表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天涯地神伝  作者: 真白 歩宙
結城の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/147

謀略の胎動 其の三

三国志の史実と演義の登場人物が出てくる中で、あらゆる策謀が渦巻く中、彼らとどう対峙していくか。

―― や・・・・いや!こんな姿を見られるなんて!!孔明様に気付かれてしまう! ――


 結城は涙目になって孫姫に(あらが)った。加速する感情は(おさ)えきれないのか、孫姫の歩幅は大股(おおまた)になっている。


バシィ―――――ン!


 丁度、結城が扉の前に立った時、それは聞こえてきた。


―― 何?何の音なの・・・・・ ――


 何かを()()えるような音が貴賓室の扉の向こうから聞こえてくる。言い知れぬ不安に結城の体が動かなくなった。


「!!」


  孫姫は結城の頭に白い布をかけると、そのまま扉を開け放ち中に進んだ。視界を(さえぎ)られた結城は震えながら姿を隠してくれる布にすがり付く。


「孫姫・・・・・」


 貴賓室の入り口に(たたず)む孫姫を見つけ、徐庶は結城の姿を探した。しかし 妹姫が姿を隠して居るだけで、結城の姿は無い。


周瑜(しゅうゆ)・・・・随分(ずいぶん)狂気(きょうき)に満ちた顔をして・・・・どうした?」

「・・・・・拙者(せっしゃ)は本心を申したまで!」

「まだ言うかっ!」


バシ――ン!!

バシ――――ンッ!


  血だらけになりながらも、黄蓋(こうがい)(ひざ)を立て周瑜を見据(みす)える。その風景に溜息(ためいき)を吐きつつ、孫姫は結城の耳元で、そなた・・・どうする?と(ささや)いた後、布を取った。


「!!!」


結城が見たもの。


 それは血溜(ちだ)まりに(ひざまず)いて、周瑜(しゅうゆ)から鞭打(むちう)たれる黄蓋(こうがい)の姿。振り下ろされる(むち)が肉を()いて鮮血(せんけつ)(したた)らせる。


「キャァァァァァァッ――――!!」


 叫んだと同時に結城は我を忘れて黄蓋(こうがい)の元に走った。血まみれの老人を抱きしめて、周瑜(しゅうゆ)に向き直ると()(てい)して止める。


「周瑜様、お止め下さい!」

「な・・・・そなた・・・・・・」

「大切な家臣を一時(いっとき)の迷いで手にかけるつもりですか!」


 周瑜は(むち)を持った手を振り上げたまま動かなくなった。いや、動けなかったのだ。


 目の前の麗人に心を奪われて。二喬(にきょう)は世に名高い美女。しかし、その彼女達よりも美しい天女が目の前に舞い降りた。

 貴賓室に(そろ)った武将達は呆気(あっけ)に取られて結城に魅入(みい)った。


「やめて・・・・・黄蓋(こうがい)様をこれ以上、鞭打(むちう)たないで下さい。どうしても、と言うのなら・・・・」

「何を言う・・・・・私が貴女を打てる筈も無いだろう」


 結城の体は恐怖で震えていたが、黄蓋を(かば)うようにして周瑜と向き合っている。

 華やかな髪飾りが揺れ、真っ直ぐ見据えるつぶらな瞳が今にも泣き出しそうに(うる)み、サクランボのような(くちびる)がきつく()ざされている。色白でたおやかな体が(おび)える様は、正に天上人。


「・・・・・・ユウ殿・・・・か?」

黄蓋(こうがい)殿・・・・大丈夫ですか!」

「そなた・・・こ・・・・声が・・・戻ったか・・・・・良かった」

「あっ・・・・」


結城は(うずくま)る黄蓋の体を支えながらハッとした。声が出ているのだ。口に手を当てて、我に返る結城。


 周囲に気がつけば、皆自分を見ているではないか!結城は恐る恐る徐庶の居る方を見た。徐庶はあまりの結城の変貌(へんぼう)に、呆気に取られ視線が合った瞬間に(うつむ)いてしまった。大きな衝撃(しょうげき)が結城を包み込む。


―― だめ・・・・ ――


 視線がその先へ進まない。そう、その先に居るであろう孔明を。


「もう・・・・ここには・・・・・・・・居れません。」

「!!何を言うかっ・・・・貴女は大切な・・・・・・」

「男の私がこのような格好!私には抗えなかった・・・・」


 涙をためて周瑜に抗議する結城。呉の重臣は結城が女子であることは承知している。そして今、彼女が発している言葉の意味も。


―― 知られたくなかった! ――


 偽りは大罪。だから結城は男子であろうと努力した。それを孫姫に(あば)かれ、こうして全員の前で(さら)し者にされたのだ。


 孔明にいつか話す日が来るだろう・・・・そう思っていた。それまでにどう謝罪するか・・・・だからこそ、必死に隠し通していたのだが。


 しかし、結城の心にはもう一つ違った感情も生まれていた。


―― 孔明様・・・・・・ ――


 堪え切れず、涙を流し顔を隠しながら広間を飛び出す結城。道行く者達が、結城の姿に振り返る。


「私は柚の事をとやかく言える人間じゃなかったのよ・・・・」


読んで下さって、ありがとうございます。

毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。

貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。

誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ