謀略の胎動 其の七
三国志の史実と演義の登場人物が出てくる中で、あらゆる策謀が渦巻く中、彼らとどう対峙していくか。
「どう思われますかな仲達殿」
馬を進めながら曹純は空を仰いだ。曹操のことが心配なのだろう。
厳しい男ではあるが、なかなかどうして部下からの気遣いを人一倍受けるのも曹操の魅力的な部分であった。
結城と別れてから数日経っているが、仲達はまだ赤壁を離れてはいなかった。入れ替わり訪れる”作”や”草”の情報で、孫権配下の黄蓋が曹操の元に投降した事を知っている。
―― 策に溺れるのはどちらか、私は私でこの好機を活かさせてもらう ――
「あちらには多くの参謀方がいらっしゃるのだ。心配ならば戻られよ」
仲達は素っ気無く言い放った。優しくしてやる言われも無いが、そういった性格でもない。
出来る限りの彼なりの配慮だった。
「あ、いや・・・・気持はありがたいが・・・・・拙者は殿から仲達殿の護衛をおうせつかっておる故」
「別段、その私が良いと申しておるのだが・・・・」
「・・・・・殿は、一度言われた事は曲げられぬお方。お気持はありがたいが・・・・」
歯切れの悪い言葉で曹純は仲達の申し出を断った。細々と溜息をつく曹純に仲達はそっと囁いた。
「では、我々がギリギリまでこの地を離れなければ良いのでは?」
「なんと?!斯様な事ができますかな?」
身を乗り出す曹純に仲達は虎豹騎を使えば造作ないことを告げた。虎豹騎の二人を伝令役に、もう一人を仲達の影武者に。
状況に応じて策を講じて昼夜馬を走らせる。
北の憂いは身代わりだけで抑えられると確信していた仲達だからこそ提案できた。そもそも、北に行く気などもともと無いのだから。
曹純の杞憂を利用した作戦などと誰が気がつくだろうか?
仁義を通して我を通す、これが仲達の戦術だった。
「しかし、最終的には北へ参らねば命令違反になってしまいます故、その”見切り”は私が」
「仲達殿がこの戦況と北を統べながら見守ってくれるとはありがたい!」
そもそもこれが間違いだったのだろう・・・・・。いや、曹操が仲達を陣営から外した事から歯車は狂い始めていた。
しばらくして、仲達を護衛した虎豹騎が北へ向かった。その知らせを受けた曹操の元に、一艘の船が辿り着いた。
朝靄の明けぬ中、きしいだ音をさせながら櫓の音が木霊する。
曹軍百万の軍勢に囲まれ、蔡中達は曹操への面通りを願い出た。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
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誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。
ゴールデンウイークを含む4/28~5/6は2話ずつ更新していきます。




