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126 穴があったら埋まりたい


 と言う訳で大絶賛引き篭もり中の私です。

 いや、無理でしょ? 無理無理無理ー! 怖くてお外歩けないよ! うん、冗談じゃなく。


 あの日、森で謎の暴漢達に襲われて酷い目に遭わされそうになった所を助けられて、かれこれ一週間程になるんだけどね……うん、あれから一歩も部屋から出てません。ちなみにここ、リリーさん家ね。

 もうね、普通に軽くトラウマですよ。普通に男性恐怖症ですよ。執事の人見るだけで固まって震えだす始末ですよ。なんなんだ、誰だこのチキンは。いえ、私ですが。

 精神耐性スキルどうした! クソの役にも立たないじゃないか! ……許容限界超えたみたいですよ。LV10って完全耐性じゃなかったの……? マジ使えない。

 ひん剥かれる前に助けられたから完全に未遂だけど、貞操の危機に男とか女とか関係無いよね? ショックはショックだし。うぼあー。

 ……我ながら凄く豆腐メンタル。マジで鬱だ、呼吸するのも嫌だ。生きてるのがつらい……


 そんな私を慰めてくれるのはノルンの毛皮。ノルンね、あれから一時も離れずに私の側にくっついてるんだよ。トイレの時は一時的にベルだけになるけど。

 昼間は部屋の端の方で丸くなったノルンのお腹に埋まってただぢっと天井を見つめ、夜は怖くて寝れなくてリリーさんに添い寝してもらってやっと何とか眠れると言うね……もうずっと眠りが浅くて眼の下の隈が凄い。最近は睡眠ポーション使って無理矢理寝てるけど。



 あー……まあ、そんな訳で鬱でひたすら落ち込んでる訳だけど、そうも言ってられないから、あの後、助け出された後の事でも話すとしますか。

 数日前にベクターさんが来て色々教えてくれたんだけどね……うーん、どこから話したものか。

 取り敢えず、リリーさんとアリサさんが何でベクターさんと一緒に来たのか、って所? いや、もっと前かな? んー……

 そうだね、一番の原因は何で私が襲われたか。ここからかな。

 まあ、端的に言うと連絡不備が原因。主に私とベクターさんの間での情報の共有がされてなかったのが問題ね。


 元々私に護衛が付いていたのは、ベクターさんが鍛冶依頼を受ける報酬として私が提示した諸々の条件を満たす為だったんだけど、その護衛対象である私に対して護衛をつけたという話をしてなかった訳ね。当然全部で何人いるのか、どういう持ち回りで守りに付いているのか、そういった情報も一切教えてもらって居ない。一応、年明けに親方から少し話を聞かされたという事にはなっているけど、それにしても詳しくは知らない訳で。

 で、ここからが色々な行き違い。私は護衛が減ったのは安全が確保されたからだと思っていたんだけど、実は違っていたらしい。

 親方が色々やってくれたお陰で、実際に私の事を嗅ぎまわってた連中はほぼ居なくなっていたらしいんだけど、それでも僅か数人のグループがまだ残っていた、らしい。ちなみにそいつらも私を襲った連中の仲間で、依頼主は色々と評判のよろしくない武器商人だったとか何とか。意外にもカエルさんは関係なかったらしい。

 で、護衛が減っていたのはそっちの調査にも回ってたからだそうです。しかも、ベクターさんの命令で。

 それを安全になったと勘違いした私がひょいひょい出歩いた結果、それをチャンスだと思った実行部隊が私を攫おうとした、と……話を聞いてみれば、ぶっちゃけ全部ベクターさんの所為でした、と言うね? 貸しが増えたよ、やったね!


 ちなみにリリーさんとアリサさんがベクターさんと一緒に救援に来たのは偶然、と言う事らしい。二人はベクターさんとは特に面識は無かったみたい?

 私の救援には実は他にもギムさんやトリエラ、ケイン達も居たらしいんだけど、私はリリーさんに助け起こされた直後に気を失ってたので、後で話を聞くまで知らなかった。

 この辺りの話も色々偶然が重なって複雑で……


 んー、取り敢えず、先ずはリリーさんとアリサさんの話からしようか。去年王都で別れてハルーラに戻った二人は、色々あって結局就職を諦めて、冒険者一本で行く事にしたらしいんだよね。で、二人で話し合った結果、私を仲間に誘おう、と言う事になったらしい。

 そして年が明けて春になって雪が解けたタイミングで王都行きの乗合馬車に乗って帰ってきた、と。

 所が、王都に着いて私を探してみればタイミング悪く工房を出て行った直後。しかし二人は私を驚かせようと、私が向ったと思われる森へと追いかけて行く事にした。そしてその途中でなにやら話し込んでいるギムさんとトリエラ達に会ったらしい。

 実はリリーさん達はギムさんと面識があって、以前一緒に採取に出かけた薬草の穴場もギムさんに教えてもらった場所だったみたい? 駆け出しの頃に他にも色々と教えてもらったとか何とか……人の縁って意外な所で繋がってるものだね。


 ……ちょっと話が逸れたね。


 久しぶりに会った顔見知りがなんだか焦ってるっぽいのをみて、リリーさん達はギムさんに何があったのか話しを聞く事にしたらしいんだよ。そして話を聞いてみると、以前世話になった才能がありそうな駆け出し冒険者の後を、素行の悪い連中がつけているようだった、と。更に詳しく話を聞いてみると、どうにもその駆け出し冒険者というのは私の事らしい。

 その場にいたトリエラ達も含めて全員が私の知り合いだった、と言う事に驚きはしたものの、なにやらよろしくない事が起きそうな気配。

 と言う事で私の後を追うかどうかしようか、と言う方向に話が纏まりそうになって来た所で、全速力で走ってきたベクターさんが登場。

 この時のベクターさんは、私が森に入った直後に離れて行って居なくなったと思っていた護衛の最後の一人が大慌てで呼びに行って連れて来た、と言う事だった。

 護衛さん、一人だけだと私の後をつけてる連中全員を相手にするのは無理と判断しての行動だったらしい。

 ベクターさんから話を聞いた結果、全員が全力で私の事を探しに森の中を走り回って……で、なんとか間に合った、と。

 とまあ、そんな感じだったとか何とか?

 聞いた話なので『らしい』連呼したけど、私が実際に見て聞いた訳ではないので、そこは勘弁。


 ちなみに、私を襲った連中は前々から素行が悪く、王都のとある犯罪者ギルドにも所属してると目されて、問題視されてた連中だったそうな。

 過去にも色々な犯罪に関わってたらしいんだけど、中々尻尾を出さなくて困っていたらしい。でも、最近は段々と行動が大胆になってきて隙を見せ始めていたとか? 私を攫う時にさっさと移動しないで現場で馬鹿な行動取ろうとしてたのは、慢心もあったのではないか、と言う事だった。

 なんでも凄腕の毒使いがいたとか色々聞いたけど、その辺りは割愛。

 私だけじゃなくノルンにまで気付かせずに複数の毒を使って行動不能に追い込んだのもそいつの仕業だったらしいんだけど、犯罪者ギルドに伝わるなんだか色々ヤバイ毒とか凄い技術があったらしいよ? スゲーよね、犯罪者ギルド。普通に怖いわ!

 ちなみに下手人は何人か森で死んだけど残りは全員捕縛して、尋問の最中に全員死亡したらしい。なんだか色々制約魔術で縛られていたらしく、色々な情報等を吐かせたらばたばたと死んだのだとか。


 あ、そう言えば私を助けに現場に到着した順番はベクターさん、アリサさん、リリーさん、ギムさん、クロ、他の皆、と言う順だったみたい? まだまだ子供なのに、クロ、速すぎない……? 残りのトリエラやケインは他の皆と一緒だったらしいね。

 後は……毒を使われて嗅覚やらなんやらを狂わされ、私と分断されたノルンが怒り狂って、実行犯の一人を挽肉にしていたそうです。ノルン……ありがとうね? ただ、ノルンと一緒に居たベルは少し怪我をしていたので、相手もかなり抵抗したっぽい。

 犯罪者のミンチを作った後、何とか私の元に辿り着いたノルンはそれはそれは凄かったらしく、手がつけられない状態だったそうなんだけど……一緒に旅をした経験のあるリリーさんとアリサさん、それにトリエラ達がなんとか宥めて落ち着かせて、それで漸く街に帰る事が出来たそうですよ?

 尚、私はノルンに背負わされて運ばれたらしい。と言うか、他の人が背負おうとするとノルンが暴れだしたとか何とか……あれ、私ノルンに愛されまくってる?

 その後、王都に戻ってからは私の安全を確保する意味でも、以前滞在した事もある実績もあってリリーさんの家に匿われる事になった、と。


 とまあ、そんなあれこれをベクターさんが土下座しながら教えてくれましたとさ。


 いや、もう王族に土下座させてるとか、どうでもいいよ。完全にそっちの手落ちだし。

 とは言えこれで巨大な貸しが出来た訳だけど……それを盾に孤児院の事を頼んでみる? ……いや、なんか不安があるんだよね。不安って言うか嫌な予感と言うか……なんか、自作自演臭くない?

 実行犯の連中は元々目をつけられてたらしいし、体よく囮にされた様な気が……うん、やっぱ今回は頼むのはやめよう。なんか胡散臭い。何処か信じ切れない。無理。

 いや、多分今回襲われた事で男性不信になってるのもベクターさんを信じれない原因の一つになってるとは思うんだけど、今の精神状態で正しい判断を下せる自信が無い。

 と言う事でベクターさんには特に何も言わずに帰ってもらいました。

 ああ、一応黒幕だったという商人は既に捕まっていて死刑確定だそうで、そいつの店も色々大変な事になってるそうですよ? 別にどうでもいいけど。

 後、犯罪者ギルドも摘発されてほぼ壊滅したとかで、今は残党の始末に忙しいとか何とか? とは言っても犯罪者ギルド、他にもまだまだ幾つもあるらしい。

 ……王都に住むのが嫌になってくるね。



 その後は昼は横になったノルンのお腹に埋もれてモフモフしながら落ち込み、夜はベッドでリリーさんに添い寝してもらいながらちっぱいに顔を埋めて落ち込み、唯唯鬱々と過ごす日々。


 こんな私、もうヤダ。



 とは言え流石に一週間も落ち込んでると【精神耐性】スキルがじわじわと効いてきたらしく、多少は精神的にマシになりまして、こんな訳ではいかん! と言う訳でちょっと荒療治しようと考えられるようになりました。

 ええ、リリーさんにお願いしてデートしてもらう事にしました。具体的に言うと、ずっと手を握ってもらって、その状態でデート。

 周辺に沢山の人がいる状況で楽しい思い出を作り、嫌な記憶を上書きする、と言う感じ? 上手く行けば大分マシにはなる筈! 【精神耐性】も効いてるし!

 ……楽観的過ぎる? いや、開き直ってその位に考えておかないとこのままズルズルと引き篭もり続けそうだし、駄目元でなんとかなーれ、って事で? それに何時までもリリーさん家にお世話になる訳にも行かないし……


 まあ、完全には治らなくてもそれなりに改善はするでしょ、多分。


「デート……お出かけですか? いえ、私は構いませんけど、本当に大丈夫なんですか?」


「手を握っててもらえれば、多分?」


「うーん……とは言え、ずっとこのままと言う訳にも行きませんか……わかりました、デートしましょう!」


 と言う訳で、夜に同衾してる時にリリーさんにお願いしてみた所、快く了解を頂けました。いえーい! 可愛い子ちゃんとデートだよ!


 ……いや、空元気だけどね? 勢いって大事だし……


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― 新着の感想 ―
助けてもらった身でなんでベクターに貸しを作ったと思えるのかがわからん。混乱中だからか?
自分で好き勝手した結果だけど、責任は他人に取らせる。 脳も女性になってきたな
[一言] 難しく考え過ぎましたね。 レンは、当初、森に引き籠もっていた時から、【創造魔法】で農作物の種子を創ることが出来ていましたから、【創造魔法】のレベルも上がり、MPも増えた現在なら、自分の細胞を…
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