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第六章 決意の時 迫り来る脅威
はたして、本当に人と戦っているのか。
そう思わずにはいられない。
それほど、ハイネ・ガルシアという男の戦い方は異質だった。
正統な剣術とはほど遠い。
まるで、剣を力任せに振るっているだけのような無茶な戦い方。
本来なら、そのような者など敵の内にも入らない。
そのはずなのだが。
しかし、その無茶な戦い方を尋常ではない運動能力が補って余りある。
天性の戦士なのだ。
「懐かしいよ」
激しい攻撃の最中、まるで思い出でも語るような高揚した口調でハイネが語る。
「……」
不意に、ハイネの剣の動きが止まった。
今までの軽薄な笑みが一転。
悪意に満ちた歪んだ笑みがキリアの目に映った。
「もう、十年ほど前になるかな」
まるで、子どもが悪戯を告白するかのように無邪気な表情だった。
「僕は、前にその剣の持ち主を殺した事がある」