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知らない言葉

「聞きたいことは、オーディン教、魔力、騎士、この3つだ」


先の盗聴により知った言葉の擦り合わせを行う。少なくとも彼が勇者として活動している間には聞いたことがない単語だ。


「そうですね……まずはオーディン教からですが、オーディン教は宗教です。最高神オーディンを崇め、人間絶対主義の。このヴァラスキャヴル王国の国教でもあります。起源は5000年前の天暦元年。当時の魔王であるレオが魔界全体に結界を張り、完全に人間界との袂を分かったあたりだと言われています。……このくらいでいいですか?」


「……待て、ヴァラスキャヴル王国だと?」


一通り聴き終えたギルは気になる……というよりは聞き捨てならない単語が聞こえて、思わず反応してしまう。


「はい、ヴァラスキャヴル王国ですが……どうかしました?」


「……いや、なんでもない」


ーーヴァラスキャヴル王国、まだ人間、勇者だった頃のギルがいた国だ。当時の国王の名はアエテルナエ・ウィー

タエ・ヴァラスキャヴル。ギルを裏切り、処刑した王だ。


(さっきの話からして5000年は経っているはずだが未だに続いているのか……)


「それじゃあ国王の名前は分かるか?」


「アエテルナエ・ウィータエ・ヴァラスキャヴルです」


「ーーっ! あいつが……!」


その名を聞いた途端、彼の内に潜んでいた憎悪が一気に湧き上がる。裏切られた、こちらの言い分なんてものは一切聞かれずに無惨にも処刑された恨みだ。


「ひっーー!? な、なんですか……?」


感情が昂り、それが魔素(マナ)として外部に放出されてしまったらしい。その禍々しい魔素(マナ)を直で浴びた彼女は怯えて硬直する。


「……ああ、すまんな。お前は何も気にするな。さて、次は魔力について教えてくれ」


「魔力……ですか」


ギルの禍々しい魔素(マナ)を感じなくなり、一安心するも、『魔力』と言う言葉にセビアは少し苦い顔をした。


「何か問題でもあるのか?」

「……いえ、何の問題もありませんよ。魔力というのは生まれ持った力のことです。魔術とはまた別の固有の力みたいなものですね」


変わらず苦い表情、思い詰めた表情でおもむろに口を開く、その声も何か重々しい感じだ。


「ふむ、それで? お前の魔力は何だ?」

「私は……ないんですよ、魔力が。獣人でしかも魔力がないので私虐められてるんです……」

「ああ、それで虐められてたのか、まあそれはどうでもいい。最後に騎士について教えてくれ」


あくまでもどのようなものがあるかの参考にしようと思い聞いたのだが思わぬ地雷を踏み抜いてしまったらしい。

 いじめ云々は軽くスルーし、最後の情報についての話に入る。あくまでも大事なのは情報、出会って間もない奴がいじめられてようがなんだろうがギルには全く待って関係ない。


「どうでもいいって……酷くないですか?」

「黙れ、殺すぞ」

「本当に酷い!? 分かりましたよ……騎士って言うのはまあ対魔物の軍隊みたいなものです」


冷徹なギルの言葉に突っ込みつつもセビアは正直に答える。いや、答えさせられていると言ったほうが正しいだろうか。何度も何度も殺すと言われた奴を目の前にして嘘などまずはつけない。


「Sランクって言うのは?」


先程こちらにガンを飛ばしてきた男、ニッグの言っていたSランクというものについて気になり、聞くことにした。昔も魔物に関してはランクを付けられていたが人間に関しては聞いたことがない。

 ちなみに現在のギルは下位悪魔(レッサーデーモン)でランクはB、仮に進化したとしても中位悪魔(グレーターデーモン)でAクラスだ。


「Sランクの聖騎士はAランク相当の魔物なら単独で倒せる力を持ってます」

「Aランクの魔物っていうと何が該当するんだ?」

「あ、はい。Aランクの魔物といえば中位悪魔(グレーターデーモン)や鬼神、それと中位竜種あたりですかね」

「……中位悪魔(グレーターデーモン)がAランクなのか? 悪魔公(デーモンロード)とかじゃなく?」

悪魔公(デーモンロード)ですか? そんなの実在しませんよ、神話の話です」


おそらく魔王……というより魔族が消えた事によって、人類にとっての脅威がなくなり、強さを捨てて発展してきたのだろう。それならば納得できる話だった。


「大体分かった。ああ、そういえばもう一つ聞きたいことがあったんだけどいいか?」


「何ですか?」


思い出した、というように追加で質問をしようとする。


「治癒魔術ってあるのか? あるのなら教えて欲しいんだが……」


少なくとも昔は治癒魔術なんてものは存在しなかった。全てポーション頼りだ。強さを捨てて、生存に力を入れてきたのなら今になって開発されていたとしてもなんら違和感はないだろう。


「……え? 何言ってるんですか?」


などと思っていたが、どうやら思い違いだったようだ。アホみたいな表情を浮かべ首を傾げるセビアがギルの前にはいた。


「いや何言ってるんですか? じゃなくてだ。最初にお前が足撃たれた時、すぐに治ってただろ? てっきり魔術かなんかだと思ってたんだが少なくとも俺は治癒魔術なんてものは知らなくてな」


「……あの、あの時って貴方が治してくれたんじゃないんですか……?」


「何を言ってるんだ? 俺が治すわけないだろ。あん時は何もしてないよ。というか殺そうか迷ったくらいだ」


食いたいと思っていたくらいなのだから、治すわけがない。


「ころっ……!? あはは……僕結構ピンチだったんですね……」


「お前よく笑えるな。死にそうだったってのに」


「お前じゃないです。僕にはセビア・リモニウムっていう名前があります。それに……少し話して分かりましたよ。貴方は優しい魔物だって」


ふわりと優しい笑顔を顔に浮かべ、ギルに向けた。


「そうか……それはいいことだ。では早く帰れ」

「前言撤回します! やっぱり貴方は酷い人……いや、魔物です!」


ギルの小バカにしたような口調にセビアは怒って背を向け帰っていった。

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