118 おう、早くしろよ!
はい、レンです。あまりにも悔しくて、ムキー! ってなってます。
巨人を倒したのはいいけど人目につかないように逃げ出して、その後は自宅を出していた場所まで戻って再び自宅を出して、不貞寝してました。
やっぱり魔石位ちょろまかしてくればよかったなあ……こんちくせう。
とは言え私が自分で倒した雑魚は死体を全部回収してきたので、そこそこの品質の魔石とか、毛皮とか肉とかはぼちぼち手に入ってはいるわけだから、巨人の魔石はもう諦めてそれで我慢しておこう。心底がっかりだよ。
などと落ち込んでおりました所、なんとノルンが中ボスだったホワイトファングの死体を回収してくれていたのであります!
流石にフロストジャイアントに比べれば幾分質が落ちるとは言え、準一級品位の素材が丸ごと手に入ったので、これには私も大喜び。思わず小躍りしちゃったよ! ……直ぐに息切れ起こしたけど。
……昨日戦場に出かける時にも思ったけど、この体力の無さと言うか慢性運動不足は何とかしないと駄目な気がする。何かあってからじゃ遅いし。
とは言っても暖かくなってからね? このくっそ寒い中、外で運動とかやってられないし! ……大丈夫、きっと春先の私が何とかしてくれるよ。私、信じてる。
さて、初めてのガチバトルから一夜明けてもうお昼、いい加減不貞寝も飽きたのでご飯でも食べましょうかね。お祝いがてら、カレーを! ついでにトンカツも揚げてカツカレーにしよう、そうしよう。
ノルン達も食べる? 大盛りがいいの? よーしよし、たーんとお食べ? お代わりもあるぞ!
デザートにはプリンでも食べましょうかね……そう言えばどっちも転生物だと定番の料理だね?
うーん……騒ぎになるのは嫌だし、人前に出すにしてもタイミングとかはちゃんと考えないと駄目だろうなあ。
食後は自宅の設置場所の変更。いや、色々派手にやらかしたし、念の為にね……
そしてその後は昨日の反省会。一人反省会。ぼっちじゃねーし! ソロプレイだし!
いや、テイマーだから厳密には一人って訳ではないはず? ……あんまり気にしないようにしよう、なんだか悲しくなってきた……
気を取り直して昨日の戦闘の問題点、そのいち。自分の身の安全はもっとしっかりと確保しましょう。
そもそも私って遠距離攻撃しか出来ないわけだし、近接戦闘ゴミだし? 前線に出てあんな大物に殴られたら一発アウトな訳なんだから、自衛手段を増やす方向で考えよう。
つきましては【結界魔法】のレベル上げ。レベルが上がると物理防御の強度だけじゃなくて、防げるものの種類も増えるっぽいので、かなり重要。
ただ、ノルンに騎乗しての機動戦闘は有効だったような気はする。回避大事!
そのに、攻撃手段を増やしましょう。
と言っても私は攻撃魔法は適性が無くて使えないし、魔剣に【ファイナルストライク】をつけて重爆撃……はオーバーキルだし、そもそも目立ち過ぎる。
んー……あれだ、【ウェポンスキル】付きの魔剣を増やそう。
攻撃魔法を【ウェポンスキル】で代用する。とは言っても『ブレイザー』造った時に思ったんけど、相応の素材がないと色々難しいっぽい。だから先ずは相応の素材集めから。
……つまり、今までやってきた事とやる事はあんまり変わらない。
そのさん、そもそも戦闘とか苦手なんだから戦闘行為自体行わないようにしましょう。
うん、ぶっちゃけこれに尽きるんだよね。そもそも私のスキル構成って生産系だし、戦闘系スキルって遠距離攻撃ばっかりだし。
とは言え、今回は止むを得ない事情故に、と言う訳なので次回以降はこんな事にならない様に気をつけて前向きに善処する次第であります。まる。
結論、取り敢えずは【結界魔法】のレベル上げ位しかやる事が無いと言うお話。巨人みたいな化け物と戦う事なんてそうそう無いとは思うけど、潰されて死ぬとかマジ勘弁。
翌日。
さっさと王都に帰りたいんだけど、トリエラ達と合流しないと帰るに帰れない。街はまだまだ落ち着いてないだろうから、多分もう2~3日は来れないと思う。となると何か暇潰しを考えないと駄目かな?
んー、取り敢えず魔剣の構想でも練ってみるかな……
一先ず火力に関しては炸裂弾があるから良いとして、今回の巨人みたいな大物相手で有効な手段となると……動きを止める?
あの時は確か、止めを刺す為に急所を狙いやすくする目的で足を破壊して、それから頭部を狙ったんだよね。足をつぶした事で動きも止められたのはラッキーだったけど。
となると、狙いやすいように動きを止める為に拘束する? そのまま頭部を下に下げさせる……縛り上げて地面に縫い付ける? んー、蔦みたいなものを全身に絡み付けて地面に拘束、とか? あー……そうなるとどの属性がいいかな?
しなやかな感じ? なんだか引きちぎられそう。堅い感じ? 力技で破られそう。うーん、抵抗されても大丈夫なように増殖しながら、とか……氷の蔦とか? あ、面白そう。
思いついたら早速試作!
丁度ホワイトファングの氷属性の魔石があるので、取り敢えずこれを使おう。でも完全に混ぜ込むのも勿体無いので、一先ず剣の柄に取り付ける感じでー、剣自体は適当な魔剣をベースに属性を減らしてー、後は適当な感じにちょちょいのちょい。
うん、出来た。我ながらバカみたいに早い。とは言っても元になる剣は最初からあったし、今回は相応に高品質の魔石もあったのが良かったからなんじゃないかな? お陰で一発で狙い通りの【ウェポンスキル】が付けられた。
今回付けたスキルは【アイスバインド】。指定した範囲内に氷の蔦を生み出して敵を拘束する能力。蔦は破壊しても後から後から再生するし、対象の敵を指定する事も出来る。消費もそんなに大きくないので使い易い、戦闘から逃亡する時にも便利かもしれない。
他には氷属性とか耐久強化とか諸々を『ブレイザー』より少し上、位のレベルで付与してみた。
あ、名前どうしよう? うーん……蔦で拘束、バインド、氷? 蔦、つる……スキル名とかけて、アイスヴァインとか? そんな名前のワインとか料理があったような……? んー、しっくりこない……氷、コールド、ホワイト? むーん。
一旦、名前は保留しておこう。面倒だし無銘のままでもいいような気もするけど……また聞かれたりすると困るかなぁ? あれ? でも別に無銘でも良くない?
更に翌日。
我ながら相変わらずのネーミングセンスの無さにうんざりしながらうんうんと唸ってると、朝も早くからトリエラとクロとマリクルがやってきた。
ちなみに自宅の場所を変えたお陰でまた迷子になった模様。当然、前回と同じ様にノルンに迎えに行ってもらった。
「レン……どれだけ深く隠れてるのよ……」
「レンちゃ、探すの大変だった」
仕方ないんや! ワイの所為や無い、ワイは悪くないんや!
「街の方はどうなってますか?」
話を聞けば私の予想通り、街は未だに騒がしいままらしい。
そして討伐隊や騎士団の大半はこのまま冬の終わりまで街に残り、残存する魔物の駆除に励むのだとか。
ちなみに、防衛戦に参加した街の低ランクだったり13歳未満だったりする冒険者達にも、報酬として魔物の素材が分けられたらしい。それが割りと馬鹿に出来ない量だったとかで、孤児院に帰ってきていた他の面々も大喜びだったとか。
全員その報酬の中から孤児院にお金を入れていたという話なので、なんと言うか……うん。私も後で何か持たせよう、とか言ったら『レンはもう色々出しすぎてるし、これ以上は怪しまれるから駄目』と怒られてしまった。解せぬ。
そしてそう言った情報だけではなく、トリエラは私の分の討伐報酬も持って来てくれたらしい。所がそれが予想外の物だったと言うかなんと言うか……
なんとびっくり、トリエラ達は私が倒した巨人の魔石を持って来たのだ。
え、マジで?
なんでも、昨日の昼過ぎ位に街を歩いていたら長身のイケメン冒険者に声を掛けられて私に渡すように頼まれたらしい。
詳しく聞いてみるとそのイケメン冒険者はやはりベクターさんだったらしく、私の取り分として討伐隊や騎士団相手に交渉して魔石を分捕って来たのだとか。
ベクターさんはトリエラが私を連れてきたと聞いた、等と言っていたそうで、君の方から渡して欲しいとかなんとか……ついでに『助かったよ、この礼はいずれ』と伝えて欲しいとも言っていたらしい。いや、なんか怖いから遠慮しておきます。魔石は貰っておくけど。
よし、今度会った時に何か言ってきたらすっとぼけよう。バレバレっぽいけど、認めなければいいのだ。
他にも色々と話をして、お昼ご飯を食べた後にトリエラ達は街に帰っていった。一応明後日に合流して王都に帰る約束もしたので、次に会うのはその時になる。
うーん、今度ベクターさんに会った時どうしよう……討伐に参加した騎士団は春頃に王都に戻って来るらしいし、その時に一緒に戻って来るのか、或いは私と同じ様に早めに戻ってくるのか……いやいや、メイン火力だったんだから残るよね?
でも巨人の魔石が手に入ったのは予想外だったなあ。何に使おう? んー、一度は諦めたものだし、さっきの魔剣の改良にでも使っちゃう? よし、そうしよう。
勿体無い? いいのいいの、こう言う時はパーっと使うんだよ! さあ、早速改造だ!
と言う訳で出来上がったのがこちらになります。
形状も改良されて両手持ちの大剣となりましたこちらの魔剣、なんと【ウェポンスキル】が二つも付いているのです! お買い得だねマイケル!
新たに付いたスキルは【氷の巨人】。名前の通り、氷のゴーレムを生み出すスキル。消費は多目。だから『ブレイザー』と同じ魔力カートリッジを一個付けてみた。
そして巨人の魔石をつかった所為か、更に【巨人特攻】まで付いてたりする。
うーん、なんだかすごい事になっちゃったぞ……とは言え、やっちゃったものは仕方ないので気にしないでこのまま使う事にする。大体、常に腰にぶら下げる訳じゃないんだし、へーきへーき! 細かい事はいいんだよ!
ああ、そう言えば名前どうしようか迷ってたんだっけ? うーん、そうだなあ……巨人、氷の巨人……霜の巨人? 確か北欧神話の霜の巨人が住んでる国が『ヨツンヘイム』だったかな? って事は『ヨツン』が『霜の巨人』って意味だから……
なら、霜の巨人と氷の蔦を生み出す剣って事で、魔剣『ヨツンヴァイン』?
折角の強力な魔剣なのに、我ながらなんて酷い名前を……
その日の晩は相変わらずの自分のセンスに絶望し、またしても不貞寝する事になりました。もうちょっとまともな名前を思いつけるようになりたい……
いや、捻ろうとするから良くないのか? もっと素直に付ければいいのでは? ……いや、それでもなんだか捻くれた名前になりそうな気がする。
……私は私のネーミングセンスが一番信じられない。
翌日、落ち込んでても仕方ないので気晴らしに一日中日課に励む事にしてみた。トリエラ達も明日の昼前まで来ない約束だし、今日は丸一日自由だし! がっつり取り組むのは久しぶりだぜー! ひゃっはー!
更に次の日、励みすぎた所為で疲れてしまい、トリエラ達が来る時間まで寝落ちしてしまって、焦って身支度を整える羽目になったのはここだけの話。