ひっくり返って白くなる
登場人物紹介
平次…主人公。高校生。現在研修中。
奈月…イカスモノ。平次の研修に付き添い中。
黒…マイペース。黒い服ばかり着ている。今回は白い服も着ている。
僕が元々住んでいた地域は、田舎だった。
中心地に行けばある程度は栄えてはいたが、逆に少し離れると未だに無人の駅なんかをたまに見かけることができるくらいの田舎だ。
田舎だったということもあってか、小さい頃は友達と集まって秘密基地作りなんて事もよくやったものだった(当時は僕にも友達がいたのだ)。
仲のいい者数人で集まり、木切れを組んでテントのような物を作って草をかぶせていく。
強度が足りずに、何度となく作り直す。
―――天井は直接乗せるんじゃなくて、木と木に掛けるようにしたらいいんじゃないかな
―――ハンモックとかあったらいいよね
―――おい、河原にエロ本落ちてるってよ!拾ってこようぜ!
試行錯誤しながらようやく完成したそれは、秘密基地の名に恥じない物となった。
そんな意外と活発な少年時代を過ごした僕なので、黒の言う秘密基地という言葉には少なからず惹かれるものがあった。
車で30分程揺られて連れてこられた先は、倉庫のような建物だった。それは漠然と秘密基地という単語に抱いていた期待とは裏腹に、なんというか、非常に興味を惹かれない建物だった。
これといった特徴はない。かといって、廃墟というわけでもない。黒はシャッターを開けて車を止めると、僕たちに外に出るよう促した。
多少の落胆を覚えていた僕のテンションは、今度は上向くことになる。
黒が隠しスイッチのようなボタンを押すと、壁にタッチパネルのような物が現れた。
それを操作すると床が開き、地下への扉が現れたのだ。
"月…すごいなこれは!"
思わず僕は、月にテレパシーを送っていた。意識していなかったが、僕からの初テレパシー成功ということになろう。
"…男の子というのはいくつになってもこういうのが好きなのかね…"
目を輝かせている僕に、月はやれやれといった具合に呟いたものだった。
僕が案内された場所は、学校の教室のような部屋だった。なんというか、前時代的な雰囲気の教室で、机や椅子は木製。全面にはホワイトボードではなく黒板。背面にも黒板と、掃除用具入れのようなロッカーが一つ置かれていた。
ちょっとここで待っててねーと言って、黒は教室を出て行った。
さて、どうしよう。こうして連れてこられたけど、何をするか全く聞いていない。
「…月、今更だけど、今日って何するの?」
"ん?研修だよ研修。先日ちょっとだけ説明されてたみたいだけど、平ちゃんはまだ何も知らないだろ"
ごもっともである。というか、研修制度があるのか…。
正直まともな説明がされるとは思っていなかったので少し意外ではあった。
キーンコーンカーンコーン…
何となく周りをキョロキョロしていると、チャイムがなった。学校でよく聞く、あのチャイムだ。
チャイムとともに、白衣を着用した黒が教室に戻ってきた。
白い肌に黒い服。さらに上から白衣。こうなるといよいよ白と呼んでいいのか黒と呼んでいいのか判断が付きにくいところである。
白 黒 白…ボードゲームだったら全部白くなるなぁと、何となく思った。
これは白と呼ぶのもありかもしれないと一瞬思った。思ったが、やはり目の前の男を白と呼ぶのは、どうも僕にはためらわれた。
数年ぶりにインフルエンザにかかりました。
めちゃくちゃつらいですね…




