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少女は生徒に?2

もしや、自分の知り得る全ての情報を持っているのではないか? と思えるほどにセビアのことを知っているギルに、彼女は思わず監視されているのでは? と疑う。一瞬『同期(シンク)』の魔術を掛けられているのでは? と疑ったが、ここでリーフの名前が出てくるあたり同期(シンク)ではないのだろう。


「気にするな」

「もういいですよ……僕はあの人が一番嫌いです」


セビアの口から出た言葉にギルは心底驚く。彼が見る限りリーフという人間はセビアの味方であったからだ。


「……何故だ? 俺が知る限り奴はお前の唯一の味方という感じだったんだが……」

「嫌です……言いたくありません……」

「ならいい、早く戻れ」


ギルは話を切り上げてさっさと戻るよう指示する。


「あの……魔術を教えて下さい!」


しかしセビアはそこから動かずに頭だけを下げ教えを乞うてきた。


「……随分と都合のいい奴だな、リーフとやらに関しては言いたくない、そしてその直後に魔術を教えろだと?」


口に出してから少しだけ疑問に思った。自分も共有(リンク)をかけて彼女をパイプとして情報を得ている。これで教えなければこちらが都合のいい奴なのでは? という疑問だ。


「それに俺は魔物だ。何故魔物である俺に教えを乞う? それこそ学園の騎士とやらに教えて貰えばいいだろう。学園なら俺より強い教員など山ほどいるだろ?」


正直教えたくはないので自分が魔物である、ということをフル活用する事にした。


「貴方は自分より格上のAクラスの騎士二人を殺しています。余程魔術の扱いが上手いのではないでしょうか?」


元勇者であるだけあり、魔術や武器の扱いは人並み以上であるという自負はある。しかし彼は怖かった。一度裏切られた身であるからこそもう一度裏切られるのでは? という恐怖もあったのだ。そう、次に裏切られたら今度こそ自分は完全に魔物となり、人類に完全な敵対をしてしまうのでは? という恐怖があったのだ。


「残念だが、俺が奴らに勝てたのは戦いの最中に下位悪魔(レッサーデーモン)から中位悪魔(グレーターデーモン)に進化できた事による所がある。魔術の強さじゃない」


咄嗟に出た言葉であったがこれは事実だ。もし仮に下位悪魔(レッサーデーモン)のまんまであった場合、おそらく魔力弾では倒しきれず、劣勢を強いられたに違いない。


中位悪魔(グレーターデーモン)はAクラスの魔物、本来はAクラスの騎士が単独で討伐可能な存在です。それを退けたとなるとやっぱり魔術による所が大きいのでは?」


「……まあいい、それじゃあ一つだけ聞かせろ。お前が最も嫌っているリーフとやらが言っていた討伐隊っていうのはどう言うことだ?」


あの二人が来てから、一つだけずっと気になっていたことをセビアに問う。


「討伐隊? 何のことですか?」


「お前がリーフとやらと話していた時に言っていただろう。討伐隊が組まれるとか」


二人を相手取るだけでもあれだけ苦戦したのだ。あんなのが10人も20人もこられたら流石に現状では敵わないだろう。最悪は森を出ることも考えなければいけない。


「ああ、あれは気にしなくていいですよ、あの人すごい大袈裟なので。少し魔物がでただけで討伐隊だの何だのって騒ぐんです、情報の仕入れ先は……もう聞きません」


そろそろ共有(リンク)について教えるべきか? という考えが一瞬頭によぎったが直ぐにかき消す。


「懸命な判断だな。まあ魔術に関しては教えてやる」

「いいんですか!? ありがとうございますっ!」


(勝手に共有(リンク)をかけたんだ。これくらいはするべきか)


ギルは勝手に魔術をかけたことに少しだけ罪悪感を感じていた。都合のいい奴にもならないために、ここらで教えておくが吉だろう、と考えた。


「それじゃあまずは一つ目だ。魔術を使う時に大切なものは?」

「……魔術陣の精度でしょうか……? 学園ではそう教わりました」

「残念、的外れだ。まずはここからだな、明日までに考えてこい。そしたら自ずと答えは見えて来るだろう。それじゃあもう帰れ。少なくとも今のお前に教えることは何もない」


そう言ってセビアに背を見せ、ギルは森の奥へと消えて行った。


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