少女は生徒に?
二人の衰弱死体が発見されたことによりヴァラスキャヴル王国の学園では軽いパニックになっていた。報告によると生徒が見たのは下位悪魔であったという。Bクラスの魔物である下位悪魔は本来Cクラス騎士が十人いれば倒せるのだ。それに対して『念のため』いかせたAクラスの騎士が死体で発見された。それも二人だ。これは大問題である。
「学長、直ちに国へと報告すべきです。我が校の教員が二人も殺されたとなると既に下位悪魔から進化している、もしくは知能個体である可能性が非常に高い。森は当面侵入禁止として、国に助けを求めるべきです!」
「……うむ、やむを得ないな。各員、全生徒に伝えよ、森は当面出入り禁止とする。無論教員もだ。立ち入る時は必ず5人以上で立ち入るように。国からの援軍が来るまでは立ち入らない事が理想だがな。さて、もう時間だ。早急にHRを始めてくれ」
学長のその言葉を合図に、会議が締められ確実HRへ向かっていった。
「もう知ってる人もいるかもしれないが……レオンとヴェルナが明朝、森の中で遺体となり発見された。しばらく森への出入りは一切禁止だそうだ。今後自主訓練などは全てグラウンドで行うように」
朝のHRでリーフは先程の会議により決められた事生徒たちに告げる。教員が2名死亡した、この事実にセビアは動揺を隠せずにいた。
(あの人がやったのかな……? 聞きにいかないと……)
「それじゃ連絡事項は以上、皆しっかりと授業に励むように!」
この一日、セビアはギルのことが気になり、授業に全く身が入ってなかったという。
◆
授業が一通り終わり、放課となった頃、セビアは立ち入り禁止となった筈の森の中を一人歩いていた。
「あの……」
目的は一つ、ギルに会うためだ。
「……何しにきた? 今この森は立ち入り禁止になってる筈だろ?」
セビアにかけた共有を介して、学園の情報は少しばかり知っている。セビアを通して得た情報によるとこの森は立ち入り禁止となっていたはずだ。
「いつも思うんですけどどこから情報仕入れてるんですか?」
本来情報など得る手段はないはずの悪魔が情報を得ている方法は自分だということはつゆしらず、ただ興味があったがために聞いた。
「……人伝に聞いただけだ。気にしなくていい」
「これ以上聞いたら?」
「殺す」
「やっぱり!? ……まあいいです。今日僕がきたのは学園の先生についてです。死体で発見された二人……貴方がやったんです?」
いきなり核心を突かれたギルは少しばかり動揺するが、表には出さずすぐに動揺も抑えた。よく考えればギル以外に容疑者はいないだろう。
「俺がやった、と言ったら? 討伐するか?」
「い、いえ! 討伐なんてしませんよ! 第一僕じゃ勝てませんし」
首をぶんぶんと横に振ったことで、セビアが持つ長い白銀色の髪が揺れ乱れる。それと同時になぜか耳元ピクピク動いていた。
「それじゃあ報告するか? ……というか俺が怖くないのか? 憎くないのか? お前の学園に在籍してた教員を二人も殺したんだぞ?」
もし俺の敵になるならば殺さなければならない、ギルはそう考えて警戒を高める。
「……貴方は……授業で一方的に嬲られたことはありますか? 一方的に殴られ、蹴られてるところで見て見ぬふりをされたことはありますか? 助けを求めて伸ばした手を……はらわれて見捨てられたことはありますか? ーーってそもそも授業も何もないですよね」
「急に何言ってるんだ?」
銀色の髪を整えたセビアはゆっくりと語り出す。語る内容は誰も聞くに耐えない痛々しいいじめそのものだった。最も、彼女がいくら虐められていようが関係はないのでスルーするが。
「僕は虐げられてるんですよ、あの学園で、この国で」
「そうか、なら帰れ」
「……慰めてくれても良くないですか!? さては僕の話信じてないですね?」
あまりにも冷たいギルの対応にセビアは思わず声を荒げる。ギルの対応はもはや絶対零度と言っても過言でない程に冷たく、セビアの話には一欠片も興味のないことが見てとれた。
「馬鹿言うなよ、信じてなかったらここで殺してるさ。わかったらさっさと戻れ。戻ってリーフ先生とやらになだめてもらうといい。というかそいつに引っ付いてたらどうだ?」
リーフは共有でみた限りは唯一味方っぽい人間だ。ギルはいじめを避ける方法として提案する。
「リーフ先生ですか……ってちょっと待ってください、どこから情報仕入れてるんですか!?」
セビアの心からのツッコミだけが、あたり一体に木霊した。
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