第六章 決意の時 迫り来る脅威
「長かったよキリア君。本当に長かった」
うんざりした様な表情を浮かべながら、しかしどこか嬉々とした印象を受ける。
「森の中で君たちと会ってから、ずっとお預けを受けていた」
落胆した様子で剣先を見つめている。
「でもねぇ」
まるで、子どもが新たな玩具を与えられたような無邪気な笑みが浮かぶ。
「ようやく、君を殺す許可が下りたんだ」
軽薄な笑みが一転。
「こんなに興奮するのは初めてだよ」
獣のように舌なめずりをしながら、異様な笑みを浮かべて一言。
「すぐに死なないでよ」
まるで、魔術の類でも使用して、二人の間に存在した距離を消し去った。
そう思わずにはいられないほどの、圧倒的な脚力で迫り来る。
瞬きするほどの僅かの間。
次の瞬間、目の前に銀色に輝く一筋の光が降り注ぐ。
激しい斬撃の嵐。
細身の体からは想像もできないほどの重い剣撃に、鍛え上げられたキリアの体が悲鳴をあげ始める。
「クッ……」
後方に飛び退き、ハイネから距離をとる。
「……化け物め」
常軌を逸した身体能力。
一瞬でも視線を外せば、銀色の閃光に体を分断されてしまう。
乱れた呼吸を整えていると。
「まだ……」
背筋の凍るような歪んだ笑みが浮かぶ。
「これからだよ。ボクの…スィン族の狩りが始まるのは……」