謀略の始動 其の一
三国志の史実と演義の登場人物が出てくる中で、あらゆる策謀が渦巻く中、彼らとどう対峙していくか。
バァァァァ――――――ン!
銅鑼の音と共に黄蓋が蔡中達を伴って貴賓室に入ってきた。
民家のつくりとは思えぬほどの広間には、主だった武将に軍師参謀が揃っている。
孫権の城の謁見の間とは違った威圧感が押し寄せている。
皆、開戦を意識して殺気立っているせいもあるだろう。徐庶は自分の前に立つ孔明を見た。
遠くを見つめるような視線で、此方に来る黄蓋達を見つめている。そこに居る全ての忠臣が、周瑜の言葉を待っていた。
赤壁の戦いには何の打開策も持っていない。おそらく周瑜や孔明以外は成す術が無いだろうと。
それほどに曹操軍の大群は脅威であり、それと一戦交えることは無謀にも思える。
しかし、孔明は開戦を持ちかけた使者であり、周瑜はそれを受けて孫権に進言した。
勝算の無い戦はしない。
だからこそ、彼らが対曹軍のためにどんな策略を巡らすのか・・・・
興味の的であった。
「都督殿が、其の方等の処遇を決めて下さる」
「・・・・・・・」
蔡中達捕虜はおずおずと頭を下げた。
最早、弁解は無用なのだと、周瑜の威圧的な空気がその場に立ち込めている。
「貴方方が曹軍を荊州へ招いたか・・・・・」
穏やかに問う周瑜は冷涼な視線で蔡中に切り出した。その畏怖堂々とした物言いに怯む男達。
「策を立てたつもりだろうが、浅はかな悪知恵をいくら集めようともこの私には通用しない」
凛とした声が貴賓室に響き渡る。
蔑むような目で一瞥した後、周瑜は低く言い放った。
「このもの達を追放せよ。曹軍に降ろうと威にもならぬ」
「都督殿?!」
「くだらぬ者を裁いては名が穢れる。捨て置け」
高慢な物言いに周囲は怯んだが、呉の武将は当然のように周瑜の言葉を受けている。
蔡中達は彼の驕り高ぶった態度に腹を立てたが まんじりと唇を噛み締めて耐えている。続けて揚々とした言葉が武将達に投げ掛けられた。
「曹軍は百万の大軍で堅固な陣を作っている。彼は孫子を尊びその説法も見事でこれを破るは至難であろう。」
蔡中の居る事を無視して話しだした周瑜の思惑が判らず、武将達は静かに彼の言葉に耳を傾けた。
何を言わんとするのかと。
「貴公達にそれぞれ三ヶ月分の兵糧を渡し、それに備えていただく。」
多くの者の息を呑む音がする。
周瑜は言い終わると黄蓋に『放してやるがよい。』と嘲笑うように言った。
その態度に黄蓋は眉間に皺を寄せて周瑜に歩み寄った。
「三ヶ月ですと?いくら兵糧を頂こうと何の役にも立たぬ!」
「何・・・・・」
「斯様にかかる戦であれば元老の申される様に、今のうちに降伏されよ!」
「貴様、君主や私を愚弄するかっ!」
真っ赤になった周瑜は、怒りを露にずかずかと黄蓋に歩み寄り鞭を持った手を振り下ろした。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




