125 な なにをする きさまらー!
不快な描写があります、ご注意ください。
と言う訳でとうとう鍛冶スキルのレベルが10になったレンでございます。
まあ、鍛冶スキルがLV10になったとは言っても他の鍛冶系の上位スキルはまだまだだったりするんだけどね。
魔力剣・属性剣作成はLV9だからもう少し頑張ればいけそうだけど、魔剣作成はLV7でまだまだ掛かりそうだし、刀工スキルも同様にLV7。聖剣作成に至っては未だにLV0と言う有様。そもそも聖剣ってどうやって造るの? 完全に手探りなんだけど。いや、嫌いじゃないけどね、手探りからの研究って。
でも、うーん……最初はまたいつもの様に【創造魔法】でごり押しかなあ? ……なんとなく無理っぽい気がする。なんでだろう。
でもまあこれで一応最低限の目標達成と言う事で、これでやっと次の行動に移れますよ、っと。とは言っても特にこれと言った目標ってあってないようなものなんだけど。
まあ、何にしても取り敢えず工房からは出る事にした。これ以上鍛冶だけ続けるのは割と苦痛と言うか辛いと言うか……正直飽きたので。
工房を出て何処か適当な宿を借りて長期滞在するか、どこか適当な所に家を借りるか……そんな感じかな? 一応良さそうな宿屋の情報は集めてみたりしてみた。お金はあるから長期滞在も財布に負担は無いのだ! ……いや、先週商業ギルドにまたお金下ろしに行ったんだけどね? 預金額がやばい事になってまして……
なんでも、設計図だけ提出したものも含めて昨年の秋頃から台車関係が物凄く売れたらしい。で、その台車を使う事によって冒険者の持ち帰る素材の量も増えたとかで、流通やら経済やら、俄かに好景気になってるとかなんとか。
オークの丸ごと持ち帰りも増えたとかで、お陰でラードの流通量も増えたらしくて、油や石鹸の値段も安くなって来ているらしい。
……図らずも知識チートで経済活動に貢献した形になってしまった模様。もしかしてちょっと拙い……?
とまあ、そんなこんなで特許使用料の振込みがとんでもない事になってしまったと言う訳。うん、暫くと言うかもう仕事しなくても良いんじゃないかな……またどこか適当な森の奥に引き篭もってもいいかもしれない。
ついでに商業ランクも上がってて、一気にAランクに上がってました。Aはほぼ最高ランクで、店とか出す時とか、大量購入する時に色々優遇されたりするらしい。とは言っても店とかやるつもり無いけどね。接客とか苦手だし。
で、工房を出る旨を親方達に伝えた所、猛反対されました。
あの、私元々冒険者ですからね? と言う訳で色々説得して何とか納得して頂いた。工房を拠点にして活動すれば良いとも言われたけど、流石にそこまで甘える事は出来ない。それに、なんだか鍛冶依頼とか押し込まれそうな予感がするし。
尚、工房を出る事にした理由の一つに、ベクターさんがつけてくれた護衛の数が減った、と言うのも有ったりする。
元々、護衛の人達は三~五人位居て、入れ替わりながら常時二~三人が付いてるような感じだったんだけど、冬の品評会の後から徐々に人数が減って行って、今では一人しか付かないようになったんだよね。
親方のあれこれが効いたっぽい? でもまあ何にしても、護衛の数が減ったって言う事はある程度安全が確保されたって事だろうから、工房を出ても大丈夫だろう、って事で。
とまあそんなこんなで色々準備も整えて、工房を出る日となりました! 湿っぽいのは苦手なのでさっさと出て行きましたよ、ははは。
取り敢えずの予定としては、一旦王都を出て、近くの森の奥で暫く引き篭もって鍛冶以外の生産系スキルを色々試したり、かな? 後は久しぶりに日課とか?
それが終わったら王都に戻ってきて宿に泊まりつつ拠点を探すか何かして……あとは流れで? うん、相変わらず行き当たりばったりで適当な生き方してるな、私。
一応の目標として造りたい物は幾つかあるけど、それらを造るにはまだまだスキル足りないからなあ……とは言え別に急いでは居ないし、気長に行こう。
さて、王都を出る前に先ずはトリエラ達に挨拶でもしておこうか。と言う訳でトリエラの家に向ってみたんだけど、不在。
んー、時間的にももう家を出てたか。残念。
出鼻をくじかれた気分だけど、気を取り直して予定通りに王都の外へ移動。そして門を出たところで懐かしのシェリルさん達姉妹に遭遇した。折角なのでそのまま一緒に森まで向う事に。その道中色々話し込んでみたり。
ちなみに青空教室の時にシェリルさん達にも投石紐を造ってあげたので、それでお肉が確保できるようになったらしい。お陰でいつもお腹一杯だとかで凄く感謝された。
収入も増えたので今は少しずつ装備を整えてる所だとか。
尚、シェリルさんは素手での近接格闘が専門らしい。見た目はおっとり系の美人さんなのに、怖っ! なので投石攻撃はもっぱら妹のメルティちゃんのお仕事になってるのだとか……頑張れ。
ふむー、なんならシェリルさん達とパーティーを組むのもいいかも……うん、今後の予定の候補に入れておこう。
前衛シェリルさん、斥候にメルティちゃん、そして後衛は私。結構バランスいいんじゃない? ノルンとベルも居るし、殲滅力は高そう。
そんな事を考えながらなんとなく隣を歩いてるノルンを見てみる。でかい。虎とかライオンとかの成獣と同じくらいか、それよりもやや大きい位? 3m位はあるよね……頼もしいんだけど、街中で一緒に行動しづらくなっちゃったんだよねぇ。
大きすぎてノルンを連れて歩くと一般人が怖がっちゃって……それに凄く目立つんだよね、ノルン。
威厳が増したというかなんと言うか、雰囲気がもうグレーターウルフです、なんて誤魔化せないレベル。実際鑑定してみたら魔獣じゃなくて霊獣になってたし。このまま格が上がっていってその内神獣になるんだろうなあ、フェンリルって。
シェリルさん達とだらだらと駄弁りながら歩いているうちに森にとうちゃーく! と言う訳でここでお別れ、ここからは一人で進んでいく事になる。一人と言いつつノルン達も居るけど。
前回同様森の奥を目指してのそのそと移動。別に急ぎじゃないから道中ちまちまと薬草も採取したりもしてみる。
ノルン達とは別行動、と言うか前回引き篭もってた時の様にノルンの【探知】の有効範囲の端の方に私を入れた状態で二匹には狩りに行ってもらった。ベルの実戦訓練的な意味もあるし、食材確保の為でもある。
ちなみに護衛の人は森に入って直ぐ位に離れていった。やっぱりこれは安全になったって事だろう。問題なく単独行動出来る様になったんだから、親方に感謝しないとね!
ちまちま薬草採取しながら森の奥を目指して進行。春になったばかりなので冬の間に生えた薬草なんかがまだまだ沢山残っててホクホク。これでまた色々と作れそう……そう言えば冬の主討伐の時に中級ポーション結構使ったっけ? 時間見て暇な時にでも補充しておこう。
と、そんな事を考えながら嬉々として薬草採取しながら歩いていると、なんだか立ちくらみが……むぬう、運動不足が祟ったかな? 取り敢えず疲労回復ポーションでも飲んでおこう。
……が、暫くすると段々と症状が酷くなってくる。眩暈が止まないし、段々気分が悪くなってきて頭がぼんやりとしてきた。やがて脚にも力が入らなくなってしまい、遂にはその場にへたり込んでしまった。
なんだこれ? 一体何がどうなってるんだ?
……頭がぼーっとして思考が纏まらない。ぼんやりしながらも何とか頑張って【探知】を使ってみたものの、範囲内にはノルン達の反応も無い……よくわからないけど、なんだか拙い気がする。
どうしよう、とは思うものの上手く頭が回らない……気付かないうちに何かされた?
そうこうしているうちに全身に力が入らなくなってしまい、とうとううつ伏せに倒れこんでしまった。
もぞもぞと動く事はできるけど、立ち上がる事は出来そうにも無い……兎に角拙い状況な事だけは分かるものの、対策が思いつかない。やばい、やばいやばい。
そんな焦りだけが増す中で、がさがさと草叢が揺れたかと思うと数人の男達が現れた。
「お、こんな所に居た。ちゃんと効いてるな」
「なかなか効かなかったから粗悪品でも掴まされたかと思ったぜ」
「まったくだ……うん? なんか驚きすぎじゃねえか?」
「あん? あー、アレだろ、【探知】持ちなんじゃねーのか?」
「ああ、なるほどなァ」
驚きで声が出ない。いや、仮に声を上げていたとしても今の私の状態ではちゃんと声が出ていたかは怪しい。
でも今はそれどころじゃ無い。この男達は【探知】に反応が無かったのに急に現れた。どう言う事? 何の反応も無かったのに、何で? そんな私の混乱も他所に、下卑た笑みを浮かべながら男達が何かを話している。
「説明してやった方がいいんじゃねぇか?」
「別にいいだろ、めんどくせえし。さっさと攫っちまおう」
「そうもいかねえだろ、よくわかってねえみたいだし」
「お前、ネタばらししたいだけだろ?」
「分かるか? ビビらせたいしなァ……まあ、そう言う事よ。で、おちびちゃん。俺達が急に出てきて驚いてるんだろ? 何でか分からなかったか教えてやるよ。おちびちゃん【探知】スキル持ちだろ? で、それに反応が無かったのに急にぞろぞろでてきたから驚いた、違うか?」
「あ、う……」
上手く声が出せない。もう脚だけじゃなく手の指先までまともに力が入らない。頭もぼんやりとしたままなのに、男達の声だけははっきりと聞こえる。
「駄目だぜ、おちびちゃん。【探知】なんてのは所詮、探知系の初級スキルなんだから誤魔化しようなんて幾らでもあんのよ。そんなもんに頼りすぎてっとこういう目にあっちゃうんだぜ? 勉強になったろ? これからは気をつけろよォ?」
「おいおい、次なんてあるわけねーだろ、この状況でなに言ってんだオメー」
「ばーか、わざと言ってんだよ! 見ろよ、震えちゃって、可愛いもんだろ? そうそう、ついでに教えておいてやるか。おちびちゃん、ボーっとして上手く頭が回らないだろ? それ、毒な? お前が森に入って暫くした辺りから風上から流してたんだわ。手足も上手く動かないだろ? それもそう言う毒。ついでに魔法も使えないように魔力の動きを阻害する毒も使ってるから、抵抗なんて何も出来ねえよ。もう諦めろや」
……毒? 魔法も使えない? 何も出来ない? どう……どうしたら? どうしよう? どうし……
……ああ、ノルン。ノルンが居る。きっと来てくれる。何とか頭を上げて辺りを見ようと首を動かした。
そんな私の動きに気付くと、にやりと笑いながら男が続けた。
「ああ、ちなみにあのでけえ狼に期待しても無駄な。狼だの犬だのは楽でなァ、鼻を馬鹿にする専用の毒があんのよ。ついでにおちびちゃんにも使ってた手足動かなくする毒も使ったから、助けには来ねーよ。つーか、この状況にも気付いてねぇんじゃねぇか?」
……そんな。
「おいおい、動かなくなっちまったぞ? 脅しすぎたんじゃねーか?」
「へへへ、これがいいんだよ。さって、絶望に歪んだお顔を拝見、っと……ってオイオイ、こりゃあ……」
男の一人が手を伸ばしてフードを剥ぎ取り、私の顔を衆目に晒した。いやだ、止めて。手足はまともに動かず、碌に抵抗も出来なかった。
「おい、どうし……おいおいおい、こいつ、すげえ上玉じゃねえか」
「あん? 何だお前等、幾ら上玉だっつってもまだまだ餓鬼だろうが、そんなのにおっ立つのかよ」
「おー、行ける行ける。こんだけ整ってりゃ全然いけるわ、俺」
嫌な会話が聞こえる。絡みつくような視線が気持ち悪い。いやだ、見るな。いやだいやだいやだ。
「つうかそんな事よりもコイツまだまだ餓鬼だろ? 本当にコイツで合ってるのか? 色々無理がねーか?」
「知らねえよそんな事! 俺達はこいつを連れて来いって言われただけなんだから、言われたように連れて行けばいいだけだ、間違ってても俺達の所為じゃねぇよ!」
「……まあ、それもそうだな。で、お前は何をやってんだ?」
「あん? そりゃ、決まってんだろ?」
そう言うと男達のうちの一人が私を脚で蹴り押して仰向けに転がした。
「犬っころの毒はまだまだ効いてるんだろ? ならここいらでちょっと楽しんで行ってもいいだろ?」
「おいおい、そうは言ってもあんまり時間があるわけじゃねえぞ? って、おい、お前もかよ?」
「なに、コイツははえーから直ぐ順番回ってくるだろ。一回り位は行けるべ?」
「ちっ、しかたねえなあ……」
「そう言うお前もやる気満々じゃねーか」
「いや、コイツの顔見てたらなんだかムラムラ来ちまってよ……なんかこいつ、エロくねえ?」
「あー、わかるわかる……さて、さっさと済ませちまおう。すっきりしてからお仕事再開ってな」
……男達が私の手足を押さえ、圧し掛かろうとしてくる。いやだいやだいやだいやだいやだ、いやだ!
「や、らぁ……」
「無駄無駄、さっさと諦めちまった方が楽だぜ?」
そう言うと私に圧し掛かっている男が服を剥ぎ取ろうとしてるのか、私の襟元に手を伸ばして来る……いやだ、やめろ! いやだ!
「……らめ、らぁ…………やめぇ……」
舌が上手く回らない。
「諦めろって」
ああああああああああああああ! いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ!
もう、無理だ。
そう諦めかけたその時、風が吹いて男の首が切り飛ばされて、その頭部が無くなった。少し離れた所で何かの着地音の様なものが聞こえ、次いで、私に圧し掛かっていた首無し死体が蹴り飛ばされて吹っ飛び、首の断面から血が噴出した。
「無事か!?」
……誰? 見覚えがある……ベクター?
「レンさん、大丈夫!?」
着地音が聞こえた方からも声がする。聞いた事がある声。アリサさん?
「ありしゃ、しゃ……?」
「うん、アリサだよー! リリー、遅い! 急いでー!」
「……ちょっ! 二人とも、はやっ……!」
……リリーさんも、いる? 誰かに抱き起こされる……これ、リリーさん?
「大丈夫ですか!? 酷い事されてませんか!? ……あああ、よかった、間に合った……!」
「ここは任せる、僕はあいつらを追う!」
「待ったー! 私も行くよー!」
二人が慌しく走っていく気配がする……
……私、助かった?






































