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天涯地神伝  作者: 真白 歩宙
結城の章

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白龍の逃避行 其の十

三国志の史実と演義の登場人物が出てくる中で、あらゆる策謀が渦巻く中、彼らとどう対峙していくか。

天の笛の音 舞い降りる神気


木漏れ日と河の調べが調和し


楽師の奏でる琴が天空の世界を思わす


二人の舞姫に 天 と 地


それぞれのことわりが降臨す 


幻想的な優しい息吹と芽生え




荘大(そうだい)な風景ですね。都督がご覧になられたら、さぞ驚かれるでしょうに」

「伯言殿‥‥」


 船着場に白の布を敷き詰めて、中央で着飾った大喬が天の舞いを踊り、小喬が地の舞いを踊る。

 大喬が手にした白・黄・赤・紫・緑・碧・黒の七色の薄絹の布を天と地に舞わし、それを受けた小喬が鈴のついた衣を持ち上げてシャラン、シャランと呼応した。

 辺りの兵士が魅入る中、(あで)やかに武装した孫姫が口上を述べる。


 陸遜(りくそん)徐庶(じょしょ)は、その口上に聞き覚えがあった。それは先ほど結城が陸遜に説明した、四季と地上の理。

 緊張しつつも孫姫は隣で祈る徐庶に合わせて、天に頭を垂れると高らかに読み上げていく。


「東の太陽が昇るように、人の命が生まれ‥‥青龍が大地に息吹をそそぐ。

新緑の世界なる、春のこと」


シャラン シャラン‥‥


「南の太陽が盛んになる時、木々がその青葉を大地に広げるように人も人生の謳歌を楽しむ‥‥朱雀は再生と発展。盛んに萌ゆる、夏のこと」


シャラン シャラン‥‥


「西に太陽が沈む時、人は老いて振り返り、その人生から何かを感じる‥‥白虎は修めの時を紡ぐ。変わり行く木々の世界なる、秋のこと」


シャラン シャラン‥‥


「太陽が夜の帳に隠れ、死を迎え新たなる生命の躍動を待つための休息‥‥玄武は終結の時を与える。大地が閉ざされる、冬のこと」


シャラン シャラン‥‥



シャララン シャララン‥‥


シャララン シャララン‥‥



 大地の風が緩やかに頬を撫ぜ、鈴を揺らす。これが策略だと誰が思おうか?

 この雅な風景画のような光景は、天女降臨の如く人々の心に残るに違いない。


 程なくして、辺りに日の光が伸びていく。


「瑠璃色の世界!」


 自然光の魅惑に感嘆する結城の横で、陸遜は複雑な表情をした。

 東の光が西の帳を開けさせ 辺りが紫と藍の混ざったような澄んだ色合いになる。徐々に光彩が明るくなり、地上に敷き詰めた白の布を珊瑚色に染め上げた。


 光の中で踊る大喬と小喬の中に、槍を持った孫姫が中央で槍舞そうぶを舞う。


― 貴女は本当に一生懸命な方ですね。ここまでの世界を作り上げた‥‥しかし、私は‥‥ ―


「口上も終りました。貴女は使命を果たされた」

「え?伯言‥‥殿?」


 抱すくめられ、陸遜の腕の中で口を塞がれる。息苦しさにもがくが、力でどうこうなるものでもない。

 皆、各々の役割を果たすべく、結城を見るものは無い。薄れていく意識の中で、結城は彼の切ない言葉を聞いた。


― 逃げれば追われるのです。貴女は自分がどれだけ魅力的なのかを知らない‥‥知らなさ過ぎるのです ―


 陸遜に支えられて、結城の体から力が抜けていく。小さくマントから出した手で合図を送ると、彼の前に武将の垣根が出来て二人の姿を隠した。


 永遠を思わせるかの如く、結城を欠いた祭は続く。



― 伯言、君に任せたい ―


   ― ユウ殿のことですね ―


― 私の留守中、この呉で孔明を出し抜けるのは君しか居ない ―


   ― 勿体無(もったいな)いお言葉です ―


― おそらく私もあの元直という男も、赤壁においては駒の一つになる。孔明自身も避けようがあるまい ―


   ― 自在に動ける手駒が私であると判っても‥‥彼は手の打ち様が無いでしょう ―


― 孔明を(あなど)るな。君と同じで、あの男は先を読むのが上手い ―


   ― 肝に銘じます。時に公瑾(こうきん)様、士元(しげん)殿からの書状で、曹軍の船は連環の計に落ちたと‥‥ ―


伯言(はくげん)、これからの赤壁を見よ。孔明の策、私の策、そして、君の動きにかかる ―


   ― 天女の恩恵はこれからの発展に繋がりましょう‥‥ ―


― 全ては君の手に(ゆだ)ねよう ―


読んで下さって、ありがとうございます。

毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。

貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。

誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。



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