濃師 其の五
三国志の史実と演義の登場人物が出てくる中で、あらゆる策謀が渦巻く中、彼らとどう対峙していくか。
いつしか芽生えた孔明への淡い気持ちは、現代との違いによって苦しむ恋になった。
「趙将軍に申し上げます!只今軍師、諸葛孔明軍師より伝達」
「おお、安国、よく戻った!」
「"最後の袋を開けて万全の備えでいよ″とのお申し付けにございます」
「うむ、大儀であった。下がって休むが良い」
趙雲は天幕から出ると 月明かりの下で孔明から授かった最後の青の袋を開けた。
『趙将軍、雪解け真直のこの時期、衰弱した曹軍へ周軍が朔の晩に夜襲をかけるでしょう。
周都督は呉を長く離れているため、時期を見て総攻撃をかけ敵を城外へおびき出し一気に殲滅する作戦です。
将軍は兵を三つに分けて一つを追撃にまわし山林へ伏兵し、もう一つを城の前で戦う真似を。さすれば城門は速やかに開き、残りの曹軍も外に出て行く算段。将軍はこの時に残りの一軍で入場すれば、夜明けと共に城は劉軍のものとなりましょう』
月が身を隠したる晩が好機と謳われた孔明の作戦。
何処まで知っているのか、人の心を読み戦いの行く末を算段した作戦に趙雲は息を呑んだ。まさに鬼神のような素晴らしいき智謀。
ここ数週間の間で戦況は変わってきている。
曹操軍の放った矢が周瑜の肩に当たり、致命傷を負ったと噂が流れているのだ。その報告をした矢先の伝令。
呉の大都督が動くのも近い。
孔明は朔の晩(新月の晩)と読んでいるようだ。混沌たる赤壁の戦いに終止符を打つには、最高の舞台となるだろう。
毒矢に倒れた周瑜が何処まで健在なのか、それが勝敗を握る分かれ目になる。
恐らく孔明達もこの南郡城へ兵を進めているだろう。この作戦は三城が足並み揃わなくては意味が無い。
周瑜が動くという事は、他の二城も同じく決戦の日が近いということ。ここが正念場なのだと、趙雲は空に浮かぶ満月を見た。
月の周期は正確。
次の朔が決戦なのだと趙雲は拳を握り締めて身を翻した。
ここまで読んで下さって、ありがとうございます。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
読んで頂けることが、執筆活動の励みになります。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




