第六章 決意の時 王女の目覚め
闇の中。
静かな歩み。
まるで、訓練された軍隊のように無駄が無く毅然とし、それでいて死者が徒行するかのように生気を感じない。
ただ黙々と歩を進める。
やがて、古びた扉の前でその歩みが止まった。
一つの人影の唇が微かに動く。
その動きを注視する二人の人影。
言葉を発せず、唇の動きだけでやり取りする。
扉に手が伸びた。
音も無く室内に入り込む。
一切の光の存在しない闇の世界。
特殊な訓練を積んできた者ですら躊躇してしまうその暗闇の中。
迷い無く寝台を取り囲み、手にした短剣を躊躇い無く突き立てた。
しかし、その短剣から伝わる感触には、まったく手応えがない。
急ぎ、寝台の中を確認しようとした時だった。
「貴様たち、何者だ!」
地響きの如く低い声が室内に木霊す。
振り返ると、一人の大柄な修道女が怒りに満ちた様子で立ち塞がる。
真紅の瞳は、燃え上がるように強い光を放っていた。
「アルチナ殿、この者たちは?」
アルチナの後ろから、異様な風体の侵入者に息を呑む。
対して、侵入者たちは二人と間合いを取り体勢を整える。
「知らん。だが……」
おおよそ、修道服を纏う者には似つかわしくない巨大な剣を握り締めながら、吐き捨てるように言った。
「敵であることには間違いないだろう」