白龍の逃避行 其の六
三国志の史実と演義の登場人物が出てくる中で、あらゆる策謀が渦巻く中、彼らとどう対峙していくか。
「孟徳様、此処から先は山間の抜け道。馬脚を遅めては‥‥」
「いや、許仲康将軍‥‥伏兵が居るかも知れぬ!」
許褚の言分もわかるが、張遼は気を緩めようとしない。
「文遠の申す通りだ。呉の周瑜が追っ手をかけない引きの良さ、それに孔明の動きも気になる」
「孔明が如何に知恵を出そうと、拙者が孟徳様をお守りすれば良い事!」
「ふっ、頼もしいな虎痴よ!しかし、劉軍が追撃主となれば、兵は居らずともあれで中々の武将揃い。手を妬くことは必死!」
曹操は息を切らしながらも、許褚に言い放った。それでも虎痴と愛称で呼ぶのは信頼の証。
許褚は眉を寄せたが、ふと思い当たるのか辺りを見渡した。数ヶ月前の趙雲子龍の勇姿。長坂波の一騎駆けは記憶に新しい。
その時だった‥‥
うぉぉぉぉ――――――!
バ――ン!バ――ン!
時の声と共に四方から火矢が降りかかり、張飛翼徳の軍勢が押し寄せた!戦陣を切って曹操に迫る張飛の手には、蛇矛が握られている。
蛇が進む如く槍先がくねくねと曲がった槍。天下無双の武勇を持つ張飛の武術は 他に追随を許さない。雄叫び一つで、曹軍を踏み留めたほどの脅威の猛者なのだ。
曹操は青ざめて馬に鞭を打った。許褚が、お任せあれ!と張飛に向かっていく。それに呼応して張郃も許褚の後を追う。
槍が交わり、互いの気迫が混ざり合う。しかし、張飛はもろともせずに許褚と張郃二人と互角に戦っている。
馬の脚が右往左往し、馬首を切り返しながら戦う三人。その間には、何人も入る隙を与えない。
蛇矛が空を切り、張郃のマントを切り裂く。獅子のような顔立ちが、鬼神のような恐ろしさを漂わせて張郃を見据える。
戦慄‥‥
武者震いのような感覚が許褚と張郃に沸き起こった。武人が最強の敵を相手にする時に沸き起こる感情。
「お前等が束になろうと俺様には適わん!」
張飛の怒号が殺気を放つ。挑発的な言葉に二人が槍を構えた時だった‥‥折れた槍が三人の真中に突き刺さったのは。
「何をしている!貴殿らの役目はもう終っている!」
後方から兵を薙倒して夏候惇が現れた。そのまま彼は張飛に弓矢を射る。
それが合図だったのか、許褚と張郃は退却した。
走り去る二人を追う張飛へ、馬を走らせながら夏候惇の矢が行く手を阻む。
「ちっ‥‥手柄は兄者達か‥‥」
悔しそうな張飛の舌打ちが三人を見送った。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
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誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。
ゴールデンウイークを含む4/28~5/6は2話ずつ更新していきます。




