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イカシコロス  作者: 小雨
第二章 コロスモノとの戦い
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挫折

積み上げてきた行為が全く報われなかった時、人は何を思うのだろうか。

虚脱感。悲しみ。向けようのない怒り。

それらは一括りに、挫折と呼ばれるものだろう。

挫折。しかし、それは決して悪いことではない。挫折という現象も、言わば積み上げている途中なのだ。

挫折は終着点ではない。さらに高く積むための、一つの通過点でしかないのだ。


「んで。したり顔でごちゃごちゃ言ってる平次くんは、一体全体何に挫折したって言うんだい?」

月曜日の憂鬱な午前授業を乗り切り、僕とシイタケは屋上でお昼ご飯を食べていた。

「挫折ってのは努力した者のみに訪れる現象じゃねーのか?平次くん、努力とかしたことあんの?」

酷い言われようだと思うが、言葉に詰まってしまう自分が我ながら情けなかった。

「ほら、答えてみろよ。面接試験なんかでは頻出なんだろ?おっと、ただ機械的に答えるだけじゃ三流以下だぜ平次くん。この手の質問は、質問者の意図を考えるのがポイントだ」

質問者の意図。普通に考えれば、努力を通じて何を得たか、どのような行動哲学を持つに至ったか…などといったところだろうか。

しかしこの場合、質問しているのはシイタケである。彼女は一体どのような意図で僕に問いかけているのだろうか。

恐らくだが、まともな答えを返してもけなされるだけだろう。しかし同時に、それは正解でもあった。

シイタケは、僕を貶したいのだ。

逆にパーフェクトな答えを返してしまえば、このケースに関してはそれは的外れと言えるのかもしれない。

ここまでわかっているならば、日頃お世話になっている友人に気持ちよくなってもらうのも友情というものかもしれない。よし、いくぞ。

「いや、それがさ。実は僕は生まれてからというもの、胸を張って努力したって言えることなんてないんだ」

一瞬の空白の後、トーンが下がったシイタケの声が聞こえた。

「…え。まじかよ。ひとつも?ひとつもないの?」

そうなんだよと仕草で肯定を示す僕に向けられたのは、びっくりするぐらい無表情な視線だった。

ドヤ顔すら浮かべていた僕を尻目に、シイタケは立ち上がった。

「あ、あれ、どうしたの?」

「いや、いいから、本当に。変なこと聞いて悪かったな」

無表情な視線は、哀れみを帯びたそれに変わっていた。

…果たしてこれは成功なのだろうか、失敗なのだろうか。

シイタケが去ってしまった屋上に取り残された僕は、奇妙な挫折感を味わっていた。




"平ちゃん!"

シイタケと入れ違うように屋上にやってきたのは、月だった。

「月…」

"屋上にいたのか。ここは気持ちいいな。平ちゃん、酷いじゃないか。朝だって私の事を置いて行っちゃうし、休み時間だって私が話しかけてるのに平ちゃんずっと机に突っ伏したままだったし"

「…昨日の疲れがまだ取れなくてさ。しかし驚いたよ。同じ学校の、同じクラスに転校してくるなんて」

"パートナーとして、いついかなる事態にも対応できるようにしておかなければならないからな。まぁそれに、厳密に言うと転校じゃないんだけどね…教育機関なんて、幼稚園ぶりぐらいだよ"


さらりと言ってのけた月になるべく動揺を悟られないようにしたが、果たしてどこまでできたかどうか。

つまり、月にはその頃に降りかかったのだろう。日常を破壊するような出来事が。


「でもよかったな。学園生活、うまくやっていけそうじゃないか」

"うん!ずっと組織の中で暮らしていたから不安だったけど、みんな話しかけてくれて嬉しかったよ。平ちゃんは構ってくれなかったけど"

心なしか、月の声は弾んでいるように思えた。

僕とて月が転校生として紹介された時、できる限り学園生活を手助けするつもりでいた。

しかし、そんな僕の心配は杞憂に終わることとなった。休み時間になると、月の周りにはすぐに人だかりができた。月はそんな光景に驚いたように目を丸くしていたが、すぐににこやかに微笑んでいた。

ストールかわいい、だとか。休みの日何してるの?だとか。そんな質問が乱れ飛んでいた。

ちなみに月が普段から首に巻いているものは、スカーフではなくストールというものらしかった。いかに自分がファッションに疎いかがわかる。


ちなみに僕が味わっていた挫折感とは、未だに友人ができない僕を尻目に月がすぐにクラスに馴染んでしまったことに対するものでは決してない。決して。

別サイトで連載させていただいているポケモンの二次小説が終了するまで、しばらくの間かなり不定期な更新になると思います。申し訳ありません。。。

やはり二つ同時は厳しいですね…


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