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イカシコロス  作者: 小雨
第一章 逸脱した彼の話
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新人研修 3

登場人物紹介

平次…主人公。高校生。現在研修中。

奈月…平次の研修に付き添い中。絶望的な運動神経の持ち主。

黒…平次の研修を実施中。

「さて、二つ目に入る前に、君たちの戦闘スタイルについて話しておこうか。まだちゃんと説明していないよね」

そういえばそうだ。先日コロスモノに襲われた時は僕が撃退したと言っていたけど、その時の事はなにも覚えていないのだ。

「まずへーじ君の相棒であり、イカスモノであるつっきーについてだけど」

「はい」

「彼女は弱い」

「…はい?」

「運動神経は限りなくゼロに近い。一応戦闘技術は学んでいるけど、まるで体がついていかない。通知表だったら間違いなく最低の評価をされるだろうね。おまけにどんくさいし、ドジだ。ドジっ娘ちゃんだよ、へーじ君。よく漫画やアニメでさ、何もないところで転んじゃうような女の子いるじゃない」

黒は言葉を切ると、ゆっくりと月を指差した。

「それがつっきーだ」

「…」

あまりの言われように、僕はさりげなく隣に座る月を見た。

太っているわけでも痩せているわけでもない。運動神経は外見で測ることのできるものではないだろうが、黒の言うようには見えなかった。

僕の視線に気づいた月はこちらを向くと、腕を組んでフフンと笑った。

…何、この人。これだけ言われてるというのに、なんというメンタルの強さだろう。

「本来なら難ありなんだけどね。だけどつっきーには、それを補って余りある力があるんだなぁ。つっきーはイカスモノとして、非常に優れているんだ。我々の戦闘スタイルは、二人でひと組だ。イカスモノから力を貰い、パートナーがコロスモノと戦う。つまりへーじ君は、つっきーからイカスモノの力をもらって自分の力を底上げし、コロスモノと戦うわけだよ」

黒は後ろを振り返ると、黒板に『身体能力の強化』と書いた。

「どのくらい強化されるかというと、少なくともイカスモノのパートナーになりたてのへーじ君が、コロスモノを撃退できるぐらいには強くなるわけだ。強化度は、パートナーとの絆の強さに依存する。要は、君たちが仲良くなるほど強い力が使えるってわけ。データ通信をイメージしてもらえるかな?君たちの間は、いわば回線でリンクしているんだ。今はまだ細くてたくさんのエネルギーは送れないが、太くなっていくにしたがって多くのエネルギーを送ることができるようになる」

もしかすると…と、思い当たる事があった。ここ数日の月の妙に慣れ慣れしい行動は、これに起因しているのではないだろうか。つまり、僕との絆を深めてより強い力を使うことができるようになるために。

「このような回りくどいとも思える戦闘方法を取るには、それなりの理由があってね。まず第一に、イカスモノは自分自身を強化することができないんだ。そしてもう一つ、最大の理由がある。これは絶対に覚えておいて欲しい」

黒の口調が変わった。それだけ重要な事柄ということなのだろう。僕は黒の言葉の続きを待った。

「イカスモノとコロスモノが直に触れ合うと、消滅してしまう」

「消滅…ですか?」

消滅という事象を、うまくイメージすることができない。

「そう、消滅。双方の存在が、跡形もなく消えてなくなってしまう。力がぶつかり合った結果らしいんだけど、詳しい理屈はわかっていない。ただ、消えてしまうんだ。だからへーじ君、君は絶対にコロスモノをつっきーに近づけてはいけない」

「守りながら戦う、というわけですか?」

「コロスモノはそのあたりの事については無頓着というか…消滅する事を恐れていないんだ。平気で襲いかかってくるからね。最も基本的にやつらは目の前の相手をターゲットにするから、きちんとパートナーが前線に立っていれば大丈夫なんだけどね。乱戦になるような事があったら特に注意する必要がある。まぁその当たりの戦い方は実技研修でやるから、今は取り敢えず理解だけしておいてくれればいい」

「ちなみにですが…月の力で強化された僕がコロスモノに触れても消滅は発生しないんですよね?」

「その通りだよ。何かを媒介としてイカスモノの力を使っていれば問題はない。例えば武器にイカスモノの力を流し込んでコロスモノを攻撃したとしても、その武器は消滅せずにちゃんと使える。…概要としてはこんなところかなぁ。じゃあ二時間目はこのくらいで終わろうか。とりあえずお昼にしようね」

黒の口調がいつものように戻ると同時に、講義の終わりを告げるチャイムが鳴った。

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