VS 切り裂き魔3
「平次!」
自分の名を呼ぶ声が聞こえたかと思うと、轟音とともに突然視界が遮られた。
慌てて僕は一歩飛びのく。大地から何かが生えていた。咄嗟に僕はそれを掴んで引き抜き、振り払うように薙いだ。
接近していたコロスモノが爆撃を避けるように距離を取った。
巨大な槌だった。柄の先端部には巨大な鉄塊が装着されてい。、片側は凹凸が施されており、片側は円錐状になっていた。
「おら、平次!さっさとぶっ殺せ!」
叩き潰す。或いは、引き裂く。
両方できそうだなと思っている僕に、再び檄がとんだ。
花先輩の声だ、と理解すると、今度は月の声が頭の中に響く。
"鑢子博士は人間的にアレなところはあるけど、能力は信用できるよ。こと、コロスモノを殺すことに関しては"
鑢子博士の名前がでたところで、ようやく僕は武器の開発をお願いしていたことを思い出した。
ナイフを携えたコロスモノが、襲い掛かってくる。
僕は手に入れた槌を構えると、再び大きく振り払…おうとした。
重い。
最初に触れた時には感じなかった重量を手に感じ、それを思ったように動かすことはできなかった。
意識した途端、それを持ち続けることができなくなる。
コロスモノは、僕がたまらず地面に落とした鉄塊の上に飛び乗ると、僕に向かってナイフを振るう。
握ったままの鉄塊を離すことができず、なすすべなく切り刻まれる。
「…!」
再び肉を裂かれる感覚が僕を襲う。何度裂かれても慣れることはできない。
流れ出た血液が、新しい武器を汚した。
「平次!鑢子の武器は力だけじゃ持ち上げられねえぞ!」
花先輩の声が再びきこえた。
「そいつも体の一部だと思え!奈月の力もそいつに流し込むんだ!」
いわれるがままに、僕は奈月の力を動かす。
さんざん練習した、自分の体に力を纏う感覚。握りしめた鉄塊にもその力を伝播させた。
力を入れる 動く
さっきとは打って変わったように、握りしめた戦闘槌は軽くなっていた。
僕は今度こそ、槌を振り払った。
鎚に乗って僕にナイフを振りおろしていたコロスモノは、バランスを崩し宙を舞う。
僕はとっさに鉄の塊を手に、コロスモノを追いかけるように大地を蹴った。
斬られすぎている。力も尽きかけている。
叩き潰す。ここしかない。つぶす。潰す。ツブス。
地面に叩き付けられたコロスモノに向けて、僕は鉄の塊を振り下ろした。




