プロローグ
聖歴 1714年 神聖デミウルゴス世界政府
その世界王が住まう中央聖宮エレウテリアに
魔王率いる闇の軍勢が攻め行った。
そして、魔王は世界王唯一の娘姫君であるエリー・ラヴィ・デミウルゴスを拐っていった。
魔王軍が去った後に、すぐに王は世界の英傑を募った。
どうか、姫をあの邪悪な魔王から救い出して欲しい。姫を救い出した者には溢れる余る金銀と特別第一級貴族の位も与える。
世界王の約定に世界の猛者達は奮い立ち、世界は
魔物の根絶を願った。
それから、2年が経ち
天に牙するような禍々しい魔王城。その上層に姫は幽閉されていた。
「まぁ、幽閉つっても。わりと外に出かけますよw w wコンビニにジャンプ買いに行ったりw w wとらのあなに薄い本買いに行ったりw w wあと夏冬コミケも行くw w w」
その部屋は暗く、じとじと湿った重い空気が漂って
「オタ部屋だものw w w壁は二次嫁のポスターで覆われてなんぼですよw w w窓はカーテンで覆って今日も元気に根暗にエロゲでハッスルハッスルw w w」
姫の着ている服は、質素でみすぼらしく
「ジャージですからw w w部屋着ですからw w wカリカリに乾いた米粒ついてますけど、気にしないw w w姫君なんですけどw w w
ああああw w w三食付きでエロゲしてネトゲしてテレビ見てアマゾンでフィギュア買ってエロゲしてメシをウ〇コにするだけの簡単なお仕事w w wニート最高ぉぉぉぉぉw w w」
「どんな囚われの姫だぁぁぁぁぁ!!!」
パッカーーーーン
姫のゲスな発言に対して、後ろから思いっきり引っ張ったく魔王。
「いい加減にしなさいよ!エリー!」
魔王はビシッと指さし怒鳴る。その指の先には
エリー・ラヴィ・デミウルゴス王女
腰の位程までにピンクの長い髪。美しい睫毛の下に青い湖のような瞳。薄く白い手足は肉付き程よく、そして長い。しかし、胸は存在感を強調するように大きくたっぷりと柔らかい果実のようだ。歳は18歳を迎え、大人の女性の雰囲気も醸し出し始める頃合いだ。
だが、先程 このエリーがぶっちゃけた通りである。いくら素材が良くとも今は小汚いジャージを着た残念な美女でしかない。
「いたた…。いたの?アーティ。」
エリーが叩かれた頭をさすりながら、振り向くとそこに魔王は立っていた。
魔王 アーティ・シルヴァ・アルカディア
金糸の髪を両端に束ねたツインテールは彼女が動く度にキラキラ光る。ボリュームのある睫毛に覆われた下の、その紅いサファイアのような瞳は大きく美しい。しかし、15歳という年齢の平均より若干下回るその身体つきは少しばかり細く儚い印象を受ける。その黒衣のローブもサイズが大きく明らかに服に着させられている。エリーとは対象的に何もかも小さかった。胸も含めて。
胸も含めて。
「誰が2回言えと言いましたか?」
「ぎゃあああ!スタッフ止めて止めてぇw w w」
ギリギリとアーティのアイアンクローがエリーのこめかみに食い込んでいく。どう考えても、美少女が美少女にかけていい技ではない。
「何で囚われの姫がニート生活満喫してるの?何で幽閉された王女がPS4買ってFFに勤しんでるの?何で哀れなお姫様がツイッターしてんの?何が『囚われなう』でSnow自画撮りアップしてんのよ!!馬鹿なの?馬鹿でしょ!」
「仕方無いねw w wこの監禁部屋にコンセントとWi-Fiがあるから悪いw w wアマゾンパイセンちっすちぃっーすw w w家具から家電からゲーム、夜のお供までいつもお世話になってまーすw w ww w w」
世界が恐れる魔王に対して軽口を超えて、殆んど手間のかかる自殺のような発言できるのはエリーくらいのものだろう。
アーティは、怒りにプルプル震えて、引き攣ったような笑顔を浮かべ
「……ねぇ、そのお金はどこから出てるのかしら…」
「領収書はいつも魔王城っっ!!!」
「ふんぬっっ!!」
バギャアッ!!とアーティの右ストレートがエリーの顔面に突き刺さる。
「め"ぇ"た"ん"て"ぃ"!!」
鼻血を吹き出し、おかしな悲鳴をあげてもんどりうつ姫。
「もぉぉぉやだぁぁーーー!!私の思ってた幽閉と全然違うもん!!誰かぁ!勇者でもなんでもいいから、この姫さっさと助け出して連れてってぇぇーーーー!!!!」
「そのやだやだお断りしますーー!!私は一生、魔王様のすねをペロペロペロペロペロペロして生きていくって決めたんだからw w w絶対に私は魔王城から出ていかない!!」
これは
お姫様を連れ出して欲しい魔王様と
絶対に助けられたくないお姫様の
そんな二人のお話。
……To be continued