騎士との戦闘
ちょい短めです
(さて、今日も魔物を狩るか)
ギルはいつも通り魔物を探して森を彷徨い歩く。
すると森の浅い所から大量の魔物が深いところへと逃げようとしていた。
「いますね」
「ああ、確かにいるな」
森の先からガサガサと草木を掻き分けて二人の男が出てくる。そのうち片方には見覚えがあった。
(あの男……共有で見たな。セビアが通ってる学園の教員か)
「下位悪魔……どうやら探す手間が省けたようだ。討伐するぞ」
こちらを睨み男が呟く。
(……殺るか)
ギルは覚悟を決め、魔術陣を同時展開する。
「魔術だと!? ……知能個体か!」
展開した魔術陣から男に向けて炎を放った。
「甘い……!」
男は放たれた魔術を容易に避ける。しかし避けられることはギルも既に想定済み、時間差で避けた先にも魔術を放っていた。
「……っ! まさかこんなところで使う羽目になるとはな」
確実に男に当たる筈の魔術。しかし消え失せたのだ、男に当たる寸前で。
(あれが魔力という奴か……面倒臭いな……そういえば徴収って正面から使えるのか……? 試してみる価値はあるな)
一通り思考し、ギルは自分に与えられた新しい力を行使することにした。しかし今まで使ってきたのは敵を弱らせた後、もしくは後ろから迫り油断している時に、さらに格下にのみ使ってきたものだ。明らかに格上のそれも二人同時に使うことができるかは賭けだった。
「徴収」
瞬間、濃密な魔素がギルの体の中へと流れてくる。
「ぐっ……!?」
「急に体が重く……!」
どうやら全てを奪い切ることはできなかったらしい。それは何故か……自分の身に起きた変化によりギルは理解した。種族としての上限まで達してしまったのだろう。
(進化した……か)
「ヴェルナ殿……」
「ああ、レオン、気を引き締めろよ。最悪の事態だ……野郎、進化しやがった。中位悪魔。さっきのは魔素を盗られたんだろうな、奴の進化に俺たちは一役買っちまったわけだ。意志を強く持て、奴の力はおそらく吸収がそれに近いものだ。これ以上魔素を与えるわけにはいかない」
二人は己の得物を構えてギルに最大限警戒する。その二人に対してギルは再び魔術を発動すべく魔術陣を展開する。
「レオン! お前の消滅で掻き消せ。その直後に俺が奴を仕留める」
「了解!」
レオンは一歩前に出てヴェルナの姿を隠す。ギルは前に出たレオンに対し、一切の躊躇なく全力で魔術を放った。
「知能個体とは言っても所詮は魔物か! 第一位階魔術なんぞ俺には効かんぞ!」
レオンは己の魔力を発動させ、ギルの放った魔術を消し去った……しかし魔術にばかり焦点を当てていたため、その背後に隠されたもう一つの攻撃に気が付かず、そのまま頭を撃ち抜かれる結果となった。
「あ……」
魔素を直接撃ち込む技。ギルの凶弾にレオンは力なくその場に倒れ伏した。
「レオン!? 貴様……! よくもレオンを!」
仲間をやられたことにより冷静さを欠いたヴェルナが一直線にギルへと向かってくる。
「がっ!?」
しかしギルの元へと辿り着くことなく、途中で吹き飛ばされ木に激突してしまった。
「魔術陣の秘匿だと……!? 貴様一体何なんだ……!」
「死ね」
ギルのその言葉を最後にヴェルナはその意識を完全に暗転させた。
「さて、徴収」
倒れた二人に残された魔素をしっかりと回収する。
この翌日、行方不明となっていた二人の学園教師が衰弱死体となり森の中で発見された。
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