飼い犬の遠吠え
飼い犬の遠吠え
車道の脇の民家に、1匹の飼い犬がおりました。
どこにでもいるごく普通の柴犬です。
犬小屋から顔を出し、両手を伸ばしてぺちゃりと伏せます。
犬小屋に木陰がかかり、暑さの中にそよ風が吹きます。
絶好のお昼寝日和です。
小鳥のさえずりがよく聞こえる、静かな昼。
飼い犬は、鳴き声なんて一言も発しません。
静かな時が流れていきます。
すると・・・
かすかなサイレン音。
消防車のようです。
徐々に近づいて来ます。
カッ!
飼い犬の、目の色が、変わる!
柴犬:「わぉおおおーん! わぉおおおーん!!」
首を高く上げ、空に向かって遠吠えを始めます。
「わぉおおおーん!」
「わぉおおおーん!」
「わぉ、わおおおおーん!」
ぅぅぅぅぅー
「わぉおおおーん!」
ううううううううぅぅぅぅぅ ー
「わぉーん! わおーん!! わぉおおおーん!!!」
「わぉ……」
消防車が去っていきます。
飼い犬は、無言で立ちつしております。
「・・・」
救急車の音には無反応です。
しばらくじっとした後、再び犬小屋に戻りました。
そのままだらだらと昼寝を再開しましたとさ。