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イカシコロス  作者: 小雨
第一章 逸脱した彼の話
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雪月花 -花野井-

登場人物紹介

平次…主人公。高校生。奈月のパートナー。

奈月…平次の研修に付き添い中。イカスモノ。

黒…平次の研修を実施中。

花野井…イカスモノ。平次の所属するチーム雪月花のメンバー。

釵丸…花野井のパートナー。犬。

「といっても、へーじ君はすでに顔見知りの人も多いかもね。じゃあ順番にいくよー。花くん、起立!」

黒の声に応えるように、花と呼ばれた男子が立ち上がった。

「よお、五体満足で研修終わってよかったな。俺は花野井。イカスモノだ。黒みたいに花とでも呼んでくれよ」

休み時間に僕を壁にめり込ませた男子は、驚く程爽やかに自己紹介をしてきた。

あまりに普通に話しかけられたので、先ほどの出来事は僕の勘違いだったのではないかと思ってしまったぐらいだ。

「あ、はぁ…よろしく…おねがいします。花…先輩」

呼び捨てにするのは何となく憚られたので、先輩と呼ばせてもらうことにした。年齢はわからなかったが、組織の先輩であることには変わりないし、問題ないだろう。

「さっきは悪かったなぁ。いや、実際あの程度でどうにかなってるようじゃあ今後大変だと思ったからさぁ」

そう言って花は笑った。

なんか…運動部の爽やかなキャプテンってイメージだな。

「そんで、こっちが俺の相棒」

花はそう言って、傍らに行儀よく座っているモフモフした生物を指差した。

「犬、ですか」

「おいおい、犬だけど犬とか言うなよ。お前も月のこと『人間』とか呼ばないだろ?」

ということは。花先輩の相棒は、この…

「えぇと…この子の名前は?」

釵丸(かんざしまる)だ」

「先輩の相棒は釵丸ということですか」

驚いた。どうやらイカスモノとそのパートナーの関係は、人間同士に限定されるというわけではないらしい。


僕は昔、犬を飼っていたことがあった。

犬を飼っていた経験があるのにこんな事を言うのはなんだけど、僕は犬が苦手だった。

何を考えているかわからないし、本気で襲ってきたら人間などひとたまりもないだろう。

しかし不思議なことに、長年一緒に暮らしていると何となく何を考えているかわかってくるものだ。

共通言語を介しての意思疎通こそ難があるものの、だ。

怒られるときは申し訳なさそうな顔をしているし、寝ているところを起こすと迷惑そうな顔でこちらを見る。

家族を失ったあの事件があってからは、僕はいくらか考え方が変わった。

何を考えているかわからないのは、犬に限ったことではないのだ。

最早原形すらとどめていなかった家族の変わり果てた姿は、悪意、狂気、そういったものを遠慮なく叩きつけられたようだった。

人間であれそれ以外の生物であれ、心底を見通すことなど不可能だ。そういう結論にたどり着いてから、僕は必要以上に他の生物に対して恐怖心を抱く事は無くなった。


「へーじ君!どうしたのボーッとして」

黒の声で、僕は我に返った。

「い、いえ、なんでもないです」

「さすがに研修の疲れが出たのかな?今日一日、色々詰め込んだからね。じゃあサクサク行こうか。次は雪月花のリーダー、そして現イカスモノ最強のコンビ!」

「柊だ。よろしくな」

ハイテンションの黒に対して、柊と紹介されたスーツ姿の男性はきわめて淡白に名乗った。

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