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ポンニチ怪談

ポンニチ怪談 その53 聞かない議員の代償

作者: 天城冴

与党ジコウ党のヤマキワ大臣は選挙対策の会合に大嵐のなかジコウ党会館にやってきたが…

7月に入ったばかりなのに、もう台風の脅威にさらされているニホン国。異常気象のためか大発達した台風は庶民の極小住宅はいうに及ばす、ニホン政府与党ジコウ党会館にも、その猛威は及んでいた。

「なんという嵐だ。外にでるどころか、窓を開けることさえできないとは」

ヤマキワ大臣は部屋のなかでイライラしていた。参議院選挙に関する会合のため、会館に来たものの、小会議室に案内されたきり、誰も呼びにこない。おまけに、エアコンの故障か、蒸し暑く、息苦しい。

「どうして誰もこないんだ」

舌打ちしながら、スマートフォンを取り出し、第一秘書にかけたが、

「なんで、出ないんだ、クソッ」

他の秘書や事務次官やら知り合いの議員にかけても、誰にもかからない。

「スマホの故障か、まったく」

部屋を出ようと、ドアノブに手をかけたが

「あ、あかない?おい、開けろ、中に人がいるんだぞ、エアコンも効かないし」

“無駄だよ、誰も聞いてないもん”

「え?」

“だからあ、聞いてないの。ま、しょーがないよね。人の話を聞かないっていった人だから”

“そー、そー。聞かなくていいなんていっちゃったんだもん、政治家のくせに”

「だ、誰だ、誰かいるのか」

“ああ、聞こえてるみたいだねえ。今更だけど”

“どうせなら、私たちが新型肺炎ウイルスで死ぬ前に聞いてほしかったけど”

“担当大臣なのに、ろくに調べもせず、対策を改善しろ、死者がこんなにでてて、こうでって詳しく調査した野党議員の訴えも聞いてなかったんだって”

“野党の言うことは聞かないってさあ、私ら国民の命にかかわってることもあるのにさあ。ジコウ党の支持者だってさあ、無関係じゃないのに”

“それだよ、俺なんて、元アイドルのジコウ党候補にいれたのにさ。コイツがタ…なんとかっていう野党の議員さんの言うこと無視したおかげで、ロクに治療もされずに死んじまったよ、まったく”

“民主主義というものをわかっておらんのだよ、まったくこんな奴ばかりが、政府にいるから、儂は通院もできずに死んだのだ”

「ま、まさか」

“あー聞こえてんじゃん。私たちが死んだからかな。よかった。恨めしや―とかいっても恨む相手に聞こえてなきゃ馬鹿みたいだしねえ”

“聞いてるけど、無視してるだけなんだろ。失礼な奴だよ”

“だから、逆に聞こえなくしてやったんだよ、アンタの声”

「な、なんだと。じょ、冗談じゃない。幽霊なんぞ、信じないぞ。わ、私を誰だと思ってるんだ!」

“ニホン政府の大臣でしょ。民主主義国家のはずの。国民のための公僕ってやつだよね”

“国民のために働くのが仕事なのに、何を威張っとるんだ。しかも野党の声は聞かないとは、思い上がりも甚だしいわ!民主主義すら理解できない、こんな大バカ議員がいるから、国がおかしくなるんだ”

“うん、難しいことはともかく、この人、まったく反省してないよねえ”

“そうだな、もっと懲らしめないとダメかな?”

「お、おい。わ、私を脅す気か」

“あー、やっぱ、だめだわ。も少し思い知ってもらわないと”

ヒュッと鋭い音とともに

ポタ

ヤマキワ大臣の両耳が落ちた。

「ひいいいいい」

大臣の悲鳴を死者たちはおかしそうに嗤う。

“聞かない耳なら要らないよねえ”

“この人、報告書も読めないし、それなら目もいらないよねえ”

“失言する口もいらないね。総務大臣とかみたいに舌も唇も切り取っちゃおうか”

“アトウダのように舌を引っこ抜いて、皮膚をはぎ取ってのもいいんじゃないか、こいつらの顔なんぞ二度と見なくてもすむしよ”

“あの、自分の脳みそで考えようもしないアイドル議員や候補みたいに頭も失くしちゃえば?”

“だいたい民主主義も理解できない民主主義国家の大臣そのものが要らないじゃろ。他のジコウ議員やらゴマすり官僚と同じように”

「ひいい、や、やめてくれえ」

大臣は絶叫したが、死者たちのほかにその声が聞こえるものはなかった。


野党の声を聞かないだの、野党の候補者に”まだ生きてたの”などと発言する与党政治家やら差別丸出しの暴言を繰り替えす候補者に何のお咎めもない国がSDGsとかグローバルなんちゃらなどといっても言語矛盾が激しすぎて、国家的なギャグというか、虚構というか。国を挙げて現実逃避でもしたいんですかねえ。

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