2.
アイス「えっ……(エマイユを目の前に持ち上げる)」
ホワイト「それはな、騎士‥‥魔法使いの魔力の結晶だ。魂そのものに近く、剥き出しのそれはとても美しい。それはそれは、高く売れるわけよ」
聞けば錬金術師の罠にかかり乗船した魔法使いが宝石に変えられてしまったようだ。なんと、今回の寝てる間にとんでもない事が起こっていたようだ。
更に聞けばこいつ、ホワイトは黒幕の部下だそうだ。ますます怪しい。そんな彼は「シナリオがうまく行き過ぎてつまらんのでな。スパイスが欲しいところだ」といたずらっぽく笑う。
ホワイト「そんなわけだ。お前さんは騎士の生き残り‥‥その掌に抱えたそれを救えるのはお前さんだけ‥‥あとはこの俺‥‥ホワイトさんのさずける呪文を唱えて仲間を救う旅へ~!ってシナリオなんだが。どうだ? 主人公っぽくてワクワクしねぇか?」
まんだ「ヴァ奴さえ間抜けにも捕まってなければ大胆に色々できたんだけどもなもぐもぐ(小声)」
「どう?おにーさん。アレと契約して魔法少女にならないか?」
ホワイト「‥‥どっかで聞いたなその言い回し。」
アイス「(なんだこいつ……むししよ。)
わくわくはしないけど、呪文ってなんだよ。前置きとかいいから早く教えろってば。」
まんだ「おにーさんはアイス少年の性別にもツッコミ入れてくれないとおれも少年も悲しいと思ったのに流されてておつまみ美味しいなんでもいいわ」
ホワイト「えー、と、じゃあ復唱してくれ。『トール ホワイトモカノンティーマンゴーパッションフラペチーノ』」
アイス「!?…や、……やだ。」
ホワイト「‥‥飲みてえなあ。」
「.....トールチョコレートソースバニラフラペチーノでもいいぞ!」
アイス「もっかい殴る?起きてる?もしかして寝てるのかな?(穏やかな笑み)」
睨むアイスにホワイトはトールチョコレートソースバニラフラペチーノを()差し出して「冗談」と笑う。
アイス「(受け取って一口飲む)……甘くて美味しい。
じゃなくて、もっとマシな呪文ないの?そんなの……い、言えない。」
ホワイト「悪い悪い、からかった。本物はこれ。魔を祓う‥‥結界魔法を壊す呪文だ(そう言って1枚の紙を差し出す)それを、その宝石を持って唱えてくれ。」
アイス「わ、わかった……。(エマイユを目の前に持ち、深呼吸する)」
「リーテ・ラトバリタ・ウルス・アリアロス・バル・ネトリール!」
呪文を唱えるとあたりは淡い光に包まれる。アイスは光に目をつむり、ホワイトは目を顰めた。
そして、それは一瞬の事、アイスの前に…宝石の代わりに騎士、タケミが現れた。
ホワイト「お、成功したか。‥‥しかし、こりゃあ魔力欠如激しいな‥‥。暫く寝かせておくか?」
アイス「う、うん……。(13歳の少年ではタケミの身体を支えきれずふらつく)ホワイト、ちょ、ちょっとソファまで……」
ホワイト「よいせっと(ふらつくアイスを支えタケミを抱き抱え背もたれのある椅子に運ぶ)こんなもんかね。」
アイス「ん、うん、……ありがとう(小さく早口で呟く)」
ホワイト「おう、さてアイスよ。」
アイス「……?なに(再び警戒し、じっとりとした目で睨みつける)」
ホワイト「俺とゲームをやらねぇか?」
アイス「ゲーム?」
ホワイト「おう、主人公はお前さん。ゲームクリア条件は錬金術師の親玉‥‥俺の主人カルブンクルスを出し抜き仲間を救う事‥‥なんてどうだ?」
アイス「かる…ん…?(初めて聞く名前に首を傾げ)な、なんなの……。え……?(怪しい男の誘いに戸惑う)」
ホワイト「よーし、じゃあ俺と錬金術師共の館に行こうか♡♡さー出かけようか~パンとナイフも持ったかー?さーて出発!」
まんだ「今ならまんだ(ランプ)さんももれなくついてくる!」
アイス「(あったかい、可愛い……)」
戸惑うアイスの手を握り無理やり進行していくホワイト、アイスの手をとり至極楽しそうな笑みを浮かべる。
ホワイト「おう、お前さんも捕まれな~。いくぞ~。 (指をパチンと鳴らす)」