第七章 揺るがない思い 動き出す戦場
「き……貴様!」
激しい怒声が空気を振るわせる。
獣の如く、爛々と光を宿した瞳が突然の乱入者を凝視する。
振り下ろされた剣先がキリアの頭上に到達しようとした刹那。
細剣が素早く繰り出された。
よもや、横やりが入るなど予想もしなかったため、必要最低限の力しか込めていない。
弾かれた剣は、無人の空間に振り下ろされた。
「まだ、この人を死なせるわけにはいかない」
力強いその声には、強い決意が滲み出る。
「エ……エディーネ?」
想像しなかったその人の背中が、擦れた視界にはっきりと映った。
剣を構えハイネと対峙するその人は、キリアと比べればあまりにも華奢で弱々しい。
対する相手はキリアを負かすほどの戦士。
戦闘となれば、どれほどの幸運をもってしても勝算などないに等しい。
「無理だ。エディーネ、逃げろ!」
声を振り絞るキリア。
しかし、エディーネは引かなかった。
徐々に増し始めるハイネの圧迫感。
襲い掛かろうとする獣を目の前にした様な恐怖。
凡庸な戦士ならば、その鋭い瞳に居竦み、瞬き一つ出来ぬまま終わりを迎えるだろう。
細剣を握る掌から汗が滲む。
気付かぬうちに呼吸が浅くなる。
強力な脚力で踏み込み、一瞬で間合いを詰められたエディーネは咄嗟に細剣を振りかざす。
激しい衝突と同時に、エディーネの細剣はその大半を奪い去られた。
「これで終わりだ」
凶刃が容赦なくエディーネに放たれた。