死にたい俺は二回死ぬ
俺はただ、死にたかった。
理由なんてなくて、ただただ今生きてることに嫌気が差したのだ。
だからそれはとても幸運だと言うべきだろうがその実、…余計なお世話だった。
「手違いであなたを殺してしまいました。大変申し訳ございません。」
全く反省してない声色で、なんとも不遜な態度で目の前の神様(らしき黄金のオーラをまとった人物)はそう言った。
というかめちゃくちゃにやにやしてる。今の状況が楽しくて仕方がないとでも言いたげなその表情で、俺を品定めするかのように上から下まで視線でなぞる。
「…想像よりも凡庸な人間だったが…まぁいい。転生させてやるから望みを言うがいい。」
─なんて?
あまりにも説明が無さすぎる。いやまぁ、本とか漫画とか読んでたらそれなりに思い当たる内容ではあるのだけれど。
「ふむ、面倒な人間だな。…だがまぁ、思いの丈を語るのも吝かではない。故に!説明責任を果たしてやろうではないか!簡潔に言うと貴様は死んだ。以上。」
─あえてもう一度言うおう。なんて?
なにか汚いものを見る目で神様は俺を睨む。
いやいや、説明責任果たしてくださいよ…わかるまで、優しく、こう、近所にすんでるお姉さんが如く。
…やれやれ、仕方ないウジ虫だな…とでもいいたげにため息止めてください。傷付きます。
「最近、異世界に転生する人間が多くてな。というか殺してしまうと言う手違いが頻発しているのだ。そしてお詫びとして願いを叶え、別の世界にその魂を移植する。するとどうだ!アボカドとマグロを合わせたような面白おかしい事件が起こるではないか!それを見ていて思い付いたのだ。それ、面白そうじゃね?、と。」
なんて?
「天才的なこの私はなればこそ、そのムーブメントに乗ってやろうと思ってな。とりあえず手違いを起こしてやろうと気紛れ…もとい手違いでひとつの世界に積乱雲を発生させたのだ。」
…なんて?
「ぶっちゃけてしまうとウジ虫…人間1人死んだところで我々の業務にはまっっったく問題はないのだがな。しかし、しかし予定にない者を殺してしまった。なればこそ、事務的な手続きが必要であろう?ということで貴様の願いを一つ叶えて、終焉を迎えそうな世界にポーンと転生させて見るのもまた一興と思ってな。」
…なん…なるほど。
この神様、人間を人間と思わないと言うか実に"神様らしい"人(?)物であることが分かった。
きっと、人も虫も木も魚も、この人の前では同一なのだろう。
ならばよし。俺もその波に乗ってやろうではないか!
「ふむ、やっと自分の立場を理解したな人間。」
勿論ですとも。この機会逃してたまるものですか。
と、いうことで転生後すぐに天国にいかせてくださいお願いします。
「なるほど、すぐさま死にたい。それが貴様の願いか。承諾した。…第二の生、存分に謳歌するがよいぞ、人間。では、貴様のアボカド力、ここで篤と見させてもらうとしよう。」
───
……
…………
「って、死んでどうする!!貴様!馬鹿にしているのか!?」
あっ、俺、今転生した?凄い、走馬灯もクソもない秒速五㍍の死に様…ゾワゾワして怖すぎた。もう二度と死にたくないと思える不快感…これは気持ち悪い。
「馬鹿者!命を斯様に無駄にするやつがあるか!今すぐ死んで詫びるがよい!」
今さっき死んだばかり…そしてその前に貴方のお遊びで死んだばかりの人間に物凄いことを言う。
「ぬぅ…仕方ない。貴様に呪いを授けてやろう。」
まって、神様なんだから祝福を授けて欲しいんだけど?
「安心しろ。呪いも祝福も、そう変わらん。ではステータス"生への執着"を付与する。」
ぅゎ、なにそれ怖い…
「ふふん、では次の転生では良い人生を送るがよい。では貴様の活躍、楽しみにしておるぞ。」
え、ちょっと待ってください。
俺は天国でゆるゆるスローライフを満喫したいんですけど?
あ、あぁ…しまった、つまり俺は願いを…チート人生を棒にふったというわけか…
─(気が向いたら)続く。
気が向いたら続きを描きたい。