1.私は××ですわよ!
リリー嬢と取り巻きのの皆様は退学していない設定に変えました。
前と違うと思った方がいたらすいません(._.)
20160507
編集しました。
「今日をもって君との婚約を破棄させてもらう!君がリリー嬢をいじめたことは調べがついているんだ!言い逃れはできないぞ!」
「…私、しておりません」
私、侯爵令嬢ララーナは今、庶民上がりの男爵令嬢リリー様とザ・取り巻きの皆様に糾弾されております。…そういえば私の婚約相手誰でしたかしら?
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思い出しました。次期公爵様です。シュリウス様です。分かってよかったですわ。
…気を取り直して。
そんなお約束からはじまった婚約破棄。私はイジメなんて、家の評判を落とすようなことはいたしませんので、しっかり説明いたしましたわ。だいたいああいうのは自作自演が相場でしょう。調べなんてついていないじゃない。第一、アリバイがありますのよ私には!
だけど。その取り巻きになんと第三王子もいらっしゃったのよね。結局それで、話はうやむやにされてしまったの。ムカつきますわ。
そしてここで問題が発生しましたの。
リリー様と取り巻きの方たちが、積極的にウワサを流し始めましたの。あたかも私が加害者でリリー様が被害者と。それで皆様、私から距離を取り始められたのです。そしてイジメにも合うようになりましたの。味方がいないわけではないのですけど。
私これでも社交界では『華』という立場にいて、『炎の妖精』という二つ名がつくぐらいでしたのよ?自慢じゃありませんけど、私の赤髪は炎より情熱的で、瞳は可憐な薄紅色なのですわよっ(これは昔、ある人からの感想ですから!けっして自画自賛じゃありませんわよ!) …つり目でキツそうな印象を与えてしまうのは残念ですが。それで皆さんウワサを信じたんですかね…。
不自由と言えば、ダンスのお相手がいないことですわね。壁の花になるしかありませんもの。奥様方の『婦人会』に入れてもらうこともありますけどね。婦人会の皆様は肝が据わっていて、ウワサに踊らされている子息・令嬢、はたまたその家をしっかり観察しています。さすがです!
ならなにが問題なんだ?
そう思われますか。実は私、
ドMなんです。
ですので現在の状況は、すました顔で内心『総無視とは…これ新しい放置プレイですか?!』とか、5人ほどの令嬢方に呼び出されては『イジメられて足蹴にされて水かけられるなんて…なんて快感!ご褒美ですかっ!』と思っていたり。そんな毎日だったんです。社交界より気楽で楽しかったですわね。別にこれも困ることではありません。
そう、あのときまでは…
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そう、あれはちょうど3週間前…爵位が侯爵家以上の令嬢方にイジメられ(これでも私は侯爵令嬢!)、びしょ濡れだったときのこと。柱の影で、現在進行形で加害者になすりつけられていることも忘れてつい、
『イジメ最高…!悪役令嬢バンザイ!』
とつぶやいてしまったんですよね。それをなんと、幼いときからの知人である公爵子息レイモンド様に見られてしまったのです!
金髪のサラサラヘアー、切れ長の澄んだ群青色の目、全体に見ても整った顔立ちのレイモンド様は、その優れた頭脳もあって人気の高い方です。高等部に入ってからは、社交界であいさつをする程度でしたのに。『レイ様』と呼んでいたころが懐かしいですわね。年齢は彼のほうが一つ上です。そりゃ接点ないわー…失礼。
そのときのレイモンド様の顔は一生忘れませんわね。今思いだすだけでゾクゾクいたしますわ!(A.イケメンにあってはならない、ものすごい驚き顔)
…コホン。話をもどしまして、レイモンド様は私の性格をご存知なかったのですわ(だって普段隠してますもの)。だけどレイモンド様の反応には私、驚かされましたわ。だってものすごい色気ムンムンなのに(死語ですか?気にしませんよ!)、その反面、悪いことを思いついた子供のようなお顔で微笑んでいましたもの。多分、『弱味握ったぜ!』という感覚だったのだと思います。(なにソレ?!)こっちは魂が抜かれるかと思いましたけどね!色気に!
そして、悪魔様は一言おっしゃいました。
『君、そういう性格だったんだ…ばらされたい?』
とりあえず私的には、ばれてもそれはそれでM心を痛めつけてくれそうだったので良いかも、と思い、ありのままお話ししたら、すんごい笑われましたの。それから、
『じゃあそうだな…君のお父上に話させてもらおう。あなたの娘はMなイジメられて喜ぶ変態だ、ってね』
『はぁ?!』
いやー思い出しても腹立ちますわ。さすがの私でもお父様にバレるのはイヤですわよ。……家族の中に元凶がおりますし。
そういうわけで私は悪魔様の下僕になっちゃいましたわ。
しかも悪魔様も『紳士』という仮面をかぶっていましたの!本性は腹黒の性悪男でしたわ!あの悪魔!『紳士』の仮面で学園の女を虜にしていますのよ!許せないわあく…
「誰が『悪魔』だって?ララーナ」
「…っきゃあ!」
いつの間にあく…レイモンド様が?!
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回想から戻ってきたらちゃんと裏庭にいましたわ。あく…レイモンド様付きですけど。
「今また言いそうになっただろ。ん?どうなんだ?」
「言ってません!言ってませんからぁ!」
「そうか、それなら良いよ…ってわけないだろ!」
ごまかせたって思い気が抜けた途端、『魔力』を使われました。正確には私の首もとにあるチョーカー型の魔道具のスイッチを入れられただけですけど。
「ひゃ、あ、あーー!」
「クスクス。どうだ?ララーナは首が敏感だからなぁ。ちょっとした電流でも反応が強いな。はい、これでおしまい」
「アッ!…はぁ、はぁ、レ…レイモンド様っ!ひどいですわ!」
そうひどすぎますわ!スイッチを入れると『ちょっとした』電流が流れるモノらしいですけど、ちょっとした電流って、あなたのちょっとは全然ちょっとじゃないんですのよ?!たしかに私は首は敏感かもしれませんけど、その分痛いんですからね!
「ま、俺は規格外だからな。諦めろ」
「心の声と会話しないでください!」
「しょうがないだろう。読めるんだから。『魔力』使ってるけどね」
「『魔力』は温存していたら良いのですわ!」
「ハハハ。使わなきゃ損だろ」
「クッ…」
彼は『魔力』持ちです。
あ、この世界にはいろいろな『力』があってですね、中でも『魔力』は珍しいんですの。良いですわねレイモンド様。
私?私は『順応力』持ちですわ。なにに順応しろといわれてるんでしょうか?意味わかりませんわ。
「それでお前はなんでこんなとこいるんだ?」
「私はいつもここで昼食をとっていますわ。ボッチですから。レイモンド様こそなんでいらっしゃるの?」
「俺か?…教室からお前が見えたから来た」
「あら?実はボッチなんですの?仲間にいれてあげても良いですわよ?」
「…」
「ヒィ!あ、あんっ、レ、レイ様ぁ!やめて、くださ…い、ゆるしてぇ…」
「…オイ。そんな声だすなって」
「え…?なん、ですかぁ、レイ、さ、ぁ、あーー!」
「あ、悪い。ちょっと強くしてしまった。もう切ったから」
ちっ、ちょっと調子に乗ってしまってたらまたスイッチ入れられたわ。さっきより弱い『ちくちく』って感じでされたからすごい痛くなかったことだけが救いね。気を使ってもらったのかしら。…でも今のも気持ち良かったけど、さっきの痛いのも良かったわね。(こりないやつと思った方、出てらっしゃい!罰として私を一時間踏みつける刑にいたしますわ!)
「なんなんだよララーナは…こういうことは慣れてないと思ってたのにそんな声出しやがって…」
「…?レイモンド様、私、何かしちゃいました?」
「…あぁ。謝れ」
んな理不尽な!…でも仕方ないですわね。今私、レイモンド様の下僕ですし。あれ、ということは『レイモンド様』じゃダメなの…?
「申し訳ありません、…ご主人様?」
「っ……それで良し」
ふぅ。合格っぽいわね。良かったですわ〜
でもさっきからレイ様、ボソボソつぶやいてるんですけど、大丈夫かしら?
「なんだよララーナのやつ…なんでご主人様とか言えんだ…?もしかして経験あり、とかねえよな?…違うか、あいつの『順応力』か…」
「ご主人様?どうされたの?」
「っご主人様じゃなくてレイでいいから。昔もさっきも言ってただろ?」
「?そうですね!じゃあ私はララでお願いしますわ!」
「ララ」
「はい!」
レイ様に呼んでもらえた!なんか嬉しいわ!
…あれかしら?やっぱりペットは主人になつくのかしら?
「じゃあランチいただきますね」
「あ、俺にも食べさせろ」
「えー。レイ様自分のあるじゃないですの」
「…」
「あ、まって、まってください!あげますからー!」
「最初からそうしとけば良かったんだよ」
「ムー…はい、アーン」
「あー…ん、うまいな」
「それは良かったですわ」
そんな会話をしながら今日の昼休みは終わりましたわ。こんな毎日で私はいつも忙しいです。
読んでいただきありがとうございました!
前半の説明部分はリズムに乗って読むことをオススメします。
【用語設定】
『力』はそのままの意味です。ララの『順応力』なんてまさにソレです。今後も出てきますが、『性格』と思っていただければいい…かな?…いやいや、性格で魔法が使えるなんて羨ましいんですけど…だからこそ、この世界で『魔力』持ちは希少なのです。
*『社交界の華』というのは、パーティーなどで目立って動く令嬢方のことです。だいたいは公爵令嬢なので、侯爵令嬢のララーナは珍しいタイプなのです。