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第七章 揺るがない思い 動き出す戦場
にらみ合いはしばらく続いた。
相手はギルドの戦士。
アルチナも、不用意には手が出せない。
「まさか、こんな所で悪魔の一族と相対するとはな」
苦笑いを浮かべているが、表情は戦場に身をおく戦士のものに変わっている。
剣の柄を握り締めた掌に汗が滲む。
ほんのわずかに、アルチナの剣がハイネの間合いに侵入した瞬間。
静かな時は終わりを告げた。
力の篭もった斬撃がハイネを襲う。
しかし、巧みな体捌きでアルチナの剣をかわす。
そして、続けざまにアルチナに斬りかかった。
「なめるな!」
驚異的な反射神経でかわした。
刃が空を切る鋭い音だけが耳に届く。
激しい剣戟が繰り広げられる。
眼にも止まらぬとは、まさにこの事だ。
ぶつかり合う刃の音が思い出したかのようにあたりに響く。
「折れた剣しか装備がないのに手加減がないね」
にやりと、笑みを浮かべながら実に愉しそうにアルチナを眺めた。
「貴様が平凡な戦士なら手加減もするだろう」
アルチナは顔をしかめながら答える。
「愉しいね。キリア君といい……王女さまの周りには強者が集まるんだから」
口元が歪み、悪意に満ちた笑み。