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天涯地神伝  作者: 真白 歩宙
結城の章

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臥龍の眼 其の三

三国志の史実と演義の登場人物が出てくる中で、あらゆる策謀が渦巻く中、彼らとどう対峙していくか。

「ユウ殿は女人なのでしょう・・・・甘夫人の一件から、もしやと思っていたのですが・・・・。」

糜竺(び じく)殿、今は斯様(かよう)な場では・・・・・。」

「しかし、孫乾(そんかん)殿、此度(こたび)・・・長坂(ちょうはん)の戦いで糜夫人(びふじん)を亡くしておられる。」

「貴行の妹御であったな。」

「甘夫人を支える娘が必要なのでは・・・・阿斗様も居られること故・・・。」


 参謀会議は議題から逸れ、劉備の花嫁話に転じてしまったようだ。賛同者が募る中 扉を開けて入ってきた劉備・孔明・徐庶・趙雲。

 当の劉備が顔を出して慌てる彼らを見て、徐庶は孔明と視線を合わせる。


「如何致しましたかな?」

「いえ・・・・ユウ殿を劉備様の花嫁に・・・と。」

「・・・・・・。」


 夏口(かこう)にある城内の一室、ここは会議室なのだ。流石の孔明も呆気(あっけ)に取られた。徐庶と趙雲に至っては絶句(ぜっく)というところか。

 如何に隠そうとも、隠し切れないのは仕方が無い。しかし、斯様な状況下で結城に対しての認識が広まるとは。

 劉備と言えば、微笑みながら椅子に座っている。


「ユウ殿を(めと)った者は果報者(かほうもの)よ。孔明、徐庶、如何に思う?」


 劉備は即答せず答えを二人に委ねた。孔明は一礼して羽扇を口元に持っていくと 小さな声で答えた。


「善き相手ですが、ユウ殿は手折(たお)って飾るよりは、野に咲く一輪で在った方が良いかと。」

「左様、孔明殿の言われる通り。善き妻にはなりましょう。しかし、人の心に善き人として踏み込める者は貴重ですぞ。」


 糜竺(びじく)達は不満そうにしていたが 正論なだけに提案を下げるしかなかった。誰も劉備の為を思って考えたことなのだ。


「もう直、()から使者が来るでしょう。」

「孔明?」

「劉備様、江陵(こうりょう)を占領した曹操軍は河を下って来るでしょう。当然、呉も高みの見物ではいられなくなったということです。」


 その時の使者に自分と結城で向かいたいと提案した。

 その場にいた全員は花嫁話以上に驚いた。美人局(つつもたせ)でもないのに使者に女を起用するなど。聞いた試しが無い。

 孔明は羽扇をヒラヒラとさせるだけ。


「曹操軍はユウ殿を幕僚(ばくりょう)として迎えた。司馬懿(しばい)は頭が切れる者。その男が側近としたのです。」


 ああ、と納得したように頷く。孔明は雄弁(ゆうべん)に語りだした。


「我等 軍師参謀等には雄弁さが必要とされるが、徐庶殿が言うように人を心の輝きで惹き付ける者は少なかろう。 白龍が如き光で相手の心を魅了して行えば、(いたずらに)に策を(ろう)せずにすむと言うもの。」

「参謀の下にあってこそ、ユウ殿は輝きを増す。それに、あの曹軍で男子であることを貫いた御人。(あば)いては離れましょう・・・。」


 徐庶は孔明の話に添えるように付け足した。


「うむ。ならば私はユウ殿を娘・・・・いや、息子のように思おう。さすれば、甘夫人と居ってもおかしくあるまい。」


 趙雲は扉の前に立ちつつ、小さな安堵の溜息をついた。

 仲達からの追撃を逃げている最中、結城は男子として気丈(きじょう)に振舞っていた。

 彼にとって劉備は絶対的な存在であったが、嫁がせるために必死になって隠しているものを暴くことは避けたかった。

 劉備に視線を走らし、この先ユウを(めと)ることがあるのかと杞憂(きゆう)する。


「孔明がそこまで読んでいるのならば大丈夫であろう。ユウ殿の件は暴かぬのを条件として心を射止めた者に全権を(ゆだ)ねよう。」


 あくまでも父としての言葉だった。

 先程まで口を(つぐ)んでいた参謀たちはホッとしたように背にもたれる。



 結城が白龍と呼ばれるのはもう少し先のこと。


読んで下さって、ありがとうございます。

毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。

貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。

誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。


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