表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天涯地神伝  作者: 真白 歩宙
結城の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/147

幽明の調べ 其の七

三国志の史実と演義の登場人物が出てくる中で、あらゆる策謀が渦巻く中、彼らとどう対峙していくか。

「ユウ殿・・・・起きられませ・・・」

「ん・・・母御様?」


 結城は目を擦りながら揺すり起こした相手を見た。覚醒してくる感覚が、外に人の気配を拾わせる。


「孔明様のお迎えがいらしたようです。」

「え・・・こんなに早く?」

「ええ。ユウ殿・・・・本当によろしいのですか?」

「はい。私は何が自分の生きる道なのか・・・・知りたくなりました。」


 結城は彼女を見つめ、はっきりと告げた。そこに迷いは無い。


「行きましょう、母御様。」

「ええ・・・。」


 気迫に圧されて、彼女は腰を上げた。腕を庇いながら引き戸を開ける。朝もやの中に司馬徽と童子が馬上から一礼して消えていく。別れ際の(いさぎよ)さは、清々しささえ感じさせた。


「ユウ殿、あちらに・・・・。」

「急ぎましょう・・・・母御様。」


 彼女の手をひき、使者であろう男の元へ歩く。霧は深く、傍まで来てようやく使者殿の顔が見えたほどだ。

 端正(たんせい)な顔立ちで、真っ直ぐ結城達を見つめる様は優しさと強さの混ざったもの。此れほどまでに美男な偉丈夫を見た事があっただろうか?

 孔明や仲達・・・・張遼など以上に、精悍(せいたん)な美しさがあった。


「貴殿がユウ殿でござるか?」

「はい。」

「拙者、(ちょう) (うん)字を子龍(しりゅう)と申す。」


趙雲(ちょううん)?!確か凄い武将だった気がするわ ―


「徐庶殿の母御殿をお助け下さり、礼を申し上げる。ユウ殿これを。」


 趙雲は書簡を結城に渡そうとした。書かれている事は察しがつく。結城は首を振って受け取らず、趙雲に聞き返す。


「孔明殿は貴殿に策を用意しているのでしょう?だとすれば、これは不要です。見るまでもない。」

「・・・・・・判り申した。では、こちらへ・・・・。」


 趙雲は馬に結城と徐庶の母を乗せると出発をした。徐庶の母を一頭に、趙雲と結城が一緒に乗る。カツカツと音を立てて荒れ野を行く。(もや)の中に水の匂いを嗅ぎ分け、川が近い事を悟る。

 加速する馬のスピードは更に増して・・・・二頭の馬を手綱だけで自在に操る彼の腕に感嘆の声を上げた。


 怪我をしている結城が馬に掴まれないのを知っているということは、水鏡が趙雲に経緯を話したに他ならない。

 労わるように腰に腕を回して手綱を握る。もう一方で徐庶の母の事も気遣いながら。

 結城は成る程と思った。彼は万人に配慮できる優しさと強さを持っている、だから孔明が任せたのだと。


「あそこです。」

「船?!」

(きり)に乗じて船で南下します。もう少しの辛抱(しんぼう)でござる。」


 彼の言葉から、孔明が三日後と指定した意図を汲み取った結城は驚愕(きょうがく)した。


― 数日後の気象まで判るの? ―


 現代では衛星を飛ばし、気象予報士が天気を推測する。しかし、この時代に人類は月にすら行っていないのだ。

 だが、孔明は見事なまでに、気象を作戦の道具として扱っている。


 川岸に止まり趙雲は組まれた(いかだ)に馬ごと乗ると縄を切った。それが合図なのか、徐々に岸を離れて櫂も無しに川を渡りだす。


「ユウ殿っ、戻られよ!」

「えっ?!夏候(かこう)(とん)将軍?」


 (きり)が徐々に晴れて朝日と共に声の主たちを浮かび上がらせた。

 川岸に居るのは、夏候惇・張遼・許褚・張郃・・・そして仲達。


「うそっ・・・・。」


 体が震える結城を優しく抱きとめて、趙雲は静かに尋ねた。


「引き返すならば今でござる。あの書簡・・・・本当に見なかったことを後悔なさらぬか?」


 分岐だった。川へ飛び込めば仲達の元へ戻れるだろう。趙雲に任せれば孔明の所に行く。

 結城は小さな声で告げる。


「戻れません。経緯は聞いてるのでしょう?私の居場所はありません。」

「判り申した・・・・・なれば、少し辛抱なされよ。」

「えっ・・・・きゃぁっ!!!!」


 趙雲は縄を結城に巻きつけて馬上から降りる。


「静まれ曹軍。佐倉ユウ殿は我軍が貰い受けるっ!」


 雄々しい声が轟き、縄を締め上げる。結城は堪らず声を上げた。震える体は痛みに耐え切れず、意識を途絶えさせた。

 ぐったりした結城を見て徐庶の母は悲鳴をあげたが、趙雲はその体を片手で前方に突き出すように吊るす。


 矢を射るな、という意思表示。


 その間にも(いかだ)は中央に停泊している船に進んでいく。距離が広がる中、仲達はくくっと笑う。


「我軍から略奪(りゃくだつ)するとは、それ相応に覚悟されよ!この仲達、全力で奪い返す!」


 宣戦布告とも付かぬ言葉を趙雲・・・・いや、策を授けた孔明に発した仲達はそのまま馬首(ばしゅ)(ひるがえ)して去っていった。




 仲達の脳裏に自分の読みと同等の切れを持つ、諸葛亮孔明が刻み付けられた。

 こうして結城は孔明の元へ向かった。


読んで下さって、ありがとうございます。

毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。

貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。

誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。

文字化けは文字コードをUTF-8に依存した形にしていますので、

もし、文字化けしてしまう方がいましたら許チョや張コウの文字化け文字を

抜くか、カタカナに変えたページを作るので教えてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ