(しわ)、孔明は軍を進めないわ。呉軍が包囲している限りはね」


 意味深な言葉に仲達(ちゅうたつ)は眉を寄せ、曹純(そうじゅん)に至っては驚きの眼差しを向けている。何故そう思うのかと、仲達(ちゅうたつ)は声を低くした。


「ユウが私を助けようとして、孔明が呉の都督と約束を交したのよ」

「それは(まこと)でございますか?!」

子和(しわ)、その場には玄徳(げんとく)公や()子敬(しけい)殿も立会人として居たわ。用意周到なくらいにね」


 孔明を非難するような口調で告げる。柚の感情が入っているのは確かだったが、仲達(ちゅうたつ)は黙ったまま馬を進ませた。

 目の前の城を迂回(うかい)し、曹操が陣取っているであろう江陵(こうりょう)の城へ向かったのだ。


仲達(ちゅうたつ)殿、この場をお見捨てになるのですか?!」


 曹純(そうじゅん)が信じられないといった感じで声を張り上げた。だが、それには答えようとせずに、仲達(ちゅうたつ)獣道(けものみち)を降りていく。


「子和、残るのは良いけど、貴方に呉の旗を燃やすことができて?」

「‥‥」


 同胞の命運を見捨てる結果に歯噛みしながらも、曹純(そうじゅん)は後に従った。彼も判っていた‥‥。


 敗走した将が立てこもった城など、士気も乱れて統率どころではない。行けば討ち死になることも。

 しかし、その城を任され赤壁の戦いに参戦していない兵もいるのだ。


「赤壁の大敗は守備側にも余波を出しているわ‥‥彼らは敵の陽動作戦に乗せられて敗走するだけよ」

「な‥‥なんと‥‥」


 冷静さを失った将達だけではどうすることもできない。周瑜(しゅうゆ)が相手では役不足なのだと。

 淡々と語る柚の言葉に曹純(そうじゅん)はただ馬を走らせた。


今は動かぬ龍の息吹を感じながら‥‥

仲達(ちゅうたつ)の思惑も天を睨んだ孤高(ここう)の輝きだった。



ここまで読んで下さって、ありがとうございます。

貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。

読んで頂けることが、執筆活動の励みになります。

誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ