謀略の胎動 其の九
三国志の史実と演義の登場人物が出てくる中で、あらゆる策謀が渦巻く中、彼らとどう対峙していくか。
―― ユウ・・・・何故私を拒む・・・・ ――
「・・・・・流石の都督殿もあのユウと申す娘には手を拱いておられるご様子」
「・・・・・・・・高貴な鳥は中々に囀らぬもの。」
周瑜の背後で日の光に隠れるように立つ男。薄茶の衣に仙人のような格好をして醜い顔を歪めた。おそらく笑っているのだろう。
この男とのやり取りは初めてではない。こんな駆け引きの中にも、茶々を入れる男の小賢しい処が、周瑜は気に食わなかった。
自身の背後に視線を感じつつも、言葉を発する時を待った。
どう見ても目の前のこの男が一筋縄で動くとは思えない。それほどに”曲者”なのだ。
「何故、ユウ殿のことを知っている」
「ただ安穏と暮らしている訳ではない。城に呼び出されれば、前もって必要な情報は得ておく」
「再三、私の呼び出しに答えぬのに、今日は随分と聞き分けが良い」
皮肉った物言いをもろともせずに、男は嗄れ声で答えた。
「赤壁が面白いことになっているように見えての」
的を得た言い方に、周瑜は眉を顰めた。なんと感情を逆撫でするのが上手いのかと。気に食わないながらも、戦況を考えればこの男は必要な働き手。
「軍に仕官する気はないか?」
「ほほぅ・・・・主に仕えるぐらいならば、赤壁を渡った男の元に降ろうかの」
「公覆もそなたも余程の悪趣味と見える。」
軽蔑した視線を投げて周瑜は男に消えろと命じた。足音が遠ざかって行く。交渉は決裂。
傍から人の気配が遠ざかって行くのを耳にし、周瑜は重い溜息を吐いた。
「孔明様、いつもの部屋ではないのですか?」
「同じ場所で軍議をするのは好ましくありません」
言われて結城は思い当たる節があるのか、静かに頷いた。そこへ部屋から出てきた男が歩いてくる。
凛とした孔明とは対照的な影を持った男。凡そ、出入りのできるような姿ではない。しかし、結城はその不自然さについ頭を深く垂れて礼を尽くした。
「良い供を連れておられる・・・・」
チラリと孔明へ視線を合わせ、そのまま何事も無かったように去っていく男。呆気に取られている結城に孔明は、行きますよと歩き出した。
何かが交差した瞬間だった・・・・
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。
ゴールデンウイークを含む4/29~5/6は2話ずつ更新していきます。




