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第六章 決意の時 迫り来る脅威
激しい雨音が、まるでエディーネを責め立てるように響く。
目を伏せ、耳を閉じ、全てを忘れ去る事ができたなら……。
徐々に暗闇が、空の主導権を握り始める頃。
サン・フォーレスト修道院の一室。
そこには、心を閉ざし、うずくまるエディーネの姿があった。
美しかった黄金色の髪は乱れ、宝石のように澄んだ青の瞳に今は光がない。
暗い影のなか、どうしようもない絶望感だけが満ちていた。
微かに聞こえるキリアの声。
それさえも、エディーネの心に届く事はない。
同じ頃、雨の降りしきる中。
月明かりの存在しない暗闇。
静かに、サン・フォーレスト修道院の様子を窺う複数の影。
皆、黒い衣を纏い白い仮面を着用している。
まるで、そこに存在しないかのように気配を断ち闇に紛れる。
その風貌は、さながら死人を黄泉の国へと誘う怪物のように映る。
やがて、その中の一人が指先を細かく動かし指示をだす。
動きが終わると、複数の影がまるで闇の中に紛れ込むようにその姿を消した。