白龍の逃避行 其の三
三国志の史実と演義の登場人物が出てくる中で、あらゆる策謀が渦巻く中、彼らとどう対峙していくか。
「!!!」
結城は息を呑んだ。連れて行かれた大天幕の中に居たのは、先ほど自分を叱咤した諸葛瑾だった。
「ユウ殿、何処へ参られるおつもりか?」
数人の文官武官が立並び、結城の返答を待っている。下手な言い訳をすれば、押さえ込まれて投獄されてしまう。
そこへ闞沢が姿を現した。曹操に黄蓋の投降手引きを持ちかけた、今回の功労者の一人だ。
「貴女は都督の元におられよ。元直殿には呉に投降して頂く。」
「世迷言を申されますな」
「これはこれは気の強い!」
笑いながら近づく闞沢に、結城は深呼吸すると大声で制した。
「まだ戦いは終っておりませぬ!私はこの戦いで重要な役割を仰せつかっている身!」
「ほほぅ、何の大儀があると仰られる?」
それまで黙っていた諸葛瑾が声をかけた。ゆっくりと二人の顔を見て言葉を選ぶ。
「今しばらく東南の風を留めなければなりません」
「一度吹き始めれば、覆る事などなかろう!」
「そうでしょうか?」
結城は羽扇をヒラヒラさせて闞沢を煽った。
そう、まるで孔明のように。
「東国の海より来る龍神が、湿った体を山々で干すが故の現象。なれば、龍の気が変わらぬように手を打つが必死」
「風が龍神を乾かすと申すか?!」
「今は夜ですから判りませぬが、その証に山々から龍の体が横たわっているのです。」
「何?!龍の体とな?」
一々突っかかってくる闞沢に笑顔で答えていく。
「東南の風が吹く時、空は細長い波状の雲が見えまする」
「馬鹿な!」
信じられないと、いった顔で闞沢は結城の腕を掴もうとした。
「下がれっ痴れ者!」
罵倒する言葉が結城の口から発せられた。呆気に取られる闞沢を無視して、諸葛瑾に切り出す。
「祭壇で孔明様が天道を。徐元直様が地道を修めなければ成りませぬ!」
「ふむ。地道とはどういったものか?」
「自然と人の道理を説きます。しかし‥‥」
結城は羽扇で口元を覆うと、徐庶を見た。視線が合うと、黙礼で答える。
「彼は夕刻からの潔斎で話す事ができませぬ。変わりに口上を述べるものが必要」
「ほぅ。で、ユウ殿の望まれる者は見つかったか?」
「龍神は武勇と美を好みます。これからその方々の元へ行かねば成りませぬ」
「武勇と美‥‥か」
「幸い、呉には揃って居られる。しかもこの陣中の近くに!」
そこまで言い終えると、結城は大天幕の出口に向かって歩き出した。徐庶は恭しく一礼すると、無言のまま結城の後に従った。
赤壁近くの西の辺に、活路を見出した。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。
ゴールデンウイークを含む4/28~5/6は2話ずつ更新していきます。




