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イカシコロス  作者: 小雨
第二章 コロスモノとの戦い
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一人前の戦士

「君は積極的に命を奪ったことがあるかい?」

ぼんやりとした思考の中で、声が聞こえてくる。

僕は現代社会における一般的な倫理観を持ち合わせているつもりだ。その中で命を奪うという行為は、一般的なそれから逸脱する行為のはずだ。そして僕は、それを理解している。

「ありません」

僕は黒の問いに即答した。

「そうだよねー、うんうん」

ふむふむ、と黒は頷く。

「ということは、今日がへーじ君の記念日だね。名付けて、【積極的に生命を奪っちゃった記念日】だ!」

思考が徐々にはっきりしてくるにつれ、とんでもない記念日を作られたものだと考える余裕もだんだんとできてきた。えぇと、ここはどこだっけ?僕はどこにいるんだっけ?

「正直、僕は興奮冷めやらないよ!つい先日イカスモノになったばかりの君が、早速にっくきコロスモノをぶち殺してくれたんだからさ!」

黒の言葉がトリガーとなって、僕の頭の中に映像がフラッシュバックする。と同時に、自分が今ベッドに寝ていることに気が付いた。

「お疲れ様へーじ君、そしておめでとう。君は単独でコロスモノをぶち殺すことができた。一人前の戦士だよ!」


意識が戻ったなら回復はすぐだから、という黒の言葉を背に、僕は基地の保健室を出た。

しばらく寝ていたせいか、まだ体力が本調子ではないからか、足取りがふらふらする。

もう少し寝ていた方がいいのかもしれないが、黒と同じ部屋にいることはなるべく避けたかった。この調子で話しかけられては、治る傷も治らないような気がしたのだ。


僕は保健室を出て、がらんとした廊下を歩いた。白を基調にした廊下に、明かりが余計にまぶしく感じる。ここは地下何階だろう?

このまま自宅に帰ろうかとも思ったが、食堂の前を通った時に漂ってくる食べ物の香りをかいだら、猛烈にお腹が減ってきた。

家に帰ってから作るのも面倒だと思い、僕は食堂に入った。


食堂は人影がまばらだった。以前研修で来た時も人影がまばらだったっけ。

それにしても、この基地はどのくらいの規模なのだろう。どのような設備があって、どのくらいの人員が働いているのだろう。いまだに掴み切れない。

食堂の規模はかなり大きいようだしメニューも豊富だが、これでは宝の持ち腐れの様に見えてしまう。

時間が悪いのかな…そういえば今何時だろう?

食堂を見渡すと、かなり高い位置に壁掛け時計を見つけた。時刻は、2時を指している。確かに、お昼のピークは過ぎてしまっていたが、それにしてもがらんとしすぎているような気がした。

まあ、いいか。前回食べた生姜焼きは中々おいしかったが、今回はさっと食べてしまいたい。僕はきつねうどんを注文し、席に着いた。

なんとなく手持無沙汰で、僕はテーブルに肘を両手で顔を覆い、コロスモノとの戦いを思い出していた。ナイフで抉られた痛み。相手を叩き潰す感覚。

―――やめよう。食事の前に考えることじゃない。

視界をさえぎっていた手をどけると、目の前の席に見慣れた顔が座っていた。

"平ちゃん、よくなったんだな!"

「ああ、月…いたんだ」

僕の言葉を聞くと、月は憤慨したように顔を赤くする。

"いたんだ…?よくもまあそんな冷たい言葉を…!平ちゃんが入院している間、私がどれだけ心配したと思ってるだ!"

「…え、僕そんなに長い間…?」

"そうだよ。黒から聞いてないのか?平ちゃんがコロスモノを倒したあの日から、今日でちょうど一週間だよ"

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