第七章 揺るがない思い 動き出す戦場
全身が総毛立つ。
まるで、抜き身の刃で斬りつけられたような悪寒。
「貴様……」
様々な戦場で、多くの戦いを経験してきたアルチナが初めて感じた感覚。
純然たる戦闘狂。
戦場で武勇を上げようと奮起する戦士とは明らかに違う。
命の奪い合いだけを楽しんでいる。
ただ、死だけを振りまく存在。
それが、この男の根源なのだ。
「お前は、ここで始末しておかなければ!」
強い決意とともに、剣を握り締めた。
「愉しい。とても愉しいよ」
にやりと歪んだ笑みが浮かぶ。
全身に殺気を纏い、切っ先の折れた剣を構える。
あと、ほんの少し二人の距離が縮まれば激しい戦いが始める。
渾身の力を籠めて、アルチナが斬りかかろうとした。
「?!」
突然、ハイネの動きが鈍くなる。
呼吸が激しく乱れ、異常な量の汗が噴き出る。
「……どうやら、時間が切れた……ようだね」
苦々しい表情を浮かべながら周囲を見渡した。
「あそこか……」
まるで、描類を思わせるような軽やかな身のこなし。
襲い掛かる修道士たちを、折れた剣一本で交わし、隙をついて塀を越えて逃走したのだ。
「チッ……化け物……が!」
緊張の糸が切れたと同時にキリアは意識を失った。