白龍の逃避行 其の七
三国志の史実と演義の登場人物が出てくる中で、あらゆる策謀が渦巻く中、彼らとどう対峙していくか。
一方、曹操は張飛の奇襲で兵を半分に減らして細い山間をひたすら進んでいた。
「孔明め‥‥」
抜かりない駒の配置に曹操は舌を巻いた。先鋒で張飛が兵力を削ぎ、劉備が何かを仕掛けてくる段取り。
だからこそ、このまま西に向かうのは孔明の手で踊らされているように思えてくる。
「孟徳様!火矢にございます!」
「何!‥‥この臭いは?!」
焦りが曹操の中に生まれる。闇の中から火矢が放たれ、進んだ先に油の臭いがするからだ。火計に嵌ったと気付いた時には遅かった。
青銀の鎧に身を包んだ趙雲が軍勢を率いて曹軍を追撃する。白い鎧が炎に照らされ、朱色に輝く。
曹操は退路を絶たれ、そのまま進むしかない。
炎から逃れ出た場所は切立った斜面。曹操は慌てて崖から離れ、近くのわき道に進む。後から来た兵士は、劉備が落す土石の下敷きになった。
「おのれ‥‥どこまでも愚弄する気か!」
悔しさを声に出してみたものの、兵の大半を失っては生きている心地もしない。ふと、曹操は考えて馬の足を止めた。
「如何なさいました!」
傍に居る張遼が声をかけるが、曹操は黙ったまま動こうとしない。そこへ張飛の所から趙雲と劉備の攻撃を回避して来た張郃と許褚と夏候惇が合流した。
「孟徳様?」
「‥‥元譲か‥‥」
「如何なされた?」
遠くの荒野を見つめて、曹操は目を細めた。
「厄介なことになった‥‥我の命運も尽きるかも知れぬ」
その言葉に、夏候惇と張遼はこれから合間見えるであろう武人を思い浮かべた。
「玄徳様‥‥良かったのですか?」
趙雲の問いかけに劉備は無言で遠くの地を見つめる。
「孔明軍師は最後の詰めを雲長殿に託され申したが‥‥拙者は不思議でなりませぬ」
彼の言分は最もだった。劉備が心配する所も正に、それなのだ。しかし、どんな結果になろうとも、それはそれで孔明が全て判ってやること。
「良いのだ。それが最良と孔明が采配した結果」
趙雲は爽やかな笑みを見せて頷いた。
「時に子龍、それは何か?」
劉備は趙雲の手にした書簡を指差す。
「孔明軍師から次の手配を頂いておりまする」
「流石は我軍師殿!」
褒め称えた声に頷くと、趙雲は馬首を返して赤壁へ向かった。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
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誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。
ゴールデンウイークを含む4/28~5/6は2話ずつ更新していきます。




