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天涯地神伝  作者: 真白 歩宙
結城の章

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謀略の乱 其の八

三国志の史実と演義の登場人物が出てくる中で、あらゆる策謀が渦巻く中、彼らとどう対峙していくか。

結城は目の前にある大きな軍船に圧倒されていた。


「どうしましたユウ殿?」

「これに・・・乗るのですか?」

「我々が乗るのは、足の速い船ですよ。」

「???」

「まぁ、着いていらっしゃい。」


羽扇で手招きをする孔明は終始笑顔だ。

夕方になるまでの間、まだ大分時間がある。

闇に乗じて荷を運ぶのだと思っていた魯粛は、怪訝な顔をしながらも藁を船一杯に乗せ中型の軍船で待機している。


「ユウ殿、あれは如何にして?」


船に入った孔明は二人になると口を開いた。彼の”あれ”とは、餅のことである。

結城は小喬を言い含めて、大喬の城で働く調理人を送ってもらうように頼んだ。

そう、知りたいのはこの後の事。


「料理人に聞いたのはこの呉の国の調理の種類だけです。」

「ほう、」

「焼く・煮る・炒める・揚げる・・・実に様々ありましたが蒸すという調理法が古くからの調理法で普及しやすく、粘り気のある米作りが盛んだったので。」

「成る程。」

「餅のような物は古くからありましたが、保存食として二次加工してから使うような考え方はありませんでしたから。」

「それだけで貴方はあれを?」


問答のように繰り返される応答に結城は降参(こうさん)した。


「孔明様、あれは私の国の料理なのです。」


要するに、蒸すを念頭に入れて、保存が利いて持ち運びが楽で簡単に加工できる栄養の良い食べ物。

それを考えた時に、今この呉にある食材で手軽にできるのは、あれしかなかったのだと打ち明けた。


「あれは一つでご飯二膳分の満腹感を出しますから。食べ過ぎると太ってしまうのです。」

「確かにそのようですね。きめの細かい物は体に良い。」

「私の国も米や麦が主食なので。」

「ユウ、私と約束を。」


孔明は()えて結城を呼び捨てた。

彼が敬称をつけない時は、心に思ったことを口にする時だと結城は知らずに学ばされていた。

だから余計に体が強張(こわば)る。


「もう二度と・・・脈絡(みゃくらく)も無しに受けないで下さい」

「・・・・すみません」

「私は怒っているわけではないのです」


ユウ、と優しく呼んでその体を抱きしめる。

孔明はその耳元で、策略とはこれから私が見せるようなことを言うのですと諭す。



その日の夕方、樊口(はいこう)へ到着した孔明は趙雲の率いる軍に(わら)を加工させた。

魯粛は、取りに来たのではなかったのかと驚いたが徐庶や他の参謀たちも慌てる素振りも無い。


「矢、十万本ですぞ。」

「魯粛殿、孔明様の考えは後になって判ると思いますよ。」

「ユウ殿っ」


微笑む結城に魯粛は肩を落す。

つくづくお人好しなのだと、結城は横に居る魯粛を見た。

用意できなかったらと孔明の心配をしてる。


「おお、これは魯子敬殿・・・この度の同伴ありがたく思います」

「これは、徐元直殿、孔明殿は大丈夫なのだろうか?」

「十万本の矢ですか・・・・それは彼にしか判り得ぬ事」


貴方も同じ事を言う と魯粛は嘆いた。

その言葉に徐庶は結城が大きく飛躍したことを悟った。


「徐庶様!」

「ユウ殿、変わりはなかったですかな」

「はい、あ・・・・これ、昨日作ったのですが・・・・・・よければ汁物に入れて皆さんで食べて下さい。」

「これ・・・・は?」

「餅です。あ、孔明様が呼んでる・・・・ではっ」


去った後に徐庶は不思議そうに堅い”餅”を見た。

魯粛は呉であったことを掻い摘んで説明した。そうでもしなければ、胃の()がおかしくなりそうだからだ。


徐庶は孔明と並ぶ娘を見る。

魯粛の話から、正体が暴かれたことは確かだろう。

それでも気丈に振る舞い、活路(かつろ)を見出した。

だが、それは徐庶にとって痛々しくも思えてしまう。

劉備の元で女性として生きる芽を摘んでしまったのは孔明と他ならぬ徐庶なのだから。


おそらく、呉の武将たちは結城を女性として認識してると確信した。

特に周瑜が結城に仕掛けたのは明白。



「さぁ、参りますかな・・・・・()子敬(しけい)殿」

「孔明殿、どちらに参られると言うのか!」

「ええ、ですから・・・・これから取りに行くのですよ」


(らち)があかない孔明との会話に魯粛は言われるまま船に乗り込んだ。

向かうのは長江の河上。

魯粛は慌てて孔明を止めた。


「孔明殿!此れより先は曹軍の水軍が陣営している場、危険です!」

「ええ。斯様な大声を出されては危険でしょうな」

「そ・・・・それは・・・」


傍に佇む結城は理解し難く、魯粛と孔明の遣り取りを見守った。

確かに、このように濃い(きり)が発生している中で船を出すのは危険だ。

自分達の船には明かりも点いていないのだから。


結城達の船は途中で停泊(ていはく)した。

用意した魯粛の船二十隻は先の方へ行ってしまう。


「船が・・・・曹軍に見つかってしまいますぞ!」

「そうでしょうな。」

「な・・・なんと?」


孔明は悪びれず、魯粛の言葉を肯定した。

その時 バ――ン という銅鑼(どら)の音が前方から鳴り響いた。


読んで下さって、ありがとうございます。

毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。

貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。

誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。


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