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天涯地神伝  作者: 真白 歩宙
結城の章

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謀略の明暗 其の十

三国志の史実と演義の登場人物が出てくる中で、あらゆる策謀が渦巻く中、彼らとどう対峙していくか。



「ああ、良い。出来ぬ事は無理にしないことだユウ殿」


― 孫姫・・・・ ―


 軽快な足取りであてがわれた部屋に(おもむ)く彼女の後を小走りで着いて行く。如何(いか)に戦乱とは言え、呉の姫が赤壁まで来ているのはおかしい。

 不思議そうな視線を向けると、姫は赤面して視線を逸らした。


「孫姫の武術は素晴らしいですよ。その辺の武将よりは腕が立つ。」

伯言(はくげん)!」


 あらぬ方からの声に孫姫は、声の主を(いさ)めた。


「本当の事なんですから、今更(いまさら)、隠す必要も無いでしょう姫?」

「嫌味な奴め」


さも、心外だと言わんばかりに陸遜(りくそん)は肩を(すぼ)める。チラリと結城の方を見てから徐庶に挨拶をしてきた。


「徐元直殿ですね。私は(りく)伯言(はくげん)と申します。」

「貴殿は軍議に参加しなくても良いのですか‥‥」


 陸遜(りくそん)挨拶(あいさつ)を受けてから、判りきった事を口にする徐庶。

 穏やかに・・・・


「私なんかが参加しては公瑾様の足手まといになってしまいます」

「そうはお見受けしないが・・・・」

「ふふっ、私の外見に(まど)わされないで下さいね」


 ”()えぬ男”と両者が記憶に(とど)めた。

 その不穏な空気を察知(さっち)してか、孫姫は槍を女官から受け取ると陸遜に向かって()きつけた。

 勢いのついた槍先が陸遜の頭巾の布を引き裂く。


「うわっ・・・・姫、私を殺す気ですか?!」

「何と無粋な・・・・怯えているではないか!」

「・・・・・・・」


 二人が振り返った先には結城が涙をためて震えている。

 いや、涙した覚えは無いのだが、結城は無意識のうちに二人の言葉に隠された殺気を受けておびえた。


「ああ、ダメだ。少しでいい・・・・元直殿、ユウ殿を借りる!」


 強く言い放ち結城の腕を掴むと部屋に入ってしまう。慌てて追う陸遜達は部屋の前で追い返された。


「今は引き下がった方が・・・・」

「参ったな・・・・孫姫は一度言い出したら聞かないし・・・・どうします元直殿?」

「近くの部屋で待たせて頂きます」

「では拙者は捕虜(ほりょ)都督(ととく)殿の元に・・・・・」

「もうそんな時間か。なれば我等も周都督の元に参らねば」

「・・・・・・」

「元直殿、姫は美しいもの愛らしいものが好きなのです。特にユウ殿みたいな方は」

「ユウ殿は男子ですぞ・・・・」

「判っています。ただ姫の遊び心に火が灯されているので、とめ様が無いですが危害は無いと思いますよ」


 徐庶は笑顔で語る陸遜に絶句(ぜっく)していた。何が遊び心なのだと。

 今、結城が難しい状況に追い込まれているのは必死。だからこそ、これ以上悪化させる事は許されない。いや、させたくない。


「公瑾様の捕虜への面通(めんどお)りは、然程(さほど)時間もかからないと思いますよ。」

「・・・・判りました」

「私も気になりますから、終ったら一緒に戻りましょう」


 陸遜に説得されて徐庶は小さく頭を下げた。その胸の内では、様々な目論見(もくろみ)を読み取ろうと分析している。

 陸遜にしてみれば、捕虜への面通りは徐庶を共わない方が()の手の内を見せずにすむ。それなのに結城を遠ざけ、周瑜の場に自分を連れて行く意味があるのか?

 徐庶は静かに考えていた。

 彼が同意したのは、結城を待っていては面通りも結城も見逃す羽目になるからだ。入った扉から出てくるとは限らない。

 周瑜が何時何処で目通りするかも彼らに付いてゆかねば知り得ない。


 誘われている状況は、何か策があるのだと読める。この状況で徐庶に選択権は無かった。


 徐庶は陸遜に言われるまま、その場を離れた。


読んで下さって、ありがとうございます。

毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。

貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。

誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。


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