夜と拘束具と女の子
登場人物紹介
平次…主人公。高校生。ちょっとMかもしれない。
黒…白とも呼ばれる。
女の子…黒に「つっきー」と呼ばれていた女の子。
あんまり一気に色々と喋っても混乱するだろうし疲れてるだろうから今日のところは帰るね~、とか言い残して、黒は部屋を出て行った。
ドアが閉まる音を最後におしゃべりな存在がいなくなり、室内は急に静かになった。ここは僕の部屋のはずなのに、なんだか取り残されたような気分になる。
正直、混乱しているし疲れてもいた。しかし話が途中のまま放り出されてしまい、もやもやとした気分だけが残った。
僕はゆっくりと、自分の身に降りかかったことを思い返してみた。下校途中に血痕を見つけて、それを辿って行ったら殺し合いの現場に出くわして、僕まで巻き込まれて殺されかけて…。返り血に染まった男の、その血の色より濃い赤目を思いだして僕は思わず身震いした。
結局あいつはなんだったんだろう?連続殺人事件の犯人なのだろうか。黒は「コロスモノ」と言っていたけど、今ひとつ要領を得なかった。
「何なんだよ…くそっ」
僕のささやかな悪態は、部屋の暗がりの中にすぐに飲み込まれて消えていった。
なんだか無性に喉が渇き、渇きを癒そうと立ち上がろうとして大変なことに気がついた。
あいつ、僕の拘束を解かないで出て行きやがった。このままでは立ち上がる事すらできない。
これは…非常にまずいのではないだろうか。僕は一人暮らしだし、言いたくはないが自宅を訪ねてくるような友人などいない。情けない話だが、携帯電話に登録されている連絡先といえば遠方に住む親戚ぐらいのものだった。
「え、うそ。どうしよう」
黒は『今日のところは帰る』と言っていたから遠からず僕の前に現れる予定なのだろうが、それがいつなのかはまったく予測がつかない。
となると、僕はそれまでどのようにして生命を維持していけばいいのだろうか。
飲み食いだけではない、生理現象も処理しなければならない。今でこそ大丈夫ではあるが、いずれトイレにも行きたくなるだろう。
「まずい…なんとかこれ外れないかな…んっ」
僕が焦燥にかられながらながらくねくねと体を動かしていると、何やら視線を感じた。
驚いた。
僕しかいないと思っていた部屋に、さっきの女の子がまだ残っていたのだ。
「うわっ、びっくりした…君まだいたんだ?もうあの黒って人帰っちゃったよ」
てっきり黒と一緒に出て行ったと思っていたが、そういえば出て行くところは見ていなかった。
女の子は無言で僕を見ていた。動けない姿を上から眺められるというのは、何とも落ち着かない気持ちになる。
「と、ところで、僕の拘束解いてくれないかな?このまま身動きできないと色々と困るんだ…」
それにこの状態のまま視線を送られては、精神的にも耐えられそうにない。
女の子は尚も無言のままこちらを見ていたが、やがて僕の拘束具を外してくれた。
「ありがとう…」
僕は体を慣らしながらゆっくりと起き上がって、改めて女の子を見た。