表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天涯地神伝  作者: 真白 歩宙
結城の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/147

白龍の逃避行 其の十五

三国志の史実と演義の登場人物が出てくる中で、あらゆる策謀が渦巻く中、彼らとどう対峙していくか。


― 私は今の気持に正直に生きる‥‥ ―


「周大都督、柚殿は私が預かります」


 その言葉に周瑜は無表情に切り替えした。


「その女性はこの戦の宝。故にそれ以上のものを差し出せるのか?」


 孫権に戦利品を渡す予定で、それを奪われては周瑜(しゅうゆ)も困るとの(うった)え。露骨(ろこつ)に柚を”戦利品”と言わなかったのは周瑜の配慮。

 しかしだからと言って結城も諦めるわけにはいかない。


「貴女も一緒に来れば問題は無いでしょう」


今まで口閉ざしていた陸遜(りくそん)が柚の方へ歩き出す。慌てる結城の動きを制して孔明は彼を諌めた。


伯言(はくげん)殿、強行に事を進めるのは感心致しません」

「‥‥では呉を納得させる何かを頂けますかな?」


 挑発的に笑う陸遜(りくそん)は、自尊心を傷つけられた事を許さないといった怒りが見える。

 誰よりも周瑜の思惑を汲み取ることができる彼には自負の念が強い。それ故、孔明とこの船に居合わせる事態を招いたことは、彼の失態でもあった。


 勿論(もちろん)、この好機を利用して結城と柚を手に入れれば ”それ”も策略のうちに考えられるのだが。彼に華を持たせるほど、孔明は甘くも無く。

 周瑜(しゅうゆ)陸遜(りくそん)が同じ事を口にした時点で、孔明は笑いを浮かべながら切り出す算段を始めた。


「柚殿はユウ殿にとって心を通わせた大切な方」


 含みある言い方に、周瑜は真意を探る。孔明は羽扇を泳がせて、穏やかな笑みまで浮かべているのだ。


「柚殿をユウ殿の妻に頂きましょう」


 それを聞いた周瑜は破顔する。

 結城が女性だと孔明も気付いて尚、この言葉を口にしていると周瑜は(わら)ったのだ。目の前の男が、ようやく重い腰を上げて仕掛けてきたと。


「では孔明殿、今後の為にも荊州(けいしゅう)の所在は明らかにしておこうではないか!」

公瑾(こうきん)殿、確かに水軍で船団を壊滅させたのは呉。しかし今、孟徳(もうとく)公を追撃しているのは玄徳様です」

荊州(けいしゅう)は呉が頂いて然るべき!荊州争奪の算段は我軍が行う。よって劉軍は速やかに退かれよ!」


 周瑜(しゅうゆ)が柚に固執(こしつ)しないのは、戦後の荊州争奪(けいしゅうそうだつ)を考えての事。

 結城の件にしても、事後処理で呉に来る事があると先を見ていた。


「そんな‥‥」

「先の無い玄徳公の所に居るより、呉の方が貴女達に不自由を与えることはないんですよ」

「私の生き方は貴方方にそぐわない!」


 拒絶する結城の声は周瑜にも届いた。しかし、さして気にする風もなく孔明に向き直る。


「ユウ殿に来る気が無い以上、柚殿を其方に渡すわけには行かぬ。(ろく)である寵姫を召されたいならば、荊州(けいしゅう)を諦めよ!」


 結城は愕然(がくぜん)とした。友人を報酬の的にする彼らに怒りも募るが、孔明が乗るはず無いと気付く。

 この戦の報酬は荊州簒奪にあるのだ。偶然にも見つかった柚は思わぬ産物であり 報酬のうちには入らない。


― 自分が呉へ行けば、孔明様は荊州簒奪のことで困らない‥‥ ―


   ― でも、公瑾殿は理由をこじつけているだけに見えるし‥‥ ―


 迷いながらも、結城は無言で踏みとどまった。


「では公瑾(こうきん)殿の仰るように手は出しません。もし空いている城があれば頂きますが」

「何?!」


 平然と言ってのける孔明に、周瑜は唸った。手は出さないが撤退もしないと考える 孔明の真意は如何に。


「空いている城がなければ荊州を諦めるのだな?!」

「二言はございません」

「うむ‥‥ならば、今の言葉は(じょ)元直(げんちょく)殿と()子明(しめい)(りく)伯言(はくげん)が証人!」


 受諾(じゅだく)と証人の名前が発せられた時だった‥‥4


「周都督殿。この()子敬(しけい)、これ以上の感激はございませんぞ!」


 いつの間に近くに来ていたのか、程普(ていふ)魯粛(ろしゅく)を乗せた船が近づいている。

 その隣には3隻の軍船があった。周瑜はそれを見て顔を驚きに染める。


「‥‥玄徳公?!」

「今の言葉、此方の程徳(ていとく)謀殿、()子敬(しけい)殿のお二方と私が証人」


 劉備は二人を立てた言い方をした。その物腰は多くの者に慕われる王の風格と深さ。横には趙雲(ちょううん)が武神の如く、彼を守っている。


「では、我呉は今後の算段のため、退却させて頂く。さて、姫君方を返して頂こうか」


 その言葉と同時に船に橋がかけられ、陸遜が先導しながら孫姫を初めに大喬小喬が周瑜の船に移る。

 周瑜は内心、曹操追撃をしている筈の玄徳公をこの場の証人に仕立て上げたのは孔明の策なのではないかと疑った。


 しかし、それでは全ての動向を読んだことになる。逃げる曹操の考え、ユウを追い込む陸遜の考え、荊州を睨んだ自身の考え‥‥それらを全て計算して主を呼ぶことなど有り得ない。

 そう結論付けると、ユウに視線を走らせてから、船を出す合図を出した。


読んで下さって、ありがとうございます。

毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。

貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。

誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ