第六章 決意の時 王女の目覚め
その特異な攻撃に、予想外にアルチナは翻弄された。
戦士として、真っ向から剣のぶつかり合う正統な戦いを得意としてきた。
それだけに、付かず離れず短剣を突き立てながら、まるで野犬の群れの如く体力を奪い去る戦法に苦戦したのだ。
「くっ……小賢しい」
神経をすり減らすような、執拗な攻撃が徐々に体力を奪い去る。
「王女、いつまでそんな所で蹲っているつもりだ」
いまだに、閉ざした心の殻を抜け出せない。
耳を塞ぎ、部屋の隅で小さく震える事しかできない。
そんなエディーネを守りながらの戦いが、状況をさらに追い詰める事となる。
見事と言わざるをえない。
それほどに、短剣を片手に三人の連係した特異な動きに手を焼いた。
しかし。
「見くびるな!」
怒りに満ちた咆哮が木霊す。
「……」
逃げ遅れた刺客の一人を巨剣が捕らえた。
くの字に体が曲がった瞬間、糸の切れた操り人形のように崩れ落ちる。
「エディーネ!」
突然名前を呼ばれ、エディーネの体が竦む。
「お前はこんな所で終わるのか!」
先ほどとは一転して、まるで訴えかけるように柔らかな口調だった。
「お前が諦めたら、王国はどうなる……国王はどうなる!」
その言葉に心が大きく揺れた。
「私は……」
握り締めた拳が僅かに震える。
「私は……」
強く結ばれた唇。
決意は固まった。
「私は生きて……生きてもう一度セフィーリアに戻る」