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第八章 追憶からの解放 抗えぬ運命
何かが、背中に当たる感触を感じた。
次の瞬間、口の中に苦い味が広がる。
腹部に走る鈍痛。
手を押し当てると生温かい物を感じる。
徐々に、体から力が流れ落ちるような感覚に襲われた。
「おかしいな? ちゃんと死ぬように刺したのに」
背後から聞こえた声に、ようやく自分が剣を突き立てられて事を理解した。
「貴様……」
少年に向け、巨剣をなぎ払う。
しかし、その切っ先を少年は見切り、後ろに飛び退き難なく避けた。
「凄いね! そんな状態でも剣を振るう事ができるなんて」
飛び退いた勢いで、頭巾が取れる。
そこには、燃え上がるような赤い髪の少年が立っていた。
まだ幼いその顔は、無邪気な笑みで満たされていた。
しかし、その手には短剣が握られていた。
「でも、その傷じゃあもう長くはないよ。確実に君は死ぬ」
その言葉を残し、少年は姿を消した。