神芽 其の三
三国志の史実と演義の登場人物が出てくる中で、あらゆる策謀が渦巻く中、彼らとどう対峙していくか。
深々と体に染み入る神気。結城は朦朧とした意識の中で瞼を開こうと努力する。だが体は意思に反してピクリとも動かない。
「ユウ・・・目、開けてよ。」
「・・・・・。」
「ねぇ、ここ何処なのよ。ねぇ、判るように説明してってばっねぇ・・・っ・・・ふぇ・・・・。」
「・・・・・。」
柚の声が遠くで聞こえる。一頻り泣いてスッキリしたのか、柚は結城から離れて森を見回した。
しかし、心細さ故か直ぐに戻って来て泣き出す。
「・・・・なんと・・・・・斯様な処に人が居るとは・・・・。」
「・・・・・・だ・・・れ・・・ここ何処よ・・・・・・もう、わかるように説明してよぉ・・・・。」
「随分と異形な身なりをしておる・・・・ワシは水鏡と申すものじゃが。そなた達は何処の者か?」
「訳、判んない・・・。」
― 水鏡、水鏡って何処かで ―
結城は見覚えのある名を思い出そうとして小さく呻いた。その微かな声を相手は見逃す筈もなく、付き人に指示を出すと連れていた牛に結城を乗せて歩き出した。
揺れに身を任せて 今の状況を結城なりに把握しようと試みる。と言っても、結城は水鏡という人物の容姿も見れない状態なのだ。人相云々というものでもない。
ただ、あの柚が水鏡に従っているということは、それだけ紳士的で知恵の回る人物だろうと伺える。
なぜそう考えるか?
もし柚に暴力か脅しをしかければパニックになるだろう。それに殺気というような威圧的さも感じない。聞こえる声色は穏やかで抑揚のある老人のもの。
いつしか結城は睡魔に身を委ねていた。これが夢ならば、覚めた時にあの暗い教会の宝物庫に戻っているのだから。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
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